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■民族教育フォーラム2004ー国際化時代の他民族・多文化共生教育

(2004年8月21〜22日)

第6分科会 「在日」と「新渡日」との協働から見えてきたこと

#666633コリアNGOセンター代表理事   宋 悟

8月21日、22日の両日、大阪市内の「アピオ大阪」「エル大阪」などを会場にして民族教育フォーラム2004〜国際化時代の多民族・多文化共生教育〜(主催:民族教育ネットワーク)が行なわれ、教育関係者や市民など延べ約700名が参加した。グローバル化が加速する21世紀にあって、在日コリアンをはじめとする在日外国人の子どもたちに民族教育を権利として保障するか否かは、日本社会の進路にとって重要な試金石である。
同フォーラムは、在日外国人の子どもたちの民族教育および日本の子どもたちの国際理解教育に関する現状を分析しつつ、未来への展望を切り開いていくことを目的として開催された。
ここでは、第6分科会のコーディネーターとして事前の準備段階から関わりながら見えてきたことについて述べたい。同分科会は「在日」と「新渡日」との協働―多民族・多文化共生社会を担うNPOからの接近をテーマに行なわれた。レポート報告者である具圭三さん(とよなか国際交流協会)は、日本の学校で取り組まれる国際理解教育の講師派遣事業に関わっている経験を踏まえ、「外国人に依頼のある学習内容は、ほぼ『言葉』『料理』『踊り』に限定している。 外国人が消費されている。外国人自身が生き生きと活躍できる場を学校や地域に創っていけないか」と問題提起した。
続いて、3人の発題者が意見を述べた。ブラジルから渡日し、相談業務に携わるギオマールエリーザさん(なら・シルクロード博記念国際交流財団)は、「最近は、在日ブラジル人の医療・教育・アイデンティティなどをめぐる複雑で深刻な問題が多くなっている。私は日本国籍を取ったが、心はブラジル人であり、国籍とアイデンティティは違う」などと語った。
国際協力NGO活動にも関わる肥下彰男さん(大阪府立金剛高校教員)は、日本語に慣れさせるため「ニューカマーの中国人の子どもに、家で中国語を使わず日本語を使うよう」強要する学校現場の事例を紹介しながら、多様性を認めない日本社会の現状を批判した。またフィリピン人とのダブルの子をもつ高畑幸さん(大阪市大学COE研究員)は、経済コストの視点から「ニューカマーの犯罪者を捕まえ、取り調べ、裁判を行ない、更生させることに使われる税金の総額を考えれば、『予防』の観点に立ってニューカマーの子どもたちの学習支援や進路指導などへ財政的支援をする方が安くつく」と語った。  

第6分科会では、昨年の4.24阪神教育闘争55周年記念集会に引き続き、旧植民地出身者の在日コリアン、ニューカマーの外国人、そして日本人が今後の多民族・多文化共生教育のあり方をめぐって、共通の場で意見交換が自由闊達に行なわれた。いま、長年にわたる日本の学校における在日朝鮮人教育の到達地平を振り返りながら、新たに教育における「在日」と「新渡日」との協働のあり方が求められている。
これまで在日朝鮮人教育は、日本社会や学校現場に根強い「同化と排外」の不条理を明らかにするとともに、在日コリアンの子どもたちの民族的アイデンティティと自尊感情を豊かにはぐくむ機会を創ってきた。いわば、民族学級の拡充などの具体的な教育実践を通じて、民族的マイノリティの文化的差異を積極的に承認する必要性について、日本社会や学校現場に根づかせる努力を行なってきた。ここには、「文化的特殊性の公的承認(特殊性)と市民社会の公共的な正当性(普遍性)との共存可能性の問題」(金泰明)という二一世紀の時代の難問が横たわっていることは言うまでもない。
日本の学校における在日朝鮮人教育の実践は、全国的にみて大阪に偏在しており、依然として日本の学校教育の周辺に位置付けられたままであり、その広がり・深化という意味ではようやく入り口に立ったにすぎない。在日コリアン社会は日本国籍取得者の増大や、国際結婚によるダブルの子どもの増加、価値観の多様化などが進み、集団内部におけるアイデンティティやエスニシティはすでに一枚岩的で固定的な状況にはない。
一方で、「愛国心」を強調する教育基本法の「改正」に向けた論議や外国人への偏見・排外主義の高まりなどに見られるように日本の偏狭なナショナリズムが、急速に社会に浸透するなかにあっては、そうした日本社会に抗するための在日コリアンの集団的アイデンティティを育むことの必要性と正当性が依然として存在することは言うまでもない。

したがって、いま在日コリアンには、集団内部の多様化するアイデンティティやエスニシティを尊重し、丁寧に紡いでいく教育実践が求められている一方で、偏狭なナショナリズムが高まる日本社会に抗し、民族教育権をはじめとする諸権利を獲得するため在日コリアンとしての集団的アイデンティティに依拠した運動構築が求められるという一見矛盾する課題に直面している。
今後の在日朝鮮人教育は、これまで長年にわたって積み上げてきた成果を引き継ぎつつ、時代と状況の変化に対応した論理と運動を「外」に向けて開いていく形で再編されなければならない。と同時に、グローバル化が一層進展する21世紀の時代潮流の中で、在日コリアンのアイデンティティは日本社会において自己完結する視角からだけでなく、日本と朝鮮半島との国際環境の変化や東アジアの秩序再編という国際的な構造変化をも視野に入れながら構想されるべきだろう。それは、「冬ソナ」現象に見られる爆発的な「韓流」の動きや北朝鮮の拉致事件・核問題をめぐる情勢が、在日コリアンのアイデンティティの持ち方や日本社会の意識状況に大きな影響を与えていることを見ても明らかである。

1990年代に入り、学校現場はニューカマーの子どもたちが急増するというドラスティックな変化を迎えている。すでに在日外国人総数に占める在日コリアンの比率は、32.1%となっている(2003年末)。こうした在日外国人の人口動態の変化は、在日朝鮮人教育とニューカマーの子どもの教育との「協働」の必要性と可能性を生み出す客観的な条件として作用している。
在日朝鮮人教育とニューカマー教育は、その歴史的社会的な経緯や置かれている現状の違いを踏まえつつ、近代の国民国家形成の過程や加速するグローバル化の中で、国境を越えることを余儀なくされた民族的マイノリティとして、ともに日本社会から疎外・差別されているというアンブレラ的な共通項に立って、ともに力を合わせる本格的な「協働」の段階の時期にきている。
具氏はシンポジウムの中で、「在日コリアンは、在日コリアンである切り口だけで物事を語る時代は終わった。ジェンダーや世界規模の経済格差問題である南北問題など多様な切り口から自分自身を問いなおす必要性に迫られている」と指摘した。予測不可能な新たなゴール自身を創り出すことが求められている今、新たな展望を切り開く上で、さまざまな既存の境界線を揺るがしていくことの重要性に言及した点で示唆深い。
当事者である旧植民地出身者の在日コリアンとニューカマーの人々、そして日本人がとともに手を携えながら取り組む教育実践の中から、多民族・多文化共生教育の実現に向けた新しい地平が見えてくるだろう。


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