朝鮮半島の平和・東アジア共同体

オンライン連続セミナー『2020年の今、韓国は』 ~新しい時代の相互理解のために~

 新型コロナ禍の拡大で世界的な規模でこれからの社会のあり方が問われています。そうしたなかで東アジアでも冷戦の終結と平和の実現、緊張高まる日韓関係をどう考えるか、そして日韓市民社会の未来に向けた課題をどう見るか、みなさんとともに考えるオンライン連続セミナーを開催します。

※全ての回が終了しました。(2021.02.25)

  • 参加費:無料
      ※カンパや会員加入を歓迎します。
      ・オンライン決済も可能です  https://syncable.biz/associate/koreango/
  • 定員:100名(先着順、ただし会員を優先する場合があります)
      ・事前に参加申込みが必要 ⇒申込み期間:開催月の1日から開催日3日前まで
      <参加申込みフォーム> https://forms.gle/jGJ4x3X2ku6Pvzxm9

当センターがシンポジウム「ポスト冷戦期の日韓関係 その打開の道をさぐる」を開催

 コリアNGOセンター発足15周年記念と、改善に向け糸口を探せずにいる日韓関係の現在を議論するシンポジウムを12月1日に開催した。パネリストには、立命館大学特任教授の文京洙(ムンキョンス)さん、韓国から韓日の同時通訳者で市民活動家の姜恵楨(カンヘジョン)さん、大阪大学大学院准教授で現在ボーフム大学客員教授の木戸衛一さんを迎え、センター代表理事の郭辰雄(クァクチヌン)さんがコーディネートした。
 文京洙さんは戦後最悪の日韓関係と表現されていることに異論を呈し、「最悪だったのは明らかに50年代から60年代。あの頃に比べると日韓関係はすでに多様性を備えている」と指摘しつつ、「日本国内の政治状況は韓国に対し一面的な評価に凝り固まっていて、安倍首相の強硬姿勢への同調が目立つ。言わば、こちらから強く出れば必ず相手は引くという韓国観がまかり通っている。果たしてそうであるか、国際関係の分析も含め冷静になる必要がある」と述べた。
 姜恵楨さんは「文在寅政権の対日強硬路線によって昨年の大法院判決が出たとの見方が日本側に広がっているが、事実ではない。朴槿恵政権で原告敗訴判決が差し戻されている。つまり、最終審で日本側企業への賠償命令が確実視されていた。むしろ、朴政権の介入によって問題が先送りされたものだ」と解説し、「確定した司法判断に介入せよと、韓国政府に求める日本政府の対応は、隣国の民主主義など無視せよと言っているようなもの。日本政府はかつての非民主的な韓国をイメージしているのだろうが、数百万に及ぶキャンドルデモで朴政権を倒したように、もはや韓国にとって公正正義は最大の価値。犠牲を誰かに強いる社会に、もはや無関心ではない」と語った。
 ドイツ滞在中であるためSkypeで参加した木戸衛一さんは、ドイツの国内政治を解説した上で「日本は歴史的に見て、戦前も戦後も大国にくっつくことで、国際社会での発言権を確保してきた。そのため人権や平和の価値を追求するという外交は弱かった」と指摘し、「ドイツはユダヤ人や周辺国からの強制労働への賠償を2007年に終了し、現在は次世代に引き継ぐための歴史教育に重きが置かれている。そのことから見れば現在の韓国の徴用工裁判をめぐる日本政府の対応は人道主義から外れている」と話した。
 一方、韓国側に対して「国内にも賠償されていない戦争被害者たちがいる。空襲被害は裁判でも完全に退けられ、被害者は放置されたままだ。日韓という国を超えても戦争被害という点で双方が連帯できることもあるのではないか」と提案した。
 コリアNGOセンターでは、日韓関係のこれからをさらに展望していく考えだ。その際のキーワードはやはり平和と人権。市民の立場から政治を語るにも、その視点で発想し、展開し、難しければ難しいほどに、理想を持って粘り強く、粘り強くとりくんで行くことを表明したい。 (2019.12.04)  

設立15周年シンポジウム「ポスト冷戦期の日韓関係 その打開の道をさぐる」

 今年に入り、韓日関係は、歴史、経済、安保、市民交流などさまざまな分野にまたがって対立と葛藤が深刻化しています。こうした状況をどのように打開していくか。韓日対立の本質的な課題である歴史問題を切り口として考えていきたいと思います。
 ふるってご参加ください。

  • 日 時  2019年12月1日(日) 14:00~
  • 場 所  たかつガーデン 8F(大阪市天王寺区東高津町7-11)
  • 参加費  1000円
  • パネリスト
    文京洙  立命館大学国際関係学部特認教授
    木戸衛一 ドイツ・ポーフム大学東アジア学部客員教授、大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授
    姜恵楨  アジアの平和と歴史教育連帯

サンフランシスコ市  平和の少女像建立2周年記念式典に出席

 大阪市が姉妹都市提携をやめるきっかけとなったサンフランシスコ市の平和の少女像建立2周年の記念式典が9月22日に開催され、当センターから金光敏事務局長が出席した
 日本国内で、日本軍慰安婦問題をめぐる政治的対立が激化するなか、カリフォルニア州内の幅広い市民の支持を受け、2016年9月に市管理公園に銅像が建立された。
 慰安婦問題をめぐってはドキュメンタリー映画「主戦場」が話題を集めているが、「日本軍慰安婦などいなかった」「慰安婦は公娼であった」など被害者を再蹂躙する主張が日本国内では目立つ。映画「主戦場」は戦時下の日本の加害史を軽視し、アジアに差別的な主張を繰り返す、いわゆる歴史修正主義者たちの主張と、冷静でかつ科学的な反論で彼らを論破する識者のインタビューで構成されている。映画ではサンフランシスコ市の少女像も取り上げられ、関係者たちがインタビューに答えている。
 60年の歴史を誇る姉妹都市提携をやめたことで逆に全米の注目をあつめ、戦時下における女性や子どもへの人命軽視や人権蹂躙に冷徹な大阪市政の姿が醸し出されてしまったとされる。記念式典においてもこの話題が言及された。
 主催者側からの提案を受け、金光敏事務局長がサンフランシスコ市を訪問。行事に参加し、式典で金事務局長もスピーチし、日米の市民運動の連帯を呼びかけた。
 式典には、元慰安婦の人権回復に尽力してきたマイク・ホンダ元下院議員、サンフランシスコ市議会で市政協力の取り付けに重要な役割を担うゴードン・マー議員、ラファエル・マンデルマン議員など、地元の有力者ら多数が出席した。また、韓国から朴元淳ソウル市長の献花、また日本以外にもフィリピンから慰安婦問題に取り組む活動家らが出席した。
 少女像はサンフランシスコ市内の中心街、チャイナタウンに隣接するマリーズスクエアの中にある。 (2019.10.02)  

韓日関係の改善と発展を求めて  ~過去をのりこえ、未来を拓くために~

 日本政府による輸出基準の厳格化方針が明らかになって以降、韓日関係は軋轢と対立を深めている。こうした状況のなかで、日本に暮らす在日コリアンは朝鮮半島にルーツを持つがゆえに、不安と息苦しさを抱え、あたかも自分自身の存在を否定されているかのように感じている人も少なくない。
 コリアNGOセンターとして、在日コリアンの立場から韓日関係のより発展的な関係改善を求めつつ、韓日両国の政府と企業に対して現情勢を打開していくための努力を強く求めるものである。

人権問題としての徴用工問題の解決を

 昨年10月30日、韓国の大法院が新日鉄住金に対して元徴用工4人への損害賠償を認める判決を下した。これに対して安倍首相は同日の衆議院本会議で元徴用工の請求権は1965年の韓日請求権協定で完全かつ最終的に解決しているとした上で「判決は国際法に照らしてありえない」と強調、河野外相(当時、以下同じ)も「判決は国際法に基づく国際秩序への挑戦」と強く否定、韓国政府が対応するよう求めてきた。
 だが徴用工裁判というのは、日本の植民地支配下で強制動員・強制労働の犠牲者として賃金未払い、過去に危険な場所での強制労働、自由の制限や体罰など当時の国際条約に照らしても不当な人権侵害を受けていたとして、元徴用工が当時働いていた日本企業を個人の請求権に基づいて訴えた裁判である。
 韓日請求権協定でいう、「完全かつ最終的に」解決というのは政府による外交保護権が消滅したことであって、政府間の合意によって個人の請求権が消滅したということではない。国家が個人の請求権を消失させることはできないというのは国際人権法でも認められているところであり、このことは日本で争われた「原爆裁判」「シベリア抑留訴訟」でも認められている。また1991年には国会で答弁した柳井条約局長は「日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決した…これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということで…いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」と発言、また昨年11月14日の国会答弁で河野外相も「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」と述べている。
 また判決以降、日本政府は韓国政府に対して徴用工問題の解決のために対応することを強く求めていたが、近代国家の原則である三権分立から見て、大法院が決定を下した内容に対して韓国政府が干渉することはありえないことであり、政府としてとるべき対応は極めて限定的にならざるをえない。それでも7月に韓国政府は日本政府に、元徴用工の原告に対しては韓日両国の企業が折半して資金を供出する基金から支払い、他の元徴用工に対しては韓国政府が支払うという内容の提案をおこなったが、日本政府はいっさい対話に応じようとしていない。
 一方同様な事例として中国の強制連行被害者が西松建設を相手取って損害賠償を求めた裁判がある。この裁判では2007年4月27日、最高裁判所は個人の請求権は消滅していないが、「訴求する機能を失わせる」として中国人被害者の訴えを退けた。しかし勝訴した西松建設は和解に応じ、中国人労働者への補償や慰霊碑の建立費のための解決金を支払っている。  このように①個人の請求権は消滅しておらず、②過去には和解した事例があり、③韓国大法院の判決で賠償命令が下されている、という点を勘案すれば、被告である日本企業が元徴用工との賠償問題で協議に応じることは、国際法に反するものではない。むしろ過去の人権侵害に真摯に向き合う姿勢は国際的にも評価に値することであろう。
 ところが被告企業が沈黙するなか、日本政府は韓国政府に対して国際法違反であり、国と国との信頼関係を損なったと声高に主張し、それをマスメディアが無批判に繰り返し報道することで冷静な対話自体が困難な状況がつくられている。
 しかし徴用工問題とは明らかな人権侵害であり、被害当事者の被害回復をどのように図っていくのかという問題を解決するためには、当事者である元徴用工と雇用していた日本企業との誠意ある対話の場こそが必要である。当事者が高齢となったいま早急に解決されなければならない問題であり、責任ある対応を被告企業に強く求めたい。

過去の歴史の直視を

 安倍晋三首相は9月3日、韓国を訪問していた河村建夫・日韓議連幹事長と面会し、李洛淵韓国首相と会談した報告を受けて、「根幹にある元徴用工問題の解決が最優先だ」と語り、輸出基準の厳密化や軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄などの懸案より徴用工問題を重視する姿勢を明確に示している。
 一方、河野外相は8月27日、外務省で開かれた定例記者会見で、「韓国政府関係者、外務省関係者からは、日本は歴史の理解が十分でないという声が聞かれる。韓国側の日本に対する批判にどう答えるか」という外信記者の質問に対し、「日韓間において今最大の問題は、1965年の協定に関するものだ。もし韓国が歴史を書き換えようとするならば、それは実現できないことを韓国側は理解すべきだ」と強い口調で批判した。
 こうした発言に象徴されるように、日本国内では「令和」という新しい時代を迎え、あたかも過去の侵略と加害の歴史が消し去られ、触れることさえ許されない空気が作り出されているようである。
 1965年韓日請求権協定は、当時米国の強い圧力のもとで、過去の侵略と植民地支配に何ら反省を示さない日本と、民意を顧みない強権的な軍事独裁政権であった韓国政府が、植民地支配の不当性について何ら合意することなく締結されたものである。そのため韓国社会が民主化され、市民が自らの経験と思いを語り始めたとき、その矛盾が露呈することは必然であった。
 そうしたなかで韓国が民主化への歩みを本格的に始めた1990年代に入って韓日共同の努力によって、過去の歴史を直視し、それを乗り越えていくための表明がなされてきた。
 93年には「慰安婦」問題で軍の関与と強制性を認め、「心からお詫びと反省」を表明した「河野官房長官談話」が発表され、戦後50年をむかえた95年には、「村山首相談話」でふたたび反省とお詫びが表明された。
 そした1998年には韓日首脳会談で「韓日共同宣言―21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ」が合意され、そのなかで「我が国(日本)が過去の一時期、韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えてきたという歴史的事実を謙虚に受け止め、これに対して痛切な反省と心からのお詫びを述べた」ことが明示されている。
 これらの日本政府による表明こそが、戦後あいまいにされてきた戦争責任、侵略と加害の歴史に対する反省の表明であり、現在のアジアの国々との信頼関係はまさにこれらの認識を土台として発展してきたものである。
 ところが、いまの日本政府はこれらの歴史認識を誠実に継承し、アジアの国々と向き合おうとしていない。むしろ、侵略と加害の歴史を二度と繰り返すことがないように、その記憶を継承しようとする営みを、一部メディアが「歴史戦」なる用語を使い、日本を貶めるものとして否定、攻撃することを容認、放置しているのが現状である。のみならず、少なくない数の国会議員からも「歴史戦」を掲げる人々の主張に対する賛意が繰り返し述べられるような状況で、韓国を含むアジアの国々はどれほどの日本政府の誠意を受け止められるというのだろうか。
 むしろ、「慰安婦」問題や徴用工問題での日本政府の振る舞いは、過去の侵略と植民地支配という加害の歴史を無視し、韓国はもとよりアジアの国々に対する道義的責任すら放棄しているように見える。
 私たちは、日本政府に対して侵略と加害の歴史に対して謙虚に向き合い、これまで表明してきた歴史認識を継承し、それを伝えるよう努力していくことを改めて表明することを強く求めたい。

経済・市民交流の促進を

 7月1日に日本政府、半導体製造に必要な素材3品目の韓国向けの輸出基準の厳格化の方針を明らかにしたことで、韓日に対立は経済分野にまで拡大することとなった。
 当初は日本国内の報道も、徴用工問題で韓国政府が対応しないことへの経済報復措置というとらえ方が中心であったし、世耕経済産業大臣(当時)も当初はツイッターでその理由として、「今年に入ってこれまで両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上で、旧朝鮮半島出身労働者問題については、G20までに満足する解決策が示されず、関係省庁で相談した結果、信頼関係が著しく損なわれた」と明らかにした。そして8月12日には韓国政府も日本を「ホワイト国」から除外する方針を発表、日本は8月28日に韓国を「ホワイト国」から除外し、双方が輸出基準の厳格化を実施した。
 だが日本政府は、当初は事実上の経済報復措置であると主張、その後は「国家としての信頼が毀損した」と述べたり、輸出した製品の不正流用などから「安全保障上の問題」があるとしていたが、後に韓国から第三国への輸出は規制の理由ではないと認め、現在では「あくまで日本企業に対する輸出基準の厳格化であり、国内手続きにすぎない」述べ、理由が徐々に変遷してきている。しかも、その理由の客観的根拠となる事実については、いまだに何らの資料も明らかにされていない。
 韓国側にすれば明確な理由がないままに、韓国の輸出総額の2割を占める半導体輸出に深刻なダメージを与えかねない措置を日本政府がとるのは到底承服できかねるものであり、強い反発が起きたことも当然であろう。しかも、当初、日本政府は、徴用工判決という日本の朝鮮植民地支配の清算を求める動きに対する報復だと閣僚や政府関係者が明言していたのである。侵された人権の回復を求めることに対するしっぺ返しだと言われては、韓国政府や韓国民が黙っていられるはずもない。
 その結果、韓日双方から相手国に対する「信頼関係の毀損」が伝えられ、批判の応酬が繰り返されたために、経済関係の影響もさることながら、感情的な対立も広がっている。
 韓国国内では、日本製品に不買運動が広がり、日本への訪問者の急減、自治体や教育機関での市民交流事業の中断・延期などが相次ぎ、ソウル市や釜山市など地方自治体が三菱重工や日本製鉄などを戦犯企業として規定、その製品を購入しないことを地方自治体に求める条例を可決している。
 こうした動きの背景には、日本政府による一方的な経済措置に対する反発はもちろん、すでに韓国は先進国であり、日本の従属的なパートナーではないという自負、ろうそく革命のような民衆の主体的な行動により政権交代を実現させ、韓国社会を変えてきたという自信感があり、それらが日本に対して厳しい見方をさせていることはあるだろう。
しかしこれが日本に対する反感や憎悪をあおるものであってはならず、ましてや選挙を前にして自らの政治的基盤のために日本への対立や憎悪が煽られることは決してあってはならない。むしろ過去の歴史に向き合う原則的な立場は堅持しつつ、経済・文化・スポーツなどあらゆる面での交流、協力はより積極的に進めていくべきであり、韓日の市民が出会い、交流を進めることで歴史への理解をお互いが深めていくべきだろう。そしてそうした取り組みを在日コリアンと推進していくことを韓国政府にはぜひ期待したい。
 韓国政府は日本政府による輸出基準の厳格化が不当であるとして9月11日にWTO(世界貿易機関)に提訴、今後は国際紛争として論議されることになる。
 しかし韓日の経済協力関係の重要性、日本が議長国を務めたG20大阪サミットの「自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易環境」という宣言趣旨から見ても、日本政府が韓国政府と協議し、早急に輸出基準の厳格化措置を撤回することを求めたい。同時に韓国政府も日本政府への措置を撤回し、韓日の経済協力をより発展させることを強く求めたい。

嫌韓ヘイトとメディア

 戦後最悪ともいわれる韓日関係で、メディアでは日本政府の主張を事実に基づいて検証することなしにそのまま報道することで、韓国に対する反発、反感、憎悪を拡散させている。その結果、韓国に対して「反日」「信頼できない」「約束を守らない」などとの言葉が日常生活のなかで当たり前のように広がっている。また9月2日発売の週刊ポストでは「韓国はいらない」などという憎悪と排外をあおるような特集が組まれている。
 そしてメディアで流れた情報はツイッターなどSNSでまたたくまに拡散されていく。いまや日本の言論空間は、過去に猛威を振るったヘイトスピーチ団体「在日特権を許さない市民の会」の存在がかすむほどの影響力と拡散力を持った嫌韓、ヘイトスピーチの言論空間が生まれていると言っても過言ではない。
 すでに8月27日に駐日本韓国大使館に銃弾と脅迫状がはいった手紙が郵送され、また9月にはポストが暴行によって破損するという物的被害も生じている。これはあきらかにヘイトクライムである。そしてこれが今後拡大していかない保証はどこにもない。
 いま日本のメディアに関わる人たちの視野には過去の植民地出身者としての在日コリアンはどう映っているのだろうか。そして2016年6月に施行された「ヘイトスピーチ解消法」の理念はどのように受け止められているのだろうか。
 いまメディアに私たちが求めたいものは冷静で公正な情報の提供であり、それこそが韓日関係の今後の発展のために必要なものだと考える。

新たな東アジアの時代をともに歩む韓日関係へ

 昨年の平昌オリンピック以降、韓国と朝鮮民主主義人民共和国との関係は劇的に変化しており、また3回にわたる朝米会談もおこなわれ、朝鮮半島での戦争終結と南北の平和共存が現実的な課題として浮上してきている。このことは日本に住みながらも、見えない38度線に縛られてきた在日コリアンにとっても大きな期待を感じさせる動きである。
 同時にこうした動きは、戦後冷戦体制の下で日米安保の下での発展と繁栄を享受してきた日本の在り方にも当然大きな変化をもたらすことになるだろう。
 今回韓国政府が破棄を表明した「軍事情報に関する包括的保全協定(GSOMIA)」は2016年に朴槿恵政権下で強い反対世論があるなかで締結されたが、駐韓米軍の移転や韓国軍への指揮権返還など朝鮮半島の安保をめぐる動きのなかで、日本との軍事協力を今後どのようにしていくのかという問題でもある。
 徴用工問題に端を発して、経済、安保を含めた幅広い分野での韓日の対立が広がっているが、いずれにせよ東アジアの再編期のなかで今後の展望を考えるときに韓日パートナーシップは両国にとって戦略的に重要な関係となることはいうまでもないだろう。昨年来の朝鮮半島を焦点に広がっている平和と共存に向けた動きは戦後東アジアを支配してきた冷戦体制の本格的な解体と再編のプロセスの始まりであり、ポスト冷戦の新しい国家秩序をめぐる摩擦と葛藤が東アジアで繰り広げられている。新しい未来を開いていくためにも、過去を直視し、現在をつなぐことが求められている。過去に真摯に向き合うことは、批判、否定のためではなく、それを教訓、そして相互理解のための土台とすることで、より豊かで未来に開かれた韓日関係を築いていくためのものであることをふまえ、韓日両政府の真摯な努力を求めるものである。

2019年 9月 25日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター
代表理事  林範夫 郭辰雄


板門店での初の南北米首脳の会合と朝米首脳会談開催を歓迎する

 G20大阪サミットを終えて韓国を訪問していたトランプ大統領は、6月30日に文在寅大統領とともに板門店を訪問した。そしてトランプ大統領の呼びかけに応える形で朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正恩委員長も板門店を訪れ、歴史上初めて南北米首脳が板門店という朝鮮半島の分断と戦争を象徴する場所で会合し、また朝米首脳会談も行われた。
 朝鮮半島の非核化と南北の平和共存、統一を心より切望する私たちは、今回の会合を実現した南北米首脳の英断をたたえるとともに、熱烈に歓迎するものである。
 昨年の平昌五輪以降、南北米首脳はそれぞれに会談を重ね「板門店宣言」「シンガポール共同声明」「平壌共同宣言」と合意を積み重ねてきた。しかし今年2月にベトナム・ハノイでおこなわれた朝米首脳会談で朝鮮半島の非核化をめぐって、なんら合意に至らなかったことは多くの人々に不安と失望を与えた。
 だがハノイ会談終了後も金正恩委員長は米国との継続した対話の意志を表明し、中国、ロシアとの首脳会談やトランプ大統領とも親書を交換するなど対応を重ねてきた。また文在寅大統領は一貫して「北朝鮮の平和を守るのは核兵器でなく対話」と語り、韓米首脳会談はじめ各国を訪問して支持を呼びかけるなど、南北ともに対話再開に向けたとりくみを進めてきた。
 今回の板門店での南北米首脳による会合と朝米首脳会談の実現は、こうした南北両首脳の朝鮮半島の非核化実現と平和共存、統一にむけた努力があってこそ実現したものであるといえよう。
 また、ハノイでは「先非核化」を主張した米国も、ビーガン北朝鮮担当特別代表が6月28日、李度勲韓半島平和交渉本部長と会談し「シンガポール共同声明の公約を同時的・並行的に進展させるために北朝鮮側と建設的な議論をする準備ができている」と語るなど、柔軟な姿勢を示している。
 朝米首脳会談では今後実務的な協議を進めていくことに合意し、金正恩委員長の訪米も招請したと伝えられているが、私たちは今回の南北米首脳の会合が朝鮮半島の非核化と平和共存、統一に向けて、互いの信頼関係を深め、後戻りすることのない着実な歩みのための歴史的な出会いとなることを心から期待する。
 そして、G20で文在寅大統領が朝日首脳会談に関連して「多様な対話と協力のチャンネルが機能すれば、平和が互いの安定と経済に役立ち自国の利益になるとの認識が広がる」と述べたように、日本政府も懸案解決のためにも相手の立場も踏まえつつ、胸襟を開いた対話努力を進めるとともに、朝鮮半島の非核化と平和定着にむけたより積極的な役割を発揮することを望むものである。
2019年 6月 30日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター


판문점에서의 남북미 정상의 첫 만남과 북미 정상회담 개최를 환영한다

 G20 오사카 정상회담을 마치고 한국을 방문한 트럼프 대통령이, 6월 30일, 문재인 대통령과 함께 판문점을 방문했다. 그리고 트럼프 대통령의 제안에 응하는 형태로 조선민주주의인민공화국(북한) 김정은 위원장도 판문점을 방문해, 역사상 처음으로 남북미 정상이 판문점이라는 한반도의 분단과 전쟁을 상징하는 장소에서 만났으며, 북미 정상회담 또한 개최되었다.
 한반도 비핵화와 남북 평화공존, 통일을 진심으로 갈망하는 우리는, 이번 만남을 실현시킨 남북미 정상의 영단을 기리는 동시에 열렬히 환영한다.
 지난해 평창올림픽 이후, 남북미 정상은 각각 회담을 계속 갖고 "판문점 선언", "싱가포르 공동성명”, “평양 공동선언”'과 합의를 거듭해 왔다. 그러나 올해 2월, 베트남 하노이에서 열린 북 · 미 정상 회담에서 한반도 비핵화를 놓고 아무런 합의에 이르지 못한 것은 많은 사람들에게 불안과 실망을 안겨 주었다.
 하지만 하노이 회담 종료 이후에도 김정은 위원장은 미국과의 대화 의지를 계속 표명했고, 중국, 러시아와의 정상회담 개최와 트럼프 대통령과 친서를 교환하는 등 대응을 거듭해왔다. 또한 문재인 대통령은, 일관되게 "북한의 평화를 지키는 것은 핵무기가 아니라 대화"라 이야기하며 한미 정상회담을 비롯해 여러 나라를 방문하고 지지를 호소하는 등 남북 모두 대화 재개를 위한 노력을 계속해 왔다.
 판문점에서 남북미 정상이 만나고, 북 · 미 정상 회담이 실현된 것은, 이러한 남북 두 정상의 한반도 비핵화 실현과 평화공존, 통일을 향한 노력이 있었기에 가능했다 할 수 있을 것이다.
 또한 하노이에서는 ‘선 비핵화'를 주장했던 미국도, 비건 북한담당 특별대표가 6월 28일, 이도훈 한반도 평화교섭 본부장과 만나 "싱가포르 공동성명의 공약을 동시적 · 병행적으로 진전시키기 위해 북한 측과 건설적인 논의를 할 준비가 되어 있다"고 말하는 등 유연한 자세를 보이고 있다.
 북미 정상회담에서는 향후 실무협의를 진행하기로 합의했고, 김정은 위원장의 미국 방문을 초청한 것으로 알려졌는데, 우리는 이번 남북미 정상의 만남이 한반도 비핵화와 평화 공존, 통일을 위해 서로 신뢰관계를 깊이하고, 되돌릴 수 없는 꾸준한 행보를 위한 역사적인 만남이 되기를 진심으로 기대한다.
 그리고 G20에서 문재인 대통령이 북일 정상회담과 관련해 "대화와 협력의 채널이 다양하게 작동한다면, 평화가 서로의 안정과 경제에 도움을 주고, 자국의 이익이 된다는 인식이 확산될 것이다"고 말한 것처럼, 일본 정부도 현안 해결을 위해서도 상대의 입장을 고려하면서, 흉금을 털어놓고 대화하기 위해 노력함과 동시에, 한반도 비핵화와 평화정착을 위해 보다 적극적인 역할을 발휘하기를 바란다.
2019년 6월 30일
특정비영리활동법인 코리아NGO센터


朝米首脳会談に関する声明

 本日、6月12日、シンガポールにて歴史的な朝米首脳会談が開催された。
 私たちは1948年9月の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)建国以来、朝鮮戦争で銃火を交え、敵国として対立してきた両国が首脳会談を開催できたことをまずは心より喜び、両首脳の英断を強く支持したい。
 この間、両国は北朝鮮の核および弾道ミサイルの開発をめぐって、軍事的衝突まで危惧されるような緊張関係にあったが、今回の会談を通じて北朝鮮は非核化について「(完全な非核化を通して核のない朝鮮半島を実現することを確認した)板門店宣言を再確認し、朝鮮半島の非核化のために努力する」ことを共同宣言において合意した。これは朝鮮半島の非核化に向けて大きな一歩を踏み出したことを大きく評価するものである。
 同時に、米国が非核化への合意を受け入れ、「(朝米は)平和と繁栄のために新しい朝米関係を樹立」し、「恒久的で安定的な平和体制を構築する」ことを約束した。これは実質的に朝鮮半島での戦争を終結させ平和体制に向かうことを明らかにした歴史的な合意である。私たちは長年にわたって38度線(休戦ライン)によって分断され、そのもとで南北、在日が経てきた苦難の歴史を大きく転換するものになることを期待したい。
 今回の会談の主体は朝米両国ではあったが、協議され合意された内容は2国間関係にとどまるものではない。
 トランプ大統領が語るように「これからの朝鮮半島との関係はこれまでとまったくちがうものになる」というのは、いわば東アジアの冷戦体制の終結を意味する言葉であり、米国にとって北朝鮮が制裁と圧力の対象から共存共栄の対象へと変化したことを明らかにしたものであると言えるだろう。
 私たちは、今回の会談で合意された内容が双方によって確実に履行され、朝米の関係改善、そしてそれを踏まえた東アジアでの各国の平和的で共栄を図るための関係強化を呼びかけたい。
 一方、今回の会談で日朝関係の大きな懸案であった拉致問題について大きな進展はなかったが、急激に進んでいくであろう東アジアの多国間協力関係を考え、朝日関係の改善もまた急がれるべきだ。そのためには拉致問題、過去の歴史問題をはじめとする朝日間の懸案の解決が急がれなければならず、解決のためには朝日両国が誠実に真摯に向き合いつつ課題解決を図る努力を続けることを求めたい。
2018年 6月 12日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター
代表理事  林範夫 郭辰雄


韓日外交のエキスパートらと今後を展望 南北首脳会談を控えて韓日関係の重要性を確認


 韓国ソウル市の国立外交院で今後の韓日関係の在り方を議論するセミナーが4月25日に開催され、当センターの金光敏事務局長が出席した。
 国立外交院は外交部(外務省)の傘下で韓国政府の外交政策を検討する機関。今回のセミナーは日本研究センターが主催し、対日外交の展望について専門家が集まり、議論を深めた。
 この日は「東北アジア情勢と韓日関係の意味~歴史的接近」をテーマに、盧武鉉政権で大統領秘書官を歴任し、文在寅政権の政策委員を努めるぺ・ギチャン安保政策研究院顧問が対日外交の歴史的経過から、今日的課題、そして今後の方向に関して発題した。盧政権が掲げた「東アジアにおけるハブ国家構想」からさらに一歩進み、より高度な政治的判断を重ね、揺れ動く国際秩序のなかで、韓国政府として対日関係をどう展開すべきか、深い考察が示された。
 韓日関係を冷静に眺める目線と、現在の課題に囚われない長期的な視野に立つ政策方向が提案され、当センターの活動にとっても参考になるものが多かった。議論のなかで金光敏事務局長は、在日コリアンと国境を超える市民活動の視点から韓国政府が考慮すべき課題について指摘した。セミナーは南北首脳会談の直前であったことから、南北関係の改善と東アジア情勢の安定のためにも、韓日関係の戦略的パートナーシップの重要性が提起された。
 日本外交センターは国立外交院の正式部署で、日本問題の専門家がさまざまな政策課題に取り組んでいる。今回のセミナーは第一回目で、今後定期開催され、韓国政府の対日外交、ひいては東アジア政策の基調を広げたいとしている。
 韓日の懸け橋になる国の外交、市民の草の根交流に当センターとしてもしっかり寄与していきたいと考えている。 (2018.04.29)

南北首脳会談および板門店宣言を支持する声明

 今日、板門店の南側施設である「平和の家」において、10年ぶりの歴史的な南北首脳会談がおこなわれました。徒歩で会談場所である南側に向かう金正恩委員長を、文在寅大統領が出迎えました。笑顔で手を取り合い、ともに軍事境界線を越えて歩く姿はまさに今回の首脳会談を象徴する姿だと言えます。
 私たちは今回の南北首脳会談が朝鮮半島における戦争を終結させ、平和共存へと向かう大きな一歩であると同時に、東アジアにおける平和秩序の構築に向けても重要な一歩であると高く評価します。
 また首脳会談をへて、発表された「板門店宣言」によって朝鮮半島の非核化と平和体制の実現、そして一つの民族として統一をめざしともに努力していくことが確認されたことについても心より支持するものです。
 昨年、核兵器・ミサイル開発をめぐって朝鮮半島は極度に緊張が高まり、東アジアは戦争が現実的な危機として語られる状況がありました。
 そうしたなか、「ろうそく革命」によって誕生した文在寅大統領が、就任当初から朝鮮半島の平和実現を最重要課題として朝鮮民主主義人民共和国の平昌五輪参加、南北対話を呼びかけてきました。
 2月9日の平昌五輪への北朝鮮の参加をきっかけとして、南北の関係改善のみならず、朝米首脳会談の合意、朝中首脳会談の実現など東北アジアの緊張緩和に関わる関係各国が朝鮮半島の平和に向けて舵を切ろうとしています。
 私たちは米中をはじめ関係各国による朝鮮半島での平和実現にむけた動きを歓迎するとともに、今回の南北首脳会談がそれぞれの国との関係改善や協力強化につながることを期待します。
 その一方で、南北首脳会談に象徴される朝鮮半島の緊張緩和に向けた動きのなかで、日本政府の対応に注目が集まっています。日本政府は、国際社会に対して北朝鮮への最大限の圧力を続けることを主張しています。ただ、その次にどのような対話、そして諸課題の解決の糸口を探し出そうとしているが、その姿が見えてきていません。私たちは、拉致問題をはじめさまざまな懸案の解決のためにも、日本政府が北朝鮮との対話において具体的な取り組み、提案を行うことを期待します。
 この南北首脳会談は、朝米首脳会談、朝中首脳会談へと続き、最終的には朝鮮半島の非核化、平和体制への転換のため、引き続きの努力が関係各国には求められます。私たちも国境を超える市民活動に従事する立場から、平和に向けた動きに積極的に連帯していきたいと考えています。
2018年 4月 27日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター
代表理事  林範夫 郭辰雄


朝鮮半島の平和構築に向けて南北首脳会談、朝米首脳会談の開催を支持する声明

 3月6日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に派遣された韓国大統領の特使団が、北朝鮮の金正恩国務委員長と会談し、朝鮮半島の非核化に向けた意志を確認した上で、南北首脳が4月末に板門店で会談することを発表した。また、北朝鮮に派遣された韓国の特使団が帰国後訪米し、アメリカのトランプ大統領との面会。その場で、北朝鮮の金正恩委員長がトランプ大統領の首脳会談を希望している旨を伝達し、トランプ大統領もそれに応じる考えを示し、5月までに会談することが決まった。
 北朝鮮の核兵器開発をめぐって緊張が高まった政治状況から一転、問題解決に向け対話に舵を切った南北、そしてアメリカの決断に全面的な支持を表明する。また今回の決断が、朝鮮半島における安定と平和、東北アジアの冷戦体制の終結につながることを強く期待するものである。
 私たちはこれまで北朝鮮の核兵器開発に反対の立場を明らかにしてきた。また、度重ねるミサイルの発射についても近隣諸国に不安を与え、戦争勃発の危機を煽るものだと批判してきた。しかしその一方で、北朝鮮のこうした軍事的挑発行為の背景には、いまだに朝鮮戦争が終結しておらず休戦状態が継続しており、そのもとでの南北分断の現実があり、毎年実施される韓米合同軍事演習に象徴される米国による圧力が、そうした北朝鮮の選択を余儀なくさせている点も看過すべきではないと考える。したがって朝鮮半島の平和と安定のためにも朝鮮戦争の戦後処理を進め、法律上の戦争状態から平和共存体制への返還をいち早く推進するよう提案する。
 同時に私たちは、朝鮮半島はもちろん、東北アジア地域の緊張緩和の観点からすべての国が核兵器をはじめとした大量殺傷兵器を保有することに反対し、軍事的対抗措置や制裁一辺倒を克服し、対話と協調によってすべての課題を解決する努力を関係諸国が傾けることを求める。
 今回の南北首脳会談と朝米首脳会談の決定は、地域の平和と安定、そして経済文化の繁栄に資するものだと受け止め、この機会を逃さずに、会談実現に向け関係国が協力して取り組むことを望む。
 韓国とアメリカが課題解決に向け大胆な対話の可能性を表明した以上、日本政府も主体的に事態打開に向けて姿勢を転換し、日朝間に残る課題解決のために積極的に北朝鮮に対話を呼びかけることを提案する。
2018年 3月 9日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター
代表理事  林範夫 郭辰雄


17回目の「南北コリアと日本のともだち展・東京展」、子どもたちの絵を集めています

 朝鮮半島と日本、中国に暮らす子どもたちの絵画交流展「南北コリアと日本のともだち展」が2001年より開催されています。毎年、平壌、ソウル、延辺(中国吉林省)の子どもたちに絵を描いてもらい、日本に暮らす子どもたち(在日コリアンも含めて)にも絵を描いてもらって、東京で全ての国・地域の子どもたちの絵を展示するのが“東京展”です。コリアNGOセンターも実行委員会の構成団体に加わっています。
 今年の絵のテーマは「わたしの楽しい時間」です。「楽しいな!」「良かったな!と思うときはどんな時か、絵で教えてください。
 絵の応募方法は、以下の通りです。さらに詳しくは「絵画募集要項」(PDFファイル)をご覧ください。 (2017.09.11)

  • テーマ:わたしの楽しい時間
  • 対 象:小学生、中学生
  • 絵のサイズ:八つ切り画用紙(38cm×27cm)に、クレヨン、絵の具などで描いてください。
  • 締切日<第二次>:2017年10月15日(日) 消印有効
  • 展示日:2018年 2月16~18日 @アーツ千代田3331(東京都千代田区)
     ※他の地域での展示会でも飾る場合があります。
  • 作品は原則として返却しません。
  • 送付先:南北コリアと日本のともだち展実行委員会
    〒110-0005 東京都台東区上野5-3-4 クリエイティブOne秋葉原ビル 6F


朝鮮民主主義人民共和国の核実験に抗議し、朝鮮半島の軍事緊張緩和を求める声明

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の朝鮮中央テレビは9月3日午後3時半からの「重大報道」で、大陸間弾道ミサイル搭載用の「水爆実験に成功した」と発表、6回目の核実験を実施したことを明らかにした。私たちは、わが祖国である朝鮮半島の平和実現と非核化を切望する立場から、今回の核実験に対して断固とした抗議の意を表明するものである。
 この間、北朝鮮は体制の維持と休戦協定の平和協定への転換を求めつつ、その実現の手段として核開発を進めてきた。同時に米国本土への核攻撃をおこなうための弾道ミサイルを開発し、いまや現実的脅威として各国が対応を迫られる状況にあるといえる。
 私たちは、これまでも北朝鮮には「軍事的脅威を煽ることでの平和の実現」という「倒錯」した方法論ではなく、南北対話、六カ国協議を中心とする各国との対話による問題解決を求めてきた。
 今年に入って、朝鮮半島での軍事緊張が極度に高まるなか実施された核実験は、1991年に南北で合意された「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」の原則に反するのみならず、現実的な戦争の危機を高めるものであり、決して許されるものではない。
 しかし現在の状況を生み出した責任は北朝鮮のみに求められるものではない。米国と韓国も3月7日から4月30日まで、北朝鮮に対する先制攻撃や首脳の排除まで想定した史上最大規模の演習として、合同軍事演習「キー・リゾルブ」と野外機動訓練「フォールイーグル」を実施、また8月21日からは合同軍事演習「ウルチ・フリーダム・ガーディアン」を実施し、朝鮮半島の軍事緊張を高めてきた。当然、北朝鮮はこれらに対して強硬に反対し、8月15日には米領グアムへの攻撃まで検討していることを明らかにしていた。
 一方、日本政府は北朝鮮のミサイル発射実験に対して国内的には「脅威」を極度に強調しながら、不安と警戒心を煽り、国際的には米国と同調しながら、制裁と圧力を強めるための「旗振り役」を自ら進んで担っている。
 現状を見るに北朝鮮に対する制裁と圧力は緊張緩和と対話の促進には決してつながらず、むしろ相互の不信と緊張を高め、最悪の場合には偶発的な紛争をも生じさせかねない状況まできているのではないだろうか。
 私たちは、米国、韓国、日本に対しても、朝鮮半島での軍事緊張緩和と対話再開のための措置を実施することを強く求める。そしてとりわけ、5月に出帆した文在寅政権には、そのためのイニシアチブを強く期待したい。
 残念ながらいまなおヘイトスピーチが蔓延し、敵視と排外がいまだ根強い日本社会にあって、朝鮮半島における緊張の高まりは、在日コリアンの日常生活に深刻な影響を与える。メディアで朝鮮半島の軍事状況をめぐる報道がでるたびに、子どもたちの無事を願わざるをえないアボジ、オモニの姿がある。
 私たちは、改めて朝鮮半島における核の廃絶と軍事緊張緩和措置をとること、ならびに南北および周辺4カ国の対話を再開し、朝鮮半島の緊張緩和措置と平和協定締結に向けた議論を進めることを強く求めるものである。
2017年 9月 3日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター
代表理事  林範夫 郭辰雄


韓国・朝鮮人元BC級戦犯者の互助組織「同進会」結成から62年、過去の映像でふりかえる

立法化を訴える李鶴来会長

 去る4月1日、「映像&トークでたどる韓国・朝鮮人BC級戦犯者『同進会』62年のあゆみ―早期立法解決を求めて」が東京神保町にて開催された。62年前の1955年、4月1日に同進会が結成された。
 まず、韓国・朝鮮人BC級戦犯者を扱った「第18田無住宅の夏」ほか、1960年代から2000年代終わりまでの13編のドキュメンタリーを編集した映像が上映され、同問題の解決のために運動してきた元戦犯当事者や家族、支援者の運動を振り返った。
 続いて、同進会会長の李鶴来(イ ハンネ)さんが挨拶をされた。
 60年以上もの長きに渡って続けられた運動について、司会をされた内海愛子さんは「ドキュメンタリーに出ていた人たちは、今この会場にも多数いる。長く関わっている人が多いことが特徴だ」と語った。また家族を代表して朴来洪(パク ネホン)さんから、父親の故・朴昌浩(パク チャンホ)さんや李鶴来さんをはじめ、その仲間である元戦犯の方々との思い出や、裁判、そして現在の立法化のための運動について語られた。また同進会を応援する会・世話人の有光健さんから「特定連合国裁判被拘禁者等に対する特別給付金の支給に関する法律案」の制定に向けて進捗状況について詳しく説明がされた。
 最後に李鶴来さんより、「この法律案は処刑された人もその他の被害者も同等に扱われるなど問題もあるが、解決されないまま61年、あまりに長すぎた。満足いく法律にしようとすると、どんどん先に延ばされる。早い制定を望む」と強い意気込みを語られた。 (2017.04.06)

韓国政府の外交戦略のエキスパートらが来訪、韓日相互への関心低下に憂慮

 韓国の外交戦略を研究する国立外交院日本研究センターのチョ・ヒヨン所長らが10月5日、コリアNGOセンターを来訪し、韓日関係や市民交流、学術研修の課題などについて意見交換した。センターからは郭辰雄(クァクチヌン)代表理事と金光敏(キムクァンミン)事務局長が応対した。
 今回の来訪は、韓日関係を検証し、その深化充実を検討するための視察で、同じく国立外交院外交安保研究所、また統一部(「部」は日本の「省」に該当)傘下の統一研究院、また外交部本部から事務官と行政官らが同行した。
 訪問団長を務めるチョ所長はスウエーデン全権大使、カナダ全権大使を歴任し、古くは1980年代に東京の韓国大使館で勤務、日韓協議に携わった幅広い経歴を持つ。意見交換では、コリアNGOセンターから、これまでの団体活動、私たちの立場からの日韓関係の現状理解、今後のあるべき方向性について考えを伝えた。これに対しチョ所長は、韓国が経済発展し、国際社会でポジションが変化していることや、韓国の外交関係も多元化し、相対的に日本への関心が低まっていることなどについて言及、しかしその傾向は日本においても見て取れるとし、韓日関係の長期的な展望について、さらに知見を広げ、東北アジアの地域益につながるような戦略を描く必要があるとの見解を示した。
 事務所での意見交換後、生野コリアタウンを案内。古代から現代にいたるまで、深いかかわりを持ってきた日本と朝鮮半島との関係について説明した。今回のセンター訪問は、国立外交院の李明烈(イミョンニョル)教授の斡旋によるもの。李教授は、駐大阪韓国総領事館で副総領事を務め、外交部在外同胞領事局長を歴任、現在は国立外交院で若い外交官の育成、外交政策の分析研究にあたっている。
 一行はほか、立命館大学でのセミナー、関西経済同友会との懇談など、財界、学会関係者などとの対話の機会を持った。 (2016.10.05)

女性に対する暴力の問題について、旧ユーゴの活動家が来日し講演

講演するRada Boricさん
(左から2人目)
 1991年8月14日、金学順(キム ハクスン)さんが日本軍「慰安婦」サバイバーであったことを自ら名乗り出られた。この8月14日を国連記念日にしようという運動が立ち上がってから4年目となる今年、韓国と日本各地、さらにアジアや米国などでアクションが行なわれた。
 東京では8月14日、千代田区にて、『「慰安婦」被害者が切りひらいた地平~旧ユーゴの活動家を招いて』と題する集会が開かれ(戦時性暴力問題連絡協議会と、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の共催)、200人以上が集まった。
 国際法の専門家である申惠丰(シン ヘボン)・青山学院大学教授は、女性に対する暴力をめぐる国際社会の動き、とくに国連の取組みについて報告された。女性に対する暴力が適切に処罰されていないために繰り返し再発している深刻な人権問題として注目を浴びるきっかけとなったのが、1990年代初頭の旧ユーゴ紛争で大規模に行なわれた性暴力だったが、それと並行して第二次世界大戦中の日本軍「慰安婦」被害者の告発があった点が述べられた。また、2005年に国連人権委員会が採択した「国際人権法及び国際人道法の重大な違反の被害者のための救済の権利に関する基本原則及びガイドライン」を紹介した上で、このガイドラインに沿って見た場合に、昨年12月28日の日韓政府合意後の日本政府や首相らの言動に、不十分な事実認定、人権侵害の実態に対する公職者の誤った認識、教育の欠落などが指摘できるため、「日韓政府合意は真の解決と言えない」と指摘した。
 続いて今回クロアチアから来日されたフェミニスト研究者・活動家であるRada Boric(ラダ・ボリッチ)さんが紹介され、旧ユーゴスラビア女性法廷に関する講演が行なわれた。
 Radaさんは1991年から1999年にかけて起きた旧ユーゴ紛争下において、「女性戦争被害者救援センター」を1992年に組織し、凄惨な性暴力を受けた女性たちに対する救援運動を展開した。さらに、被害者個人に対するアプローチと共に、議会へのロビーイングを行ない、暴力停止を訴えた。Radaさんは2000年に東京で開かれた日本軍「慰安婦」問題に関する“女性国際戦犯法廷”にも参加している。
 2015年にサラエボで開いた旧ユーゴスラビア女性法廷では、3日間にわたって36人の女性が戦時中や戦後の犯罪について証言した。この時には法廷だけでなく、アート表現も積極的に行なった理由として、「女性たちは被害者、サバイバーとしてだけでなく、アクティビストでもあるからだ」という。この法廷後に、クロアチアでは戦時性暴力の被害者に対する補償法が制定されたとのことだ。最後に、「日本軍「慰安婦」のサバイバーたちに敬意を表する。彼女たちが名乗り出たからこそ、女性に対する暴力の問題が明らかになったのだ」との言葉で講演を締めくくった。
 シンポジウムの最後に、日韓政府「合意」は解決ではないと訴えるアピール文が朗読され、採択された。その後、問題解決を訴えるデモ行進も行なわれた。(2016.08.16)

李鶴来さん執筆『韓国人元BC級戦犯の訴え-何のために、誰のために』の出版記念会が開催

出版記念の挨拶をされる李鶴来さん
 アジア太平洋戦争に「日本人」軍人・軍属として参戦した旧植民地出身者が戦後裁かれ、BC級戦犯として処刑もしくは無期懲役などの厳罰を下された人たちがいる。彼らはその後、1952年に日本国籍を失った後も釈放されず、一方外国人であると補償されることもなかった。長年の司法による闘いを経て、立法による解決を求め、元BC級戦犯である李鶴来(イ ハンネ)さんは、91歳になられた現在も毎週のように議員会館に通い、与野党国会議員に解決を訴えられている。
 今回、李鶴来さんへのインタビューを基にした自伝的な書『韓国人元BC級戦犯の訴え』が出版されることとなり、その出版記念会が4月24日、東京四ツ谷のスクワール麹町の宴会場にて開催された。
 長年この問題を支援してこられた内海愛子先生が司会を担われ、各界の支援者の方々のよる祝辞が述べられた。その後、李鶴来さんがご挨拶をされた。立法不作為であるとの判決を受け、この間ずっと続けられて来た立法府への働きかけの状況について詳細にわたって参加者に説明され、「この問題がこのままでは死んでいった仲間たちに申し訳ない」という心情を述べて締め括られた。
 乾杯のご挨拶は支援弁護士であった今村嗣夫弁護士のご家族がされ、当時多くの日本人が見捨てていたことへの怒りから弁護を引き受けられた話などが語られた。また、この運動の長年の様子を参加者が皆で振り返ることができるように作製された映像も流された。
 出版記念会は李さんを含め、戦犯であった当事者の方々とその家族、応援する人々で広い会場がぎっしりとうまっており、長年の活動の中で支援の輪が広がっていることが感じられた。その後の二次会では、民団中央本部の呉公太団長も駆けつけ、民団としてもこの問題の解決を団を挙げて取り組むことを李さんに約束された。
 『韓国人元BC級戦犯の訴え-何のために、誰のために』は梨の木舎より出版。全国の書店およびインターネットブックストアで購入が可能だ。 (2016.04.30)

日韓政府間「合意」は「慰安婦」問題の解決にはほど遠い 緊急シンポジウムが院内で開催

シンポには200名以上が集まった。
 昨年12月28日に開かれた日韓外相会談で、日本軍「慰安婦」問題ついて韓国政府が設立する財団に日本政府が10億円を拠出することで、同問題を「最終的かつ不可逆的解決」すると発表した。この合意に対して、被害当事者であるハルモニ(おばあさん)らは「受容できない」「無視する」と憤りを示し、市民社会でも合意無効と正義の解決を求める全国ネットワーク(約400団体と個人が参加)が1月14日に結成されている。
 日本でも去る2月5日、衆議院第一議員会館の大会議室にて緊急シンポジウム『日本軍「慰安婦」問題 日韓政府間「合意」は解決になるか!?』が開催された。
 まず主催団体の“日本軍「慰安婦」問題解決全国行動”(以下、全国行動)の共同代表である梁澄子(ヤン チンジャ)さんから、シンポジウム前に行なわれた外務省への申入れ行動に関する報告がなされた。「被害者不在の合意だ」との指摘に対して、外務省の担当者は「被害者の気持ちは共感するが、これは安倍首相と朴槿恵大統領が問題解決を図りたいという政治的意思の表明だ」と発言したという。またフォローアップ事業の中身や、韓国側で反対が強い基金が設立できなかった場合の方策については、何も答えることができなかったと報告された。
 続いて、韓国・慶北大学法学専門大学院のの金昌禄(キム チャンノク)教授が、今回の日韓政府間合意の問題点について詳細な資料を基に報告を行なった。金教授は、今回日本政府が拠出すると表明した10億円の金銭の使途について、「日本政府と韓国政府の説明は異なっている。韓国政府は被害者のためと言っており、日本側は財団の運営費用のために使われると言っている。」と述べた。
 次に報告を行なった阿部浩己・神奈川大学教授は、今回の日韓政府間「合意」は国際的基準に照らして、解決と呼べる代物ではないことを解説した。「「慰安婦」問題の本質は人間の尊厳の軽視、女性に対する暴力、人種差別が産み出した違法行為であるのだから、解決するとは、人間の尊厳を大切に、ジェンダーによる差別を撤廃し、人種主義・植民地主義を廃絶する取り組みが求められることだ」と結論づけた。
 韓国にある中央大学の李娜榮教授は、日韓間でアイロニー(皮肉)が繰り返されてきたことを指摘しつつ、日本軍「慰安婦」問題が韓国の市民社会の中でどのように位置づけられてきたのか、1980年代末の女性運動内での問題の発見から再度ふり返るための報告を行なった。
 韓国の外交部(省)が前日に、同部が意見聴取した被害者または保護者18人のうち14人が日韓政府間合意に肯定的反応を見せたと発表したブリーフィングについても、李娜榮教授は、実際に被害当事者が直接会って説明を受けたのは3名のみ、うち1名は「絶対に許すことができない」と発言した、すなわち肯定的な応答をしたとされる被害者は2名のみだとその内実を明らかにした。参考としてハンギョレ新聞の報道では、今回外交部が会ったのは個別で暮らしている方のみで、ナヌムの家など集団居住施設で暮らしている13名の被害者は含まれておらず、彼女たちは概して合意を受け容れられない意見を明らかにしているとのことだ。
 会場からは、日韓政府間合意に対する韓国の政治・社会の現状や、国家犯罪に対する追及に関する他国の事例など様々な質問が投げかけられ高い関心が示されたが。しかし残念なことに、国会議員は誰一人参席しなかった。司会を務めた渡辺美奈・全国行動共同代表は、「日本の政治の現状をまさしく証明している」と問題点を突いた。
 あらためて日本軍「慰安婦」問題の解決とは何であるのか、日本の政治及び社会がきちんと理解することが求められている。 (2016.02.06)

朝鮮半島での軍事衝突回避を南北両政府に求める緊急声明

 新聞報道などによれば、さる8月20日、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)が韓国側の拡声器を使用した宣伝放送に対して砲撃をおこない、それに対応して韓国軍も自走砲によって20数発の対応射撃をおこなった。
 のみならず、朝鮮中央放送によれば北朝鮮では中央軍事委員会非常拡大会議が開催され、金正恩第一書記が「凖非常事態」を宣言、前線兵士に「完全武装」を命じたという。一方韓国国内でも、最高水準の警戒態勢が発令され、南北間の軍事緊張が高まっている。
 私たちは南北両政府に対し、いかなる理由があろうとも軍事的挑発行為、軍事的応酬・報復をおこなわず、現在の軍事的緊張関係の解消のために一刻も早く、誠意ある対応をおこなうよう強く求めるものである。

 今回の事態の発端は、8月4日に非武装地帯の韓国側で埋設された地雷によって2名の韓国軍兵士が重傷を負ったことに端を発している。8月10日にこの事件を発表した韓国国防部は、「北朝鮮の仕業」であると断定し、2004年以来中断していた拡声器での宣伝放送を再開すると発表した。しかし北朝鮮国防委員会は8月14日、「物証は何もない」として関与を否定、韓国側のねつ造であると主張している。こうした応酬の結果が現在の状況である。
 これまでも南北の緊張関係の下で、2010年3月、46名が死亡・行方不明となった天安艦沈没事件、民間人犠牲者を生んだ2010年11月の延坪島事件などの痛ましい事件が続いているが、それらの犠牲が南北の和合・平和につながるのではなく、むしろ憎悪と敵対関係を深め、新たな犠牲者を生み出している。
 解放70年という、民族和合に向けて決意を新たにしなければならない、まさにその時期に2名の重傷者という犠牲を生み出してしまったという事実に南北両政府は謙虚に向き合わなければならない。

 いま私たち在日コリアンが置かれている状況は、残念ながら解放70年を過ぎた今なお、人間としての尊厳が十分に保障されているとは言いがたい。むしろヘイト・スピーチなどの差別・排外の対象として日常的に攻撃を受け、また朝日関係の軋轢のなかで、子どもたちの民族教育の権利すら否定されている。それでもなお、在日コリアンとして生きている私たちが抱き続けている希望は「世界に誇るにたる、平和で統一された祖国」なのである。
 その私たちにとって、南北の軍事緊張が高められ、双方が自らの「正当性」を主張し、相手を非難する姿は、強い怒りと深い失望を与えるものでしかない。
 まして、「平和憲法」と「安保法制」が大きな焦点となり、日本が「戦争ができる国」への歩みを加速させているなかで南北が緊張を高めることは、朝鮮半島のみならず東アジアの平和にとっても深刻な悪影響を与えるものである。

 こうした思いから、南北両政府に対し、以下のことを強く求める。
  1. 1. 南北両政府は相手方に対して一切の軍事的挑発行為をおこなわないこと
  2. 2. 南北両政府は拡声器での宣伝活動など、相手方への挑発・宣伝行為をおこなわないこと
  3. 3. 8月4日の地雷事件の真相究明のための早急な南北間協議をおこなうこと
  4. 4. 緊張緩和に向けて必要な南北対話を再開すること

以上
2015年8月22日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター


強制労働の責任を加害企業は逃れられない 韓国強制労働裁判判決を伝える院内集会が開催

原告の梁錦徳さん(中央)
 去る6月24日、韓国・光州(クァンジュ)高等法院(裁判所)は、戦前、名古屋で三菱重工業株式会社が行なった朝鮮人強制労働問題訴訟に対して、一審に続き原告らに対する賠償を命じる判決を出した。この判決について考える院内集会が7月8日、参議院議員会館にて開かれた(主催:朝鮮人強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動と、名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会)。
 この集会に出席するために、女子勤労挺身隊として強制労働をさせられ本訴訟の原告である梁錦徳(ヤン・クムドク)ハルモニと、弁護団の金正熙(キム・ジョンフィ)氏、「挺身隊ハルモニとともにする市民の会」顧問の金熙鏞(キム・フィヨン)氏が来日された。
 金正熙弁護士から、今回の判決の内容と意義について概要説明があった。今回の控訴審判決では、一審に比べて原告に支払いを命じた賠償額が若干少なくなっている。金弁護士は「今回の判決は終わりではない。学期的な大法院判決(2012年5月)から既に3年経った。三菱重工業は、自ら反省する姿勢を示すのならば、上告しないようにするべきだ」と述べた。上告期限は7月15日だが、三菱重工業は上告するものと見られている。
 続いて梁錦徳ハルモニは、戦前自らが日本に連れて行かれた当時のことについて切々と語るなか、「当時、正直であれ、正しくあれと言っていた人たちが、なぜ70年間、罪を認めないという恥ずかしいことを続けているのか」と語気を強めて語られた。
 今回の判決については、日本でも朝日、読売、日経新聞が報道している。この集会にも日韓の新聞記者が集まり、原告や弁護団に対する質問が続いた。
 ちょうど7月5日、ユネスコの世界遺産委員会で、日本政府が推薦した「明治日本の産業革命遺産」が登録を認められた。日本政府代表団がボンで発表した声明文に、朝鮮人に対して「forced to work」という表現が含まれていた。しかし登録が決まった直後、岸田外務大臣は「強制労働を意味するものではない」と発言した。「梁ハルモニは、強制労働のために日本の地に連れて来られ、さらには職場で日本人から殴られ蹴られた経験をしている。この事実は消すことができない」と集会主催側から非難の指摘があった。
 韓国で高等法院(裁判所)が賠償判決を出したのは、今回で3件目。前2件については大法院(最高裁判所)に上告され現在審理中であり、まだ判決が確定されていない。(2015.07.12)

過去清算なしには、本当の関係改善は実現しない! 韓日条約50年集会が開催

ユースフォーラム 第一部の講演
 今年は、戦後70年であり、さらに韓日条約が締結された1965年から半世紀という節目の年にあたる。しかしながら日本の植民地支配や侵略戦争に対する責任は変わらず放置され被害者は不当な苦痛を未だ強いられ続けている。それどころか、安倍首相は8月15日前に談話を発表する予定であるが、その談話がいかに過去清算の責任を捨象しようとしているかという話題で持ちきりという有様だ。  当センターは、2014年2月に結成された「日韓つながり直しキャンペーン2015」の事務局に参加してきた。同団体が主催で、去る6月20日、東京・千代田区の在日本韓国YMCAにて、「日韓条約50年 過去清算でつながろう!」と題する集会が開催された。この集会には韓国からも約30名が来日した。また集会後には、日本政府に過去清算の誠実な対応を求めるデモ行進、在日コリアンのミュージシャンによるコンサートがあり、また日韓の大学生を中心とした若者中心の「ユースフォーラム」も同時並行で開かれるなど、大変中身の濃い一日となった。
 集会では、韓国側で製作された日本軍「慰安婦」や強制動員などの被害者が証言する「私を記憶せよ」と、今回のために日本側で製作した、1960年代の日韓条約反対闘争について語る「1965年あの時、あの時代」という2つの記録映像が上映された。また群馬県高崎市にある朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑の撤去決定問題と、朝鮮高校無償化除外問題で闘っている現場からの報告が行なわれた。後半は「検証!日韓条約・請求権協定―「1965年体制」はもう終わりだ!」をテーマにシンポジウムが行なわれ、日韓の研究者やジャーナリストが活発な議論が交わされた。
 一方、「ともにつくろう つながり直しのプロローグ」と題したユースフォーラムには40名以上の若者が参加した。最初に、恵泉女学園大学名誉教授の内海愛子さんが、戦争当時アジアで日本軍は何を行なったのか、それを各国の人々はどのように受けとめていたかについて、証言などを基にした歴史事実を克明に語られ、NHKが1991年に製作したドキュメンタリー「チョウ・ムンサンの遺書 チャンギーBC級戦犯裁判」の映像を見た。続いて、日本側の大学生らが進行する形で、「なぜ今の日韓関係が悪いのか」と問いかけ、その原因について共に考えるワークショップが行なわれた。(2015.06.25)

安倍首相のポツダム宣言に関する国会発言についてのコメント

 5月20日、国会で行われた党首討論で、安倍晋三首相が共産党の志位和夫委員長に、第2次大戦の終結につながったポツダム宣言をめぐる認識が問われた。
 当初、志位氏は「村山談話では、過去の日本の戦争に対して、間違った戦争という認識を明らかにしている」とし、首相の認識をただした。それに対して、首相は「不戦の誓いで戦後70年、平和国家としての歩みを進めてきた。その思いに変わりはない」「(村山、小泉の)政府の談話を、全体として受け継いでいくと再三申し上げてきた」と、これまでの主張を繰り返すにとどまり、志位氏が「ポツダム宣言は、世界征服のための侵略戦争だったと規定している。この認識を認めないのか」と質問をしたところ、安倍首相は、「連合国側の理解をご紹介いただいたが、私はつまびらかに読んでいない。承知していないので、論評は控えたい」と述べ、その評価について言及を避けた。

 私たちは、戦後70年という節目の年を迎え、過去の歴史認識をめぐって韓国、中国との対立と緊張が深まるなか、新たなる「談話」の発表に言及している首相が、国会答弁で日本が降伏した際に全面的に受け入れた「ポツダム宣言」に関しての認識を表明しなかったことに驚きを禁じ得ない。もしその内容を本当に読んでおらず、理解していないとすれば、まさに政治家の資質に関わる問題であり、もし理解していながら虚言を弄して明言を避けたのであれば、それこそ国会の場で過去の歴史を歪曲、修正しようという意図を持っているというふうに受け止めざるを得ない。
 いずれにせよ、過去の歴史認識をめぐる日本のありようが今後の東アジアにおける国際秩序にとっても重要な変数である以上、曖昧に済ませられる問題ではない。

 ポツダム宣言はその重要な内容として、1943年に発表された「カイロ宣言」についても「宣言の条項は履行されなければならない」と言及している。「カイロ宣言」では当時植民地であった朝鮮半島に対して「朝鮮の人民の奴隷状態に留意し、やがて朝鮮を自由独立のものにする決意を有する」としているのである。
 いまも日本には朝鮮半島からの旧植民地出身者およびその子孫である在日コリアンが数多く居住しているが、日本社会には長年にわたって在日コリアンに対する制度的差別があり、またその歴史的経緯に対しての無知や歪曲などが差別意識の背景となってきた。その結果、現在ではありもしない「在日特権」なる言葉が広がり、在日コリアンに対する「ヘイトスピーチ(憎悪・差別の扇動表現)」の全国的な拡大につながっている。
 私たちは在日コリアンのいわば起源として、国際的に「奴隷状態」と言わしめた日本の過酷な植民地支配があり、朝鮮人の人間的な処遇の回復が戦後日本の課題の一つとして国際社会から求められていたことを改めてここで確認しておくべきだと考える。

 過去の歴史については、さまざまな立場からの意見や見解があることについては否定するものではないが、少なくとも「戦後レジュームからの脱却」を訴える安倍首相が、戦争終結にあたって全面的に受け入れた公的文書の内容についての認識を曖昧にすることは国内のみならず国際的にも不信を与えるものになるというほかない。
 改めて安倍首相はもちろんのこと、日本で政治に携わるすべての人たちに対して、歴史に対して誠実に向き合うことを訴えかけるものである。

2015年5月22日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター
代表理事  林範夫 郭辰雄

基本条約から50年の節目、招聘韓国記者や創価学会の青年らと日韓関係を議論

生野コリアタウンを案内
 基本条約の締結から50年の節目を迎え、日韓関係の今後についての議論が活発化している。
 日本の外務省が招聘した韓国の全国紙「朝鮮日報」の記者が2月6日に来阪、在日同胞の現状や日韓関係についてセンターの金光敏(キムクァンミン)事務局長にインタビューした。国際報道担当のチョンキソプ記者は、金事務局長の案内で生野コリアタウンを訪問、在日コリアンや多文化時代を迎えた日本社会の状況について説明を受けた。
 また、在日の目に悪化する日韓関係はどのように映るのかを質問。これについて金事務局長は日韓双方が寛容性を低下させている点に強い憂慮を表明し、韓国政府の対日政策の問題点を指摘。李明博前政権と現在の朴槿恵政権による対日言動が、日本国内の排他的ナショナリズムを逆に刺激している点を直視するよう求めた。
 チョン記者はこの時期に重要な問題提起だと述べ、自紙に寄稿してもらうべく上司と相談したいとした。チョン記者は日本滞在期間中の取材記を帰国後、記事にまとめ掲載するという。

ワンワールドフェスティバルで講演
 去る7日、8日に大阪市北区で開催されたワンワールドフェスティバルの提案企画のひとつとして開催された「日韓友好セミナー」に金事務局長が講師として招かれた。このセミナーを主催したのは創価学会関西青年部。会場には創価学会関係者をはじめ関心のある市民ら約40名が参加した。
 セミナーでは、関西青年部の担当者が日韓の現代史を整理し、創価学会と韓国との関わりについて説明した。兆しが見えない現在の日韓関係の改善に向け民間レベルでの交流活発化を提起した。
 金事務局長はインタビューに答える形式で講演。日本の右傾化に憂慮を示し、非寛容がヘイトスピーチなどの社会不安の背景になっていると指摘した。社会コミニュティの衰退による個の孤立化を防ぐためにも、社会セクターとしての宗教団体の役割を強調した。
 また、創価学会が架け橋となって日中関係が改善、それが東北アジアの安定に大きく寄与した歴史を踏まえ、単なる日韓両国による関係改善という視点ではなく、地域全体の緊張緩和や平和構築に資する相互強調の必要性を言及。そのためにも、今年発表するとしている戦後70年の安倍談話は極めて重要だと指摘した。河野談話や村山談話など歴代政権が積み重ねてきた歴史認識が希薄化したと見えたり、後退したと映らないよう、創価学会の支持政党である公明党が牽制役になるよう期待を表明した。
 創価学会は大きな組織で社会への影響力もある。アジアにおける民衆連帯にも問題意識は高い。過去の侵略戦争や植民地支配の反省に立った歴史認識を広げ、創造的未来のために地域の安定と平和構築に役割を果たしてほしい。(2015.02.11)

2015年にどう行動するか  日韓つながり直しキャンペーンが討論集会を開催

 戦後70年、日韓条約締結から50年という節目の年となる2015年まで、あと1ヶ月足らず。同年に歴史問題、戦後補償問題に大きな進展を獲得しようと、日韓双方の民間団体では既に昨年から取組みを始めている。その動きの一つで今年2月に結成された「日韓つながり直しキャンペーン2015」には当センター東京事務局も参与しており、6月に韓国2団体との共催により「歴史NGO大会in東京」を開催した。その成果をふまえつつ2015年に向けた準備論議を継続して行なっているが、2014年が過ぎようとするにあたり、去る12月7日、文京区民センターにおいて討論集会を開催した。
 今回の討論集会は「2015年、どう行動するか? ―1965年体制を終わらせていくために―」というタイトルで、とくに韓国と日本の大学生がパネリストとして登壇し、歴史問題に向き合う自分たちの活動について語った。大学生の発言に先立ち、パネリストの吉澤文寿・新潟国際情報大学教授から、歴史問題を複雑且つ解決困難にしている一つの理由として、日韓条約や日韓請求権協定をめぐる日韓間の解釈の違いがあることを指摘し、今後研究者やジャーナリスト、専門的に取組んでいる民間団体が共同で検証作業を行なっていく計画にあることが紹介された。
 韓国からは、「希望ナビ」で活動するキム・ヒョンジュンさん、「サハリン希望キャンペーン団・青年分科」で活動するホ・ウォンヘさんという2人の大学生が来日し、発題を行なった。希望ナビは、日本軍「慰安婦」被害者のハルモニたちが世界の平和・人権のために努力を惜しまない姿に感銘を受けた韓国の若者たちが、2013年末から活動を開始したグループである。希望ナビでは今夏に50名者の青年がヨーロッパの戦跡、虐殺地、博物館、遺跡など第一次・第二次世界大戦の痕跡地を巡回し、歴史を学ぶとともにその地で戦時性暴力など戦争犯罪をなくすためのキャンペーン活動を行なったことが、キム・ヒョンジュンさんから報告された。ホ・ウォンヘさんからは韓国国内における動き、たとえば無国籍とされてきたサハリン韓人の原告が韓国国籍があることの確認を求めた訴訟で、今年6月にソウル行政裁判所が原告勝訴の判決を出したことなどが報告された。
 日本の大学生も4名が登壇し、昨年・今年と日本・韓国・中国三国を廻るなかで、現地の人たちと向き合い話す機会を通じて自分の目で真実を見極めることの重要さを知った、今必要なのは「会話」だと考えると発言した。
 もう一人のパネリストである渡辺美奈さん(wam事務局長)は、日本軍「慰安婦」問題をめぐり現在様々な混乱や歪曲が起きているなか、とくにいま大変問題と感じているのは、被害者の証言が“証拠”として扱うべきでないという考えがますます強まっていることだと語った。
 質疑応答の時間では、「なぜこうした問題に関わって活動するようになったのか」「いま何が最も障壁となっていると考えるか」など多くの質問が日韓の大学生に集中した。それらに対して韓国の大学生は、一個人の所感レベルにとどまらず、所属団体の活動目的もふまえながら発言を行なっている姿が印象的だった。日本の大学生たちも、普段友人やアルバイト先で政治のことについて話すことが憚れる環境があるが、そうしたなかでも話しかけていくことの大切さと決意を語っていた。
 つながり直しキャンペーンでは、来年1月に日韓学生・青年による「ユース・フォーラム」を立ち上げ、6月20、21日に「日韓つながり直し宣言集会」を東京で開くことが決まっている。続いて、日韓条約の調印日である6月22日にはソウルで取組みが行なわれる予定だ。(2014.12.07)

「1965年日韓協定体制」を克服するための日韓市民共同の取組みが、東京で開催

6月21日午後の全体シンポジウム
 来年2015年が日韓条約締結50年にあたり、その節目を未だ残されたままにある過去清算問題の解決のための機会にすべきと考える日韓市民団体が集まり、6月20日~22日の3日間、東京で「日韓市民がいっしょに開く『歴史NGO大会 in 東京』~1965年日韓協定体制の克服と東アジアの平和」を開催した。
 実施したのは3団体で、日本側は実行委員会形式をとる「日韓つながり直しキャンペーン2015」(当センターも参加)、韓国側は「東アジアの平和のための歴史NGOフォーラム」と「韓日市民宣言実践協議会」の2団体が参与した。
 この大会には、韓国から市民団体、研究者、弁護士など約50名が来日するだけでなく、オーストラリア、オランダ、タイ、フィリピン、米国、ロシアからも歴史、国際政治の専門家が参加した。とくに歴史NGOフォーラムが、日韓間に横たわる歴史問題を二者間で見つめるのではなく、多様な視点から捉え直すことの重要性を提起し、今回のように幅広く招請する形となった。
 6月20日は、衆議院第一議員会館で記者会見を開いた。この日は通常国会の最終日であり、きしくも安倍政権が進めてきた「河野談話」の作成過程に関する検証報告書を発表で、ちょうど菅官房長官の記者会見と時間がバッティングしたため、マスコミの参加も非常に少なかったのが残念でならなかった。
 翌21日は、開会宣言後に4名の研究者からの基調講演が行なわれた。恵泉女学園大学名誉教授の内海愛子さんが、当時の日韓条約反対運動に朝鮮史研究者がどのように関わっていたのかという切り口から、日韓条約の問題点や日本の運動側が抱えていた限界等について触れられた。また、オーストラリア国立大学名誉教授のガヴァン・マコーマックさんは、戦後東アジアが置かれた国際政治の中で築かれた日韓関係について検証を行ない、あらためて日韓条約で問い直されるべき点について指摘した。
 その後にシンポジウムが続いた。日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表の梁澄子さんは、日本軍「慰安婦」問題の真の解決の絶対必要条件は、被害者が受け入れることのできる内容であり、それは「慰安婦」問題の運動が始まった当初からずっと堅持されてきている立場だと語った。過去清算問題に取り組む上で決して忘れてはならない観点だ。慶北大学教授の金昌録さんは、「“1965年体制”は多くの問題を抱え既に崩壊に近い状態であり、私たちは新たに“2015年体制”を構築する必要がある」という見解を表明した。ディスカッションでは、この2015年体制に対する質問が相次いだ。
 同日のサイドイベントとして、映像を通じて朝鮮植民地問題を考えるという企画が行なわれ、「兵隊さん」「軍用列車」「銃後の朝鮮」「志願兵」という4つの宣伝映画が上映された。
 翌22日は、複数の分科会が同時並行で進行した。〈植民地主義清算=「反日」批判を乗りこえる〉では、ジャーナリストの安田浩一さんによる日本のヘイトスピーチの現況についての報告が、韓国側参加者の関心を大きく集めた。
 今回の大会では、10~20代の学生たちによる歴史対話の試みもあった。『日中韓高校生歴史サミット』では、韓中日3国にルーツを持つ高校生10名が、現在の歴史問題を各国の視点から報告した後、グループ別討論を行ない、どうしたらもっとより良い関係を築けるのかについて考えた結果を表明した。また特別セッションとして開かれた『青年フォーラム』には、韓国の大学生と日本の大学生が各10名ほど参加し、日韓の過去と現在について持っている認識を表明しながら、未来に向けた展望について議論を行なった。
 当センターは、上記分科会の後半の司会進行を担ったほか、韓国側参加者の滞在にともなう事前準備を含めた現地コーディネート全般を担った。そのことを通じて、韓国の様々な研究者や団体との関係ができ、またそうした人たちに在日同胞として活動する市民団体の存在をアピールするという機会に恵まれた。
 今回の大会はいわば前夜祭で、来年2015年にもっと大きな結節点をつくり出す計画である。多くの人たちの関心と協力を引き続きお願いしたい。(2014.06.25)

戦時動員の真実いまに伝える笹の墓標展示館 保存のためNPO発足めざす

犠牲者を追悼する“願いの像”
笹の墓標展示館 門構え
 北海道幌加内町の朱鞠内湖畔にたたずむ旧光顕寺。ここは今、笹の墓標展示館としてこの地域の戦争時代の真実をいまに伝える重要な施設となっている。
 朱鞠内湖は戦時下のエネルギー不足を補う水力発電用のダムとして突貫工事で建設された。この工事には労務者が戦時動員されており、その中に多くの朝鮮人も従事させられている。
 光顕寺は過酷な工事現場で様々な理由により犠牲になった人々を一時安置していた場所。現在も本堂に引き取り手のない位牌が多数残されている。それら位牌には、朝鮮人のものも含まれている。
 このダム工事に従事していた李サンソクさんは、市民団体の招きで60年数年ぶりに韓国からこの地を訪れた際、雪のちらつく時期まで半身を水に浸けながらも働かされたと証言した。戦争遂行のため厳しく劣悪な環境下で労務者たちがどのような強制労働を強いられたのか、その一端が明らかとなった。

 朱鞠内湖畔の集落は戦後、急速に過疎化、光顕寺もその後住職がいなくなった。地域の民衆史を掘り起こす空知民衆史講座のメンバーが1976年以降、光顕寺の歴史的意義を後世に語り継ぐ作業に取り組んできた。その一環で光顕寺を朱鞠内ダムに関わる歴史事実を伝える資料館として整備、また、ここを拠点に様々な人々が語り合い、共同作業に取り組む交流ワークショップなどの開催などを続けてきている。ここでの交流は、日本、在日、韓国、中国、台湾、オーストラリアにまで広がっている。
 一方、老朽化した施設管理や展示資料の充実、そのさらなる有効活用のための活動体制の強化が課題に浮上し、その新しい模索として法人化が検討されている。
 その準備会が6月7日と8日、笹の墓標展示館で行われた。1997年日韓共同ワークショップと銘打って行われた若者たちの交流行事以来、関係を築いてきた当センターも参加、金光敏(キムクァンミン)事務局長が出席し、新発足のNPOが担うべき役割や活動財源の確保などについて事業提案などを行った。
 今後夏から秋にかけて準備が進められ、新規事業の考案と合わせ、取り組みのさらなる継承と、東アジア地域の市民ネットワークづくり、そして平和構築の実践活動をより効果的に進めることをめざす。
 排外主義が露骨化し、近隣国への対抗的世論が活発化するなか、あえて過去の歴史から学び、民衆レベルでの相互理解と和解に取り組もうとの活動の意味は大きい。国民国家の限界性を越え成熟した市民意識を生み出し、多様な価値づくり、ちがいある人々との協働にコリアNGOセンターもたゆまない努力と挑戦を傾けていきたい。

 北海道に訪問される際には、朱鞠内湖畔の笹の墓標展示館にぜひ訪ねてほしい。朱鞠内湖は、アウトドアのスポットとして人気が高い。夏場は釣りファンにはたまらない幻の魚「イトウ釣り」、初心者にも乗りやすい穏やかな湖面に揺られるカヌー体験。冬場はわかさぎ釣りで観光客らが賑わう。また、5月6月は山菜採り、9月にはキノコ採りで新鮮な旬の山の幸が味わえる。湖畔には宿泊施設もあり、近隣には公設民営の良質の温泉もある。
 朱鞠内湖には、新千歳空港から特急で深川駅か旭川駅まで1時間半、そこからさらに車で1時間半。駅からレンタカーで広大な北海道の自然を満喫しながらのドライブもいい。深川・旭川ー朱鞠内湖は公営バスでも往来は可能。(2014.06.10)

パネル写真と映像でたどる、戦後69年目の韓国・朝鮮人元BC級戦犯者問題

多くの来場者が、写真パネルに
視線を注いでいた

同進会の李鶴来会長
 韓国・朝鮮人元BC級戦犯者とは、第2次世界大戦中に日本軍に動員され、戦後連合国による軍事裁判で「BC級戦犯」として死刑も含め、有罪判決を受けた人たちである。祖国が独立してもなお「日本人戦犯」として刑を受け続け、釈放後は一切の補償・援護の対象から外された。これに対し当事者とその家族たちは、日本政府に謝罪と補償を求めて活動し、90年代には裁判に提訴、東京地裁・高裁判決では立法を促す付言判決が出された。だが今現在まで何の進展もみられない。
 この問題を多くの人たちに伝えるため、ゴールデンウィークの前半の連休だった4月26日から29日にかけて、東京・中野区の「なかのZERO本館」にて『パネル写真と映像でたどる戦後69年目の韓国・朝鮮人BC級戦犯者問題——長すぎる苦難の歩みといま』(主催:韓国・朝鮮人元BC級戦犯者「同進会」&同進会を応援する会)と題するイベントが開催された。元BC級戦当事者が日本軍に動員された経緯や戦地でさせられていたこと、戦後の戦犯裁判と刑期中および釈放後の日本での苦難、日本政府への補償を求めた活動の様子などが一人一人写真とともに紹介されていた。
 最終日の29日には、BC級戦犯問題を扱ったドキュメンタリー映画が上映され、その制作者のトークイベントも同時に開催された。また今年1月の通常国会で同問題に関する質問書を提出した有田芳生参議院議員も来場し、日本政府の答弁が「日韓請求権協定ですべて解決済み」で、裁判所が促した法案作成の予定がないこと、そもそも未解決であるこの問題の意味が必ずしも明らかにされなかった、大変誠意の欠けたものだったと説明した。
 会の最後には高齢で登壇の予定の無かった、当事者である李鶴来さんより集まった多くの人たちに対し「裁判などでも一緒に闘った人たちももうみな亡くなりたった一人になってしまった」「速やかな立法化を日本の国会に求める」として民主党政権時に議員立法で出された法案名「特定連合国裁判被拘禁者等に対する特別給付金の支給に関する法律案」をあげて、速やかな解決を求めるスピーチで全体の会が終わった。(2014.05.08)

サハリン同胞の問題についてソウルでフォーラム、当事者・研究者・弁護士らが集まる

発言は全てCCTVで生中継
 現在、ロシア・サハリン州に居住している韓人(コリアン)は3万人を超える。総人口約50万人のサハリンの民族構成で朝鮮民族が2番目に多いという事実の背景には、日本の朝鮮植民地支配と、戦後続く東北アジアの冷戦体制が厳然と横たわっている。
 2004年からサハリン韓人社会の問題に取り組んできた韓国の「地球村同胞連帯」(KIN)と、民主社会のための弁護士会(民弁)・過去清算委員会」、チョン・ヘチョル国会議員室(新政治民主連合)、4・9統一平和財団の共同主催で「解放されなかったサハリン韓人問題」と題するフォーラムが、ソウル市の在韓朝鮮族連合会会館で開かれた。
 KIN共同代表の裵徳鎬(ペ・ドッコ)さんが開催の趣旨と、発言者や参加者の紹介を行なった。日本からも李羲八(イ・フィパル)さん(91歳)も参加した。李羲八さんは戦前にサハリンで炭鉱労働者として従事した当事者で、お連れ合いが日本人だったことから日ソ国交回復後の1958年に日本に来ることができ、樺太帰還在日韓国人会を結成して、サハリン韓人たちの帰還運動のために力を尽くされた方だ。この日は帰還運動当時の経験などを語られた。ちなみに当センターの金朋央東京事務局長が韓国滞在中ずっと李羲八さんに同行し、また渡韓費用として日本で同問題に関心を持つ有志からカンパが寄せられている。
 ノ・ヨンドン仁川大学法学科教授の進行で、永住帰国し現在釜山で暮らしているアン・ヘジュンさんや、韓国で進められている2種類の訴訟(慰労金支給と国籍確認)の弁護団を担っている民弁所属の弁護士らが発言した。さらにインターネット通話を通じて、サハリン州ユジノサハリンスクからサハリン州韓人会のイム・ヨングン代表ら3名と、北海道大学の玄武岩(ヒョン・ムアム)准教授との中継があり、リアルタイムの対話がなされた。
 KINは今年に創立15周年を迎えるにあたり、これまでKINが取り組んできた様々な海外同胞問題をテーマとした連続フォーラムを来年2月まで行なう予定だ。1回目となる3月は朝鮮籍の在日同胞問題を取り上げ、この時も生中継で朝鮮籍在日同胞が出演し発言している。詳細は、KINのホームページ(※ハングルのみ)に掲載されている。(2014.04.21)

【お礼とご報告】 サハリン韓人一世たちに陰暦カレンダーが手渡される

陰暦オリジナルカレンダーの表紙
 韓国で在外コリアンの支援活動を行なっているNGO「地球村同胞連帯(KIN)」が、サハリンで暮らす韓人一世のハルモニ(おばあさん)・ハラボジ(おじいさん)たちに陰暦が書かれたオリジナルカレンダーを送る活動を行ないました。そのカレンダーを送る送料へのカンパを日本から行なおうと、当センターから募金のお願いを行ないました。詳しくはコチラ

 この呼びかけに対して、計38,000円の募金が集まりました。ご協力くださった方、本当にありがとうございました! 集まった募金は全て日本円のまま2月16日にKINに伝達しています。このカレンダーを送るプロジェクトに対して、韓国国内を中心に約1500名からの募金が集まったそうです。

 時間上の順序が逆となりましたが、KINは1月14日から21日にかけてサハリン南部の8箇所(ユジノサハリンスク、ブイコフ、ホルムスク、シネゴルスク、ウグレゴルスク、シャフチョルスク、ボシュニャコボ、コルサコフ)を廻り、韓人一世たちにカレンダーを手渡してきました。ハルモニ、ハラボジたちは大変喜んだとのことです。

 ご報告が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
 今後とも、サハリン韓人の存在に大きな関心とご支援をお願いいたします。(2014.04.05)

『東アジア共同ワークショップ』の若者たちの交流の記録が放映されます。

 日本と韓国、中国との関係が悪化する中、北海道朱鞠内湖畔で日本、コリア、中国、台湾の和解世代が集まり、議論し、交流しました。2月15日、16日に渡り開催された『東アジア共同ワークショップ』ですが、その模様が、NHK北海道によって記録されて放送されます。
 ぜひご覧ください。当センターの金光敏事務局長が出演しています。(2014.02.25)

  • 北海道内:2014年 2月28日(金) 午後 7時30分~
          「北海道クローズアップ・日韓在日若者たちの対話合宿」
  • 全国放映:2014年 3月 8日(土) 午前11時30分
          「目撃!日本列島」 (※再放送もあります)


東北アジアの子どもたちが絵を通じてつながる ~今年も“ともだち展”が東京で開催

4カ国のの子どもたちの願いを込めた
手形が、黄色いドラゴンのウロコに
 2000年から毎年開催している、南北朝鮮と日本の子どもたちの絵画展「南北コリアと日本のともだち展」(ともだち展)の東京展(主催:同実行委員会)が今年も開催された。絵画展示は2月20日~23日の4日間。渋谷区・青山こどもの城であった。
 今回のともだち展の絵のテーマは「わたしのねがい」。日中韓の3言語で発刊されている「へいわってどんなこと」という絵本の作者・浜田桂子さんが実行委メンバーと共に、2013年8月に平壌、9月にソウルを訪問し、それぞれの子どもたちに絵本の読み聞かせや、平和の黄色いドラゴンをかたどった今回の共同制作作品の説明と手引きを行なった。さらに中国東北部の延吉の子どもたちも加わって完成した作品「みんなでパレード」は東京展に訪れた来場者の注目を引いていた。
 韓国のパートナー団体であるオリニオッケドンムが5人の子どもたちと一緒に来日し、また延吉市少年児童図書館からも大人2名、そして初めて子ども1名も一緒に来日した。子どもたちは台東区立小学校や東京朝鮮第一初中級学校を訪問したり、ホームステイをしたりなど、短い東京での滞在時間を楽しんだ。22日夕方には、実行委の筒井由紀子さん(KOREAこどもキャンペーン)の進行のもと、浜田さんやオリニオッケドンムのチェヘギョンさん、延吉市少年児童図書館の金冬梅さん、朝鮮学校教員の金聖蘭さんによるパネルトークが行なわれ、60名以上が集まった。
 週末の22日、23日には絵画展示ブースで、昨年8月に平壌を訪問した子どもたちや大学生・院生による訪朝報告もふくめた「ギャラリートーク」が開催され、さらに今回は林典子さんの写真展「Pyongyang2013-夏の子どもたち」も同時展示された。共同作品をつくる平壌・ルンラ小学校の子どもたちの笑顔が印象的だった。(2014.02.25)

2014冬 東アジア共同ワークショップ開催、高校生・大学生らが「平和」について議論

韓日の高校・大学生が活発に議論

金光敏・当センター事務局長が講演
 東アジアの平和を考える「2014冬・東アジア共同ワークショップ」が2月15日から17日まで、北海道朱鞠内湖畔(幌加内町)の旧光顕寺で開催された。この「ワークショップ」は1997年以来続けられている韓日、東アジア地域の平和を考える体験学習会で、今年は日本、韓国、在日、台湾、中国からの参加者が直面するさまざまな課題について討議した。
 「ワークショップ」の現場となった朱鞠内湖は戦時中に水力発電用につくられたダムで、その建設に多くの朝鮮人が動員されていたことがわかっている。「ワークショップ」は1997年夏に初めて開催され、その際、集落の共同墓地横の笹薮の中から労務者と思われる遺骨が4名発掘されている。うち2名は棺が確認され副葬品もあり、それにより日本人であることがわかったが、不自然な姿勢で埋葬されていた残り2名は動員されていた朝鮮人のものではないかと考えられている。
 「ワークショップ」が討議場とした旧光顕寺はダム建設時の事件事故で犠牲になった人々の一時安置されていた古寺で、現在は戦時中の歴史を今に伝える「笹の墓標資料館」として朱鞠内ダム建設に動員された朝鮮人労務者の資料や、97年以来のワークショップの記録などが展示されている。
 今年の冬のワークショップでは、前半の日程を高校生や大学生約50名を含む約100名が参加、主に若者たちを中心に交流、議論を交した。全体討論では、当センターの金光敏(キムクァンミン)事務局長が「平和とは何だろう?」のテーマで基調講演を行い、それを受けてグループ別討議が行われた。そこでは、それぞれの立場から平和や歴史認識の共有、ヘイトスピーチなど幅広いテーマについて議論された。今年は札幌朝鮮高級学校の生徒らが10数名参加した。
 一方、若者たちの日程を終えてからの後半では、北海道を中心に日本に遺されたままの朝鮮人徴用工などの遺骨の故国返還問題、また歴史の真実を伝えて行くため「笹の墓標資料館」の活用方法、また東アジアの平和と和解に向けた新しい市民協力を推進するNPO発足についても議論された。
 韓日、日中関係が悪化する中でのワークショップの開催で、マスメディアの注目を集めた。今回の模様を近々NHKが報道する。放送日が決まり次第、ご案内したい。(2014.02.20)

「1965年体制の終わり」の始まりに向けて 日韓つながり直しキャンペーンがスタート

実行委を代表して
矢野秀喜さんが基調報告
 来年2015年は日韓条約が締結された1965年から50年目を迎える。すなわち日韓間の国交が正常化してから50年が経過することになるが、近年の日韓関係は摩擦と緊張が多く、安倍首相と朴槿恵大統領との間ではともに就任後一年も経つにもかかわらず首脳会談が開かれていない異常事態となっている。
 一方、日本の朝鮮植民地支配、アジア侵略戦争の過程で生じた様々な戦争犯罪、人権侵害、賃金未払いなどの不法行為については、被害者の救済がほとんど実現していない。その原因の一つとして日韓条約と共に結ばれた日韓請求権協定がある。昨年韓国では、日韓請求権協定では補償問題は解決されていないとして韓国人強制徴用被害者に対する賠償を日本企業に命じる判決が相次いでいる。それに対する日本側の反応は「反日」という一言で片付ける、冷ややかなものばかりだ。
 そうした両国間の関係を基から真摯に見つめ問い直し、つながり直すことを日韓市民が共同で進めていこうという動きが昨年より始まっている。その日本側の推進主体の発足集会として「日韓つながり直しキャンペーン2015 スタート集会」が、去る2月16日に東京千代田区で開かれ、180名を超える参加者が集まった。
 前日に記録的な大雪が関東地方を見舞うなか、韓国からも6名の学者、活動家が来日し参加した。韓国側ゲストを代表して挨拶に立った李錫兌(イ・ソクテ)弁護士は、様々な戦争責任・戦後補償問題を歴史的に概括した上で「この場に集まった日本の市民たちに敬意を表する。今日を契機に新たな日韓の市民による共同行動を始めていこう」と呼びかけた。その後、金昌禄(キム・チャンノク)慶北大学教授、庵逧由香・立命館大学准教授が、韓国・日本各々の立場から見た「日韓国交正常化50年」について講演を行なった。
 また2015年に向けた諸課題として、日本軍「慰安婦」、強制連行、被爆者、朝鮮学校無償化排除・ヘイトスピーチ、日韓会談文書公開、日朝国交正常化、靖国神社の各問題についてリレー発言が行なわれた。
 今後、6月20~22日の3日間にわたりシンポジウム等の日韓共同の会合を東京で開くことになっている。解決がますます複雑化する様相を示している歴史問題に対して、人びとの人権と尊厳を守るという観点を持った日韓の市民がより多く参与するようになることを期待したい。(2014.02.18)

サハリン韓人一世に陰暦オリジナルカレンダーを送ろう!-送料カンパのお願い

 朝鮮民族にとって、正月休みや秋夕な陰暦(太陰暦)は今も日常生活に密着した暦です。それはロシア・サハリンに住む韓人一世(現在、約800名)にとっても同様です。しかし、サハリンでは陰暦のカレンダーの入手が非常に困難です。
 そのため、サハリン韓人への支援をずっと行なっている韓国の市民社会団体“地球村同胞連帯(KIN)”では、これまで韓国内で陰暦のカレンダーを集めて、サハリンに送るという活動を毎年行なってきました。そして、来年2014年のカレンダーについては、サハリン韓人一世らへのお正月の贈物として、陰暦もわかるオリジナルのカレンダーを制作して送るというプロジェクトを実施することになりました。
 カレンダーは既に完成し、またその制作費分については、韓国国内をはじめ、日本、中国、ドイツ、そしてサハリン同胞自身からの支援金が集まりました。しかし、このカレンダーを韓国からサハリンに送り、さらにサハリン内で一世一人ひとりの家に送るまでの送料が非常にかかってしまいます。
 そこで、このカレンダーを送るための募金(カンパ)の呼びかけをあらためて行なうことになりました。

 KINからの呼びかけチラシを下に掲載します。そちらに書かれた韓国の銀行口座に送金してくださることも大歓迎です。
 ただ海外送金を個別ですると手数料の合計額が非常にかかりますので、一旦日本国内で集めて、まとめて送金する手段もご用意しました。コリアNGOセンター東京事務所がその取りまとめを行ないます。責任持って、後日KINにお渡しします。

  《募金(カンパ)額》 1口 1000円  *複数口大歓迎です。

▼郵便振替口座
  口座記号番号:00160-6-789852
  口座名称 :コリアNGOセンター東京(コリアエヌジーオーセンタートウキョウ)
    ※通信欄に「サハリン韓人カレンダーへのカンパ」などと、明記してください。

▼銀行口座
  三菱東京UFJ銀行 大久保支店(店番号364) 普通口座 0053306
  コリアNGOセンター 東京事務局員 金 朋央(コリアエヌジーオーセンター キム プンアン)
    ※お手数ですが、カンパである旨をメール等でご連絡ください。

 カレンダーの送付は12月中となりますが、この送料カンパは送付後も引き続き受け付けます。
 ご支援くださった方のお名前をこの募金活動が終了した時点で取りまとめて、サハリン韓人一世とつながるサハリン韓人諸団体に伝えるように致します。

 ぜひサハリン韓人一世への新年の贈物を送るこのプロジェクトにご協力ください!

【上記のKIN銀行口座情報】
ウリ銀行 1081-100-423864 KIN(地球村同胞連帯)
WOORI BANK MAPO-RO BRANCH (SWIFT: HVBKKRSEXXX)

⇒ お問合せは、当センター東京事務局まで。
  (電話:03-3203-5655, e-mail: tokyo@korea-ngo.org


歴史学者や元外交官らが、「村山談話」を継承し発展させる会を立ち上げる

多くのメディアのカメラが立ち並ぶ
 戦後50年目となる1995年、当時の村山富市首相(当時)は「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」などと述べた談話を発表した、この村山談話は、その後の日本の歴代政権に引き継がれ、朝鮮半島や中国との関係において、日本政府の姿勢を表す基本軸として機能してきた。ところが、安倍首相は今年4月22日に「安倍内閣として、これをそのまま継承しているわけではない」と明言したことが、周辺国から強い懸念を引き起こした。その後、5月10日菅義偉官房長官が「(村山談話)全体を歴代内閣と同じように引き継ぐ」と記者会見で述べ修正を図ったが、周辺国の不安は続いたままである。
 そうした状況を受けて11月11日、参院議員会館にて「村山談話を継承し発展させる会」の発足記者会見が開かれ、海外メディアを含む多くのマスメディアが集まった。
 冒頭、10月14日に社民党の新党首となった吉田忠智参院議員が挨拶し、村山談話の継承が今こそ必要であると述べた。続いて5名の共同代表からの発言がなされ、元外交官の甘木直人さんは、「小泉政権期では、他の国との関係が悪くなろうとも、米国との関係さえ良ければ、それでよしとされた。いまの安倍政権には、たとえ米国との関係が良くないとしても、アジアの国々との関係が良いことが、日本の安定につながるということを、あえて訴えたい」と語った。
 同会は年明けから本格的な活動を行なう予定であるとのことだ。日本の歴史認識が、韓国・中国をはじめとしたアジア諸国との溝を広げていく方向に流れていくことが懸念されるなかで、村山談話をどのように位置づけるのかは、今後ますます大事なイシューとなっていくことが予想される。(2013.11.20)

社団法人平和問題研究所から功労牌を授与

金秀玉・日本支部長(右)より牌を授与
 韓国統一部(日本の省に該当)所管の社団法人平和問題研究所が30周年を迎えた。平和問題研究所は、統一問題に関する政策研究では老舗的存在。政府の統一政策にも影響を与え、幅広い研究者の内外ネットワークを持つことで信頼を集めている。統一部の政策研究機関である統一研究院で研究員を務めた申榮錫(シンヨンソク)現理事長が30年前に立ち上げたシンクタンクだ。また、前職理事長を務めた玄敬大(ヒョンギョンデ)元国会議員は、大統領直属の民主平和統一諮問会議の首席副議長(長官級)を務める。
 去る10月24日、ソウルで発足30周年記念式典が開催され、政府関係者らをはじめ政治家、研究者など幅広い人々がかけつけた。この場所で、当センターの金光敏(キムクァンミン)事務局長に対して功労牌が授与された。金事務局長は、日本地域関西支部活動の事務局長を務めたほか、本部主催の政策研究セミナーで数度にわたり、政策発表を行った。
 ソウルで開催された30周年式典に出席できなかったため、日本支部の金秀玉(キムスオク)支部長から金事務局長に手渡された。(2013.11.03)

平和で豊かな東アジアの未来のために ― 日中韓を船でめぐる旅

オープニング・セレモニー

基隆(台湾)の漁港に面する海岸
 日本と韓国の乗船者、総勢約1000名を乗せた日韓クルーズ“PEACE&GREEN BOAT”が、9泊10日の航程を終えて10月27日に福岡港に入港した。このクルーズは、日本の平和・国際交流NGOのピースボートと、韓国で2002年に結成された環境問題に主として取り組む公益法人・環境財団が共催で、「平和で持続可能なアジアの未来」を主題に2005年に開始、今回で6回目を迎えた。
 近年、歴史問題や領土問題などをめぐって、日韓、日中間に摩擦、緊張関係が度々生じているが、この三国が位置する東アジアにはもちろん人びとの往来、文化交流の長い歴史が脈々と流れている。今のような時期だからこそ、民間レベル、市民同士の交流が重要と、今回は釜山、基隆(台湾)、上海、福岡に寄港した。当初は那覇にも立ち寄る予定だったが、あいにく台風のため那覇港が閉鎖となり、急遽予定が変更されることもあった。
 寄港地では、「侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館」など侵略戦争の跡地や、有機農業体験、各国の原発立地などを訪問するツアーが多彩に組まれ、日韓の両参加者が共に見て廻った。尖閣諸島=釣魚島近海で漁業を営み、古くから沖縄の漁師たちと交流を持ってきた台湾の漁師の方から話を聞く機会もあった。
 また船内では、東アジアの平和や、持続可能な社会に基づくさまざまなテーマをとりあげた企画が毎日目白押しだった。日韓双方から、学者、文化人、アーティスト、市民アクティビストが約40名乗船した。元米陸軍大佐で国務省上級外交官も務めた後、現在は平和活動家として米軍問題等に取り組むアン・ライトさんや、韓国からは、金大中政権期に大統領秘書室長を務めたキムハンジョン・延世大学客員教授が乗船した。李泳采・恵泉女学園大学准教授が開いたシリーズ企画「もうひとつの韓流講座」は、韓国の映画や音楽を題材にしながら民主化、スパイ事件・疑問死の過去清算、海外養子、兵役など、韓国の現代史に潜む人権課題を取り上げたが、毎日多くの乗客が聴講した。当センターの金朋央・東京事務局長も水先案内人の一人として乗船し、ヘイトスピーチやマイノリティ教育などを取り扱った企画に出演した。
 両共催団体はこの日韓クルーズを始める際に、最低10年間は続けることを確認したという。航程や船内様子は、ピースボートのホームページに掲載されている。(2013.11.01)

ドキュメンタリー映画『笹の墓標』 日本・韓国・在日コリアンの若者たちの15年の歩みを描く

1997年夏、北海道幌加内町朱鞠内――

 日本・韓国・在日コリアンの若者たちが、戦時中の雨竜ダム建設、名雨線鉄道工事で命を落とした強制連行、強制労働の犠牲者たちの遺骨を発掘しようと集まった。
 東アジア共同ワークショップの始まりである。
 以来今日まで、朱鞠内、猿仏村浅茅野、芦別の発掘や韓国での体験者や遺族の調査、遺骨の返還と、若者たちの出会いは国境を越えて広がっていった。
 日本と韓国、在日韓国・朝鮮人の若者たちが、共通する歴史と向き合いながら、どのような未来を創ろうとしてきたのか、時代をどう生きようとしてきたのか。

 この映画の発端となった東アジア共同ワークショップ(始まりは日韓共同ワークショップ)が1997年に開始して以来、金光敏事務局長も参加してきている。一部でまだ20代の当時の姿も映像に映し出される。

  • 監督 影山あさ子・藤本幸久
  • 企画・製作・著作 森の映画社
  • 第1章「朱鞠内」(114分)、第2章「浅茅野」(98分)、第3章「遺族」(109分)、第4章「未来へ」(121分)、第5章「私たち」(107分)  全 9時間9分



【笹の墓標・上映スケジュール】
▼ 大阪
▼ 名古屋
  • 日時:2013年11月 2日(土)~8日(金)
  • 会場:名古屋シネマテーク (名古屋市千種区今池1-6-13今池スタービル2F)
▼ 東京
  • 日時:2013年12月14日(土)~23日(月・休)
  • 会場:光塾 (渋谷区渋谷3-27-15 光和ビル地下1階)

⇒ 大阪上映チケットについては、当センターでも取り扱っています。
  (電話:06-6711-7601, e-mail: center@korea-ngo.org


中国朝鮮族自治州で、子どもたちが平和を考えるワークショップを開催

日本、韓国、朝鮮、中国の
子どもたちによる共同制作
(2014年2月、東京展で展示予定)
 中国吉林省・延辺朝鮮族自治州にある延吉市の少年児童図書館で、延吉市朝鮮族の子どもたちを対象にしたワークショップが9月28日に開かれた。この行事に対して、当センターも実行委員会に参加している「南北コリアと日本のともだち展」日本実行委員会と、韓国の「南北オリニオッケドンム」に参加招請があり、当センター東京事務所のボランティアスタッフ1名を含む3名が日本から参加した。
 ワークショップのテーマは「へいわってどんなこと?」。絵本作家・浜田桂子さんの作品『へいわってどんなこと?』をスクリーンに映しながら、日本語、韓国語、中国語の順番で朗読をし、参加していた子どもたちに感想を聞いた。最初は恥ずかしがっていた子どもたちも、マイクを向けて、ひとり、ふたりと意見を聞いていくと、だんだん手が挙がるようになり、最後には2回目、3回目の意見を言おうと何度も手を挙げる子も出てくるほどに場は盛り上がった。
 子どもたちが考える「へいわってどんなこと?」は、それは「友達とケンカをしない」ことだったり、「家族を大事にする」ことだったりと、自分に身近なこと、思い立てばすぐに実践できることが多かったことが印象的だった。
 絵本の朗読のあとは、全員に自分の絵を描いてもらい、同時に自分の手形に切りとった紙に名前を書いて恐竜型の大きな紙に貼ってもらった。最初子どもたちが静かに座っていたホールは、最後には色とりどりの絵と手形でいっぱいになり、活気につつまれたまま、ワークショップは無事に終了した。(2013.10.08)

日本軍「慰安婦」問題解決に向けて、8月14日を国連記念日にしよう

国際シンポジウム 全体討論
(8月11日)

新宿・靖国通りを通過するデモ隊
(8月14日)
 1991年8月14日、韓国の金学順(キム・ハクスン)さんが実名で告白したことが、日本軍「慰安婦」問題が国際的に知られるようになった出発点であったと言ってよいだろう。その8月14日を国連が認定する記念日にしようという提案が、昨年の日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議でなされた。その第一歩目となる取組みとして去る8月11日、東京ウィメンズプラザ(渋谷区)にて、国際シンポジウム(主催:日本軍「慰安婦」問題解決全国行動、8・14を国連記念日にしよう!キャンペーン)が開催された。
 第一部では、フィリピンから来日された被害者のエステリータ・デイさんが、戦地でご自身が受けた体験を証言され、来場者はその凄惨さを耳にし沈黙に包まれた。
 第二部では、女性・平和・安全保障に関する国連安保理決議1325号の決定に最も貢献したアンワラル・チャウドリー元国連安保理議長が基調講演を行なった。チャウドリー氏は、決議1325の核心は《参加》であると強調し、「この決議自体が目的ではなく、女性と男性の間の差別をなくしていくプロセスの始まりと考えている」と語った。続いて、韓国の挺身隊問題対策協議会(挺対協)の尹美香(ユン・ミヒャン)常任代表、京都大学教員の岡真理さんが講演した。
 また、韓国の日本軍「慰安婦」被害者である金福童(キム・ボクトン)ハルモニ、吉元玉(キルウォノク)ハルモニの発言により2012年に立ち上がった、戦時下性暴力被害者のための“ナビ(蝶)基金”に関して、支援を受けたコンゴ共和国の性暴力被害女性からナビ基金に送られたビデオメッセージも紹介された。そこで被害女性は、自ら活動家になったこと、国際社会と日本政府に日本軍「慰安婦」問題の解決を求める、と強く主張した。
 記念日をめざす8月14日には、日本全国各地で日本軍「慰安婦」問題の解決を求めるアクションが行なわれた。東京では新宿でのデモ行進に約200名が集まり、日本政府による謝罪と補償、同問題の歴史教科書への記述などを訴えた。 (2013.08.18)

映画「ぬちがふう(命果報)―玉砕場からの証言―」、大阪・京都で上映

 コリアNGOセンターでは、きたる6月29日、30日に、ドキュメンタリー映画「ぬちがふう(命果報)―玉砕場からの証言―の上映会を開催します。多数の皆さんのご参加をお待ちしています。

 太平洋戦争末期、本土決戦の捨て石となった沖縄戦では約4分の1の住民が犠牲となった。
 当時、沖縄の人たちは「敵上陸のあかつきには、全員玉砕あるのみ」という「軍命」により、次々と愛する者を手にかけ、自ら命を絶っていった。そして生き残った人たちの記憶には、犠牲になった沖縄の人たち、朝鮮半島から連れて来られた軍属たち、「慰安婦」の少女たちの姿もあった。
 戦争を生き延びた玉砕場の証言者たちが、私たちに本当の「戦争」を語る―――

「ぬちがふう(命果報)―玉砕場からの証言」公式ホームページ http://www.geocities.jp/nutigafu

【大阪上映会】
  • 日時:2013年 6月29日(土) 14:00~/17:30~
  • 会場:KCC会館 5階ホール (大阪市生野区中川西2-6-10)
  • 料金:前売り 1000円、 当日 1200円
  • 主催:コリアNGOセンター
  • 共催:大阪平和人権センター/しないさせない戦争協力関西ネットワーク/日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク/在日コリアン青年連合(KEY)
  • スケジュール:
      13:30  開場
      14:00  第一回映画上映
      16:15  朴壽南監督のお話
      17:30  第二回映画上映

【京都上映会】
  • 日時:2013年 6月30日(日) 17:30~
  • 会場:京都地域・多文化交流ネットワークサロン (京都市南区東九条東岩本町31)
  • 料金:前売り 1000円、 当日 1200円
  • 主催:コリアNGOセンター
  • 協力:京都コリアン生活センター・エルファ/京都・東九条CANフォーラム
  • スケジュール:
      17:00  開場
      17:30  映画上映
      19:45  朴壽南監督のお話



⇒ チケットのお求め、お問合せは、当センター事務局まで。
  (電話:06-6711-7601, e-mail: center@korea-ngo.org


東京でも、「橋下発言」に抗議する緊急院内集会が開催

 5月13日以降の橋下徹・大阪市長の日本軍「慰安婦」問題をめぐる発言に対する抗議の声が、5月22日に東京・千代田区の参院議員会館で開かれた「女性の人権を尊重する政治を!―橋下発言に抗議する緊急院内集会」(主催:同実行委員会)で結集した。議員会館内で最も広い講堂に300名以上が集まり、会場内は立ち見の参加者であふれかえった。
 日本軍「慰安婦」問題に取り組む団体をはじめ、女性団体、沖縄で活動する団体、公人の差別発言に反対するグループなど多様な団体から、今回の橋下市長の発言における様々な深い問題性が指摘された。日本軍「慰安婦」問題解決全国行動・共同代表の梁澄子(ヤン・チンジャ)さんは、「今回の橋下市長の発言の背景には、安倍政権の歴史観がある。安倍首相、自民党政権はいま橋下市長と違うという感じで進もうとしているが、それを許してしまったら私たちはトカゲの尻尾切りに加担してしまう。それを許してはならないというのが今回、国会で集会を行なった所以だ」と訴えた。参席した国会議員も多く、韓国のマスメディアも取材に駆けつけるなど、各界で高い関心が持たれていることが示された。
 前日までに呼びかけられたこの緊急院内集会の共催団体は最終的に235団体集まったという。当センターも加わっている。 (2013.05.22)

「橋下市長やめろ!」大阪市役所前で400人以上が抗議集会

大阪市役所を、人間の鎖で囲む
 5月13日、橋下徹大阪市長が記者会見で、「元日本軍『慰安婦』は必要」だったと発言し、また沖縄を訪れて米軍司令官と懇談をした際にも「もっと風俗業を活用すべきである」と提案した。この戦時下の深刻な人権侵害を容認し、女性の尊厳を踏みにじる発言に対して、5月17日にコリアNGOセンターでも抗議文を発表したが、同日午後5時から大阪市役所前で、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークが呼びかけた抗議集会が開催された。
 緊急の呼びかけにもかかわらず、集会には400人を超える人たちが参加し、「橋下市長の女性の人権を蹂躙する発言を許さない!」「市長を即刻辞任せよ!」と訴えた。
 集会の最後に、参加者が手をつなぎ、大阪市役所をとりまく「人間の鎖」をつくって、橋下市長辞任を求める抗議の意志を示した。
 主催者では、今後も橋下市長に対する抗議の賛同を広く募っていく予定である。詳細は、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークのホームページ http://www.ianfu-kansai-net.org を参照されたい。 (2013.05.21)

橋下徹大阪市長の日本軍「慰安婦」問題に関する暴言に対する抗議文

 5月13日、橋下大阪市長は記者会見で、元日本軍「慰安婦」について、とうてい看過できない暴言をおこなった。
 橋下大阪市長は、戦時において「慰安婦制度は必要」であったと発言した。戦時下の性奴隷制度として多くの女性たちの尊厳を奪った深刻極まる人権侵害であることを日本の数多くの裁判例が判示し、国際的にも何度も指摘・糾弾され続けてきた「慰安婦」制度を容認したのである。橋下市長は昨年にも「慰安婦制度には強制性を証明する証拠がない」として、河野談話を否定する発言を行なったが、これらの発言は元「慰安婦」当事者たちを冒涜し、アジアの戦争犠牲者の心を踏みにじるものである。
 同時に、橋下市長はその会見で、先に沖縄を訪れ米軍司令官と懇談をした際に、「もっと風俗業を活用すべきである」と提案したという。女性の尊厳を一顧だにしないこの発言には、もう唖然とするしかない。
 私たちは、こうした橋下市長の発言をとうてい容認することはできず、断固とした抗議の意を表明するものである。
そして、歴史的にも在日コリアンが最も多く暮らしており、「アジアに開かれた国際都市」をめざしている大阪市の市長として、今回の発言に対する国内外の批判を真摯に受け止め、発言の撤回と謝罪、二度とこのような発言が公職者からなされることがないようにするための対策の実施を強く求める。
 今回の橋下市長の発言は、個人的な見解の表明でありつつも、その背景として日本社会の全体的な右傾化の深まりを看過してはならないだろう。
 この間、安倍政権は村山談話、河野談話の見直しに言及、4月には靖国神社に超党派の168人の国会議員が参拝し、韓国、中国から強い批判を受けている。そして5月1日、米国議会調査局が明らかにした日米関係に関する報告書では、「歴史問題での安倍首相や閣僚の言動は、地域の関係を混乱させ米国の国益を傷つける恐れがあるとの懸念を生じさせている」と指摘するまでになっている。
 こうしたなかで、橋下市長の発言がおこなわれたことは、国際的に強まる日本への批判に対して、改めて反撃を企図し、「日本だけが悪いのではない」「強制の事実はない」「慰安婦制度は必要」とする日本の一部極右人士の意見を国際的に発信しようという目的でおこなったものと見ざるをえない。それは極めて「内向き」な強弁でしかない。
 国際社会との真の友好と対話関係を深めていくためにも、人権、平和という普遍的な価値観にあらためて立ち戻ることを強く求める。
2013年5月17日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター


映画「ハナ ~奇跡の46日間~」公開を記念して、特別イベントが東京で開催

主催挨拶をする
鄭甲寿・ワンコリア代表理事
 1991年の世界卓球選手権で実現した南北朝鮮の統一チームを劇化した韓国映画「ハナ ~奇跡の46日間~」(韓国での原題は「KOREA」)の日本上映が始まることを記念して、公益財団法人ワンコリアフェスティバルが主催する特別イベントが、東京・渋谷区で開かれ、約150名が集まった。
 韓国では300万人の動員と大ヒットしたが、日本では対照的に、南北関係が主題となっていることから大手の映画館が上映に難色を示しているという。
 この日は、映画「ハナ」の予告編や、配給会社「SUMOMO」代表の李鳳宇さんの挨拶に続いて、91年当時、日本滞在中の南北統一チームを撮り続けたドキュメンタリー映像が上映された。映像の中で女子チームが優勝した瞬間は、まるで今のことのように来場者たちから歓声が起きた。
 続いて、作家の梁石日さん、ジャーナリストの佐高信さん、フリーアナウンサーでK-POPイベントの司会などでも有名な李由美さんらが、応援のスピーチを行なった。さらに、劇団・新宿梁山泊が今年3月にソウルで行なった公演「百年~風の仲間たち」の一部が披露され、その脚本を書いた趙博さんのミニライブが続き、会場を湧かせた。
 映画「ハナ」は、4月20日に東京「オーディトリウム渋谷」で上映が開始され、そのほか名古屋、大阪神戸、京都での上映が決まっている。詳細は同映画のオフィシャルサイトに掲載されている。(2013.04.24)

サハリン韓人団体代表団5名が来日、韓人社会が抱える苦難の歴史と現在の課題を訴える

証言集会で発言するイム・ヨングン会長
 ロシアのサハリン州から4つの韓人団体の代表及び顧問5名が、3月23日~27日の5日間、東京を訪れた。この訪日行動に際して、上記団体と韓国の地球村同胞連帯(KIN)など3団体、当センターを含む日本側3団体からなる「サハリン韓人団体代表団訪日行動実行委員会」を構成し、当センターは日本現地側の窓口として、今回の訪日行動の準備に大きく携わった。
 24日に開かれた証言集会では、サハリン州韓人協会のイム・ヨングン会長が幹事団体を代表して挨拶を行なった。また、サハリン二重徴用鉱夫被害者遺家族会のソ・ジンギル会長は、ご自身の父親が二重徴用をされ福岡の炭鉱に行ったことまで判明したが、その後の消息は生死含めて全くわかっていないことなど、ご自身の悲痛な体験を語られた。また、妻が日本人だったため1958年に日本に来ることになり、その後東京で、サハリン同胞と韓国の家族との手紙の橋渡しや帰国運動に人生を費やしてこられた李羲八(イ・フィパル)樺太帰還在日韓国人会会長も出席され、戦前サハリンに徴用された時からの体験を切々と語られた。会場から出たいろんな質問には、韓人協会のキム・ホンジ顧問が適宜回答してくださった。
 翌25日に、外務省北東アジア課を訪れ、サハリン残留者に対する支援や、郵便貯金等の未払金問題など5項目からなる要請書を手渡し、意見交換を行なった。続いて議員会館で院内集会を開いた後、大畠章宏・衆院議員(現在、民主党代表代行)とも面談した。さらに翌26日には、永住帰国事業や一時面会事業などを大韓赤十字社と共同で実施している日本赤十字社の本社を訪問し、サハリン州韓人離散家族協会のパク・スンオク会長や、サハリン州韓人老人会のユン・サンチョル会長らが、永住帰国の希望状況や、一世の健康・生活問題などについて述べ、継続した支援の必要性を訴えた。
 今回の訪日行動を通じて、サハリンに留まらざるを得なかった一世たちの健康・生活問題や、永住帰国にともなう新たな離散家族問題、二重徴用者の安否・消息がほとんど究明されていないことなど、今もサハリン残留問題が深く残っていることが、サハリン韓人たちが語る言葉を通じて直接日本の政治・社会にアピールする機会となった。当センターのニュースレター33号で、この訪日行動のレポートを行なう予定である。(2013.04.01)

院内集会 『サハリン残留韓人問題の現住所-さらなる解決を求めて』 3月25日(月)開催

  • 日時:2013年 3月25日(月) 13:00~14:30
  • 会場:参議院議員会館 B106 (東京都千代田区永田町2-1-1、東京メトロ「永田町」駅1番出口)
  • 集合:12:45に参議院議員会館1階ロビー(通行証を配布します)
  • 主催:サハリン韓人団体代表団訪日行動実行委員会
    〈ロシア〉サハリン州韓人協会、サハリン州韓人老人協会、サハリン州韓人離散家族協会、サハリン二重徴用鉱夫被害者遺家族会
    〈韓国〉KIN(地球村同胞連帯)、サハリン希望キャンペーン、韓日市民宣言実践協議会
    〈日本〉コリアNGOセンター、在日コリアン青年連合(KEY)、全国在日外国人教育研究協議会、ほか
  • プログラム:
    ・サハリン残留韓国人問題の経緯と展望:高木健一さん(弁護士)
    ・韓国における同問題への取組みについて:裵徳鎬(ペドッコ)さん(韓国・地球村同胞連帯(KIN))
    ・サハリン韓人団体代表団からの発言:
      【出席者】
      イム・ヨングンさん(サハリン州韓人協会 会長)
      ユン・サンチョルさん(サハリン州韓人老人協会 会長)
      パク・スンオクさん(サハリン州韓人離散家族協会 会長)
      キム・ホンジさん(サハリン州韓人協会 顧問)
      ソ・ジンギルさん(サハリン二重徴用鉱夫被害者遺家族会 会長)
    ・出席議員からの発言、など

  【開催趣旨】
 来る3月23日から27日かけて、ロシア・サハリン州より、サハリン韓人団体の代表者団4名が日本・東京を訪問します。サハリンから直接日本を訪れるのは約18年ぶりとのことです。
 戦前、日本の国策により、当時「日本人」であった多くの韓人(朝鮮人)が労働力として樺太(現ロシア・サハリン州)に渡りました。戦後、1946年の米ソ引揚協定締結により、サハリンにいた日本人の引揚が始まりましたが、韓人はその対象から外されていました。故郷のある韓国への帰国を望む韓人らは、米ソ冷戦と南北分断という政治状況下で、半世紀近く異郷に置き去りにされ続けました。
 日本では1950年代末から、サハリン韓人の帰還、家族の再会を求める粘り強い運動が続けられ、その結果、1987年の超党派議員による議員懇が結成するなど、日本の国会や政府も対応を開始しました。当初はサハリンと韓国から家族が日本にやって来ての家族再会事業でしたが、90年代以降は韓国への一時訪問、そして永住帰国事業が開始するようになりました。日本赤十字社によると、2011年3月までに約3500人が韓国に永住帰国しています。
 しかし、サハリン残留韓人問題には未だ積み残しの課題も多くあります。永住帰国事業は、1945年以前にサハリンに移住した、あるいは出生した者に限られ、且つ同伴家族も1名までという厳しい制約のため、新たな離散家族になりたくないと永住帰国を断念する人も少なくありません。永住帰国した人たちも高齢で、医療や介護の不安が大きいという問題を抱えています。
 また、当時サハリン韓人たちが強制的に貯金させられた分を含む郵便貯金の未払金約1億8千万円がそのまま保管されていることもわかっています。1965年日韓請求権協定締結当時、サハリン韓人の請求権は協定の対象外とされました。しかし日本政府は最近になって、韓国に永住帰国し、韓国国籍を取得した人の請求権は日韓請求権協定で解決済みという立場を表明し、韓国政府との見解の相違が明らかになっています。この点とも関連して、2012年11月にはサハリン韓人らが原告となり、韓国政府が問題解決に向けた義務を履行していないとして韓国の憲法裁判所に提訴しています。
 そもそも、米ソ引揚協定でなぜ韓人が対象外とされたのか、協議の経過に関する真相も明らかにされなければなりません。また、遺族からの安否調査を望む声も強く、消息を知るための情報開示や便宜提供も求められます。
 韓国では近年、国外強制動員被害者に対する支援金支給や、「サハリン韓人支援特別法案」制定を求める動きなど、新たな動きがいくつも生まれていますが、日本では、残念ながら社会的関心がほとんどない状況にあると言えます。
 様々な問題が残るなか、包括的なアプローチによって解決を図る「基金構想」(日韓両政府及び企業が資金を拠出)という解決案も挙がっており、実現を求める動きが既に始まっています。
 サハリン残留韓人問題の主たる責任を持つ日本政府の誠実且つ積極的な対応が引き続き求められています。今回のサハリン韓人団体代表団の訪日を契機に、同問題に対する理解と関心がいっそう高まり、さらなる解決に向けて確実に一歩前進することを強く望んでいます。
 ぜひご出席をお願いいたします。


  【お問い合わせ先】
 当センター東京事務所(電話:03-3203-5655, e-mail: tokyo@korea-ngo.org )まで。


証言集会 『サハリン韓人が歩んできた75年』 3月24日(日)開催

  • 日時:2013年 3月24日(日) 14:00~17:00(開場 13:30)
  • 会場:文京区民会議室 5階会議室C (東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター内)
    (東京メトロ「後楽園」駅徒歩1分、都営地下鉄「春日」駅徒歩1分)
  • 参加費:800円(学生、収入のない方は500円)
  • 主催:サハリン韓人団体代表団訪日行動実行委員会
    (ロシア・サハリンの韓人団体、韓国と日本の市民社会団体で構成。当センターも入っています)
  • プログラム:
    ・サハリン韓人社会の歴史と現状を伝える映像上映
    ・サハリン韓人団体代表団からの証言
    ・樺太帰還在日韓国人会からの証言
    ・「サハリン韓人歴史記念館」建設計画及び同館建立のための「75人推進委員会」の紹介、日本準備委員会結成宣言
    など

  【開催趣旨】
 戦前「日本人」として旧樺太=ロシア・サハリン州に移住させられ、戦後は日本政府の帰還義務の放棄、南北分断の影響により半世紀近く祖国に帰還できなかったサハリン韓人(朝鮮人)の問題は、現在も続いて います。
 日本での粘り強い運動の結果、日本政府もようやく重い腰を動かし、90年代以降、韓国在住家族との一時面会、そして永住帰国事業が開始しました。しかし、永住帰国の対象が厳しく制限されていることから、新たな離散家族になりたくないと永住帰国を断念する人も少なくありません。当時強制的に貯金させられた郵便貯金の未払金も1億8千万円にのぼることがわかっています。
 サハリンへの強制動員が開始してから75年経つ現在、サハリン韓人社会は二世・三世が中心となり、そして四世もますます増えています。
 サハリン残留韓人問題をめぐっては、韓国では近年、国外強制動員被害者に対する支援金支給や、「サハリン韓人支援特別法案」制定を求める動きなど、新たな動きがいくつも生まれていますが、日本では残念な がら関心がますます低下していく状況にあると言えます。
 このたび約12年ぶりに、サハリン韓人団体の代表者団が日本・東京を訪問し、日本政府や国会に直接声を伝える機会をつくることになりました。来日するにあたり、一人でも多くの方にサハリン韓人の歴史と現況を知ってもらいたいという目的から、証言集会を開催することにしました。サハリンと韓国の家族をつなぐ活動を長年行なった樺太帰還在日韓国人会の方からもお話を伺います。
 ぜひご参加、ご支援をお願いいたします。


  【カンパの呼びかけ】
 今回、サハリンから4名、韓国から永住帰国者1名、韓国でサハリン韓 人問題に取り組む市民社会団体スタッフ3名の計8名が今回来日します。航空運賃はもちろん、日本での滞在費も結構多額がかかります(約35万円程度)。今回、航空運賃は全員自費でいらっしゃいます。
 問題の性格を考えると、日本での滞在費はできるだけ日本の中で集めたいと考えています。そこで、広くカンパの呼びかけをすることに致しました。
 ぜひともカンパのご協力、何卒よろしくお願い致します。
※カンパにご協力下さった方は、この証言集会での当日資料にお名前を掲載します。
 ・掲載をご希望でない方は、その旨お伝え下さい。
◆一口 1,000円(何口でも)※個人・団体問いません。
◆振込先
 【郵便振替口座】
 口座記号番号:00160-6-789852
 口座名称:コリアNGOセンター東京(コリアエヌジーオーセンタートウキョウ)
 【銀行口座】
 三菱東京UFJ銀行 大久保支店 普通0053306
 コリアNGOセンター 東京事務局員 金 朋央(コリアエヌジーオーセンター キム プンアン)

  【お問い合わせ先】
 当センター東京事務所(電話:03-3203-5655, e-mail: tokyo@korea-ngo.org )まで。


国の政治を超えてこどもたちの絵画交流は続く、「ともだち展」が12年目に

いろんな子どもたちの絵が飾られた
 今は一緒に出会うことが難しい日本、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)、大韓民国(以下、韓国)に住む子どもたちが、絵を通じて交流を行なう「南北コリアと日本のともだち展」(以下、ともだち展)の東京展(主催:同実行委員会、当センターも構成団体の一つ)が2月21~24日に渋谷区・青山こどもの城で開かれた、今年で12年連続の開催となる。
 今回のともだち展の絵のテーマは、「ともだちといっしょに行ってみたいところ」。韓国から58点、朝鮮から30点、中国・延辺から43点、日本(在日コリアンや外国の子どもも含む)196点と、今年も多くの絵が集まった。また09年に始まった共同制作は、「ともだち名人」という、友だちを増やしたり、幸せにする「ともだち名人」というお題に。日本・韓国・朝鮮・中国の子どもたちから、国境を越える虹をかけることができる名人や、ともだちの心配事を蹴り飛ばしてくれる名人など、実に多様な能力を持つ「名人」が登場した。なかには、たこ焼きを手から出してみんなに配ることで平和をつくり出すという「たこ焼き名人」というものも。
 23日(土)には、〝原作者〟の子どもたちがともだち名人の解説をしたり、今回平壌を訪れた大学生たちによるレポートなどをする「ギャラリートーク」と、大人向けの「ともだちセミナー」が開催された。ともだちセミナーには約80名が集まり、立教大学教員の石坂浩一さんが「東北アジアの過去と現在、そして未来」と題して基調講演を行なった。続いて、平壌を訪問した経験を持つ日本、韓国、在日コリアンの大学生3名によるクロストークが開かれ、それぞれの思いを語った。
 2013年も引き続きともだち展は開催される。より多くの日本市民の関心と支援をお願いしたい。(2013.02.28)

「ヘルシンキ・プロセス」の経験を朝鮮半島情勢の参考に、李鐘元教授が提言

大阪・梅田のユーズツーにて
 去る2月23日、早稲田大学大学院教授で、朝鮮半島をはじめ東北アジア情勢に詳しい国際政治学者の李鍾元さんを招いての新春講演会をコリアNGOセンターが主催した。
 新政権の発足で日韓関係の動向に注目が集まる中、3回目の核実験などで緊張が高まる北朝鮮問題など、東北アジア政治情勢にはいまだ冷戦構造が深く残っている。李鍾元さんは東北アジアの冷戦構造の現状について、それぞれの関係国内の政治力学や政権誕生背景などをもとに分析を行い、実施可能な現実的対応について提言を行った。
 とくに、ソ連改革に関わった第二期レーガン政権の寛容政策や、東西ヨーロッパの緊張緩和に大きく寄与した「ヘルシンキ宣言」などを紹介し、「西側による東側に対する体制容認のプロセスが結果的に地域内の民主化を促進し、ソ連や東欧の改革開放につながった」とし、その教訓から朝鮮半島情勢を見つめなおす必要性があるのではないかと提言した。
 また、韓国の朴槿恵大統領について「政策公約や彼女の発言を見る限り、リベラルな政権運営を志向しており、南北情勢についても前政権とはちがうアプローチがあるのではないか。ただ問題は、朴大統領の側近を見ると、伝統的な保守派が取り巻いており、朴政権の考える方向どおりに政権が動くか、舵取りの難しさも見える。」と述べた。
 李鍾元さんの講演内容はニュースレター32号で詳しく取り上げる。(2013.02.26)

朝鮮民主主義人民共和国の3回目の核実験に対する抗議声明

 朝鮮中央通信によれば、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は2月12日、同国北部で3回目となる地下核実験を実施した。
 私たちは、強い反対の声を無視して北朝鮮がまたも核実験を繰り返したことに対して、大きく失望するとともに、断固として抗議するものである。

 ヒロシマ、ナガサキでは当時日本にいた多くの朝鮮人も犠牲となった。そして一昨年、東日本大震災でのフクシマ原発事故で、原子力は決して人間が完全に制御することは不可能であり、それ自体が人類社会にとって脅威であることが明らかとなった。
 また1991年に南北で交わされた「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」の精神にも反しており、朝鮮半島における「核の脅威」を高め、東アジアの安全を揺るがすことになる。

 この間、北朝鮮はことあるごとに、軍事的緊張を背景に国際社会からの譲歩と対話を引き出す「瀬戸際外交」を繰り広げているが、いま求められるのは、六者協議関係国が昨年にすべて新しい政治体制になったことも踏まえて、これからの東アジアの安定に向けた信頼関係を構築していくことであるといえる。しかし今回の核実験は、そうした流れに逆行するものに他ならない。まして2月25日の韓国新大統領就任の直前に核実験を実施したことで今後の南北関係に悪影響を与えることになりかねない。

 また、いま在日コリアン社会は、日本政府による北朝鮮敵対政策のもとで、朝鮮学校への補助金削減や高校無償化対象からの除外など、子どもたちの教育の権利すら脅かされている状況にある。今回の核実験によって、在日コリアン社会に対する差別・排外的な動きが助長されることはあってはならない。

 今回の核実験を受けてすでに、国連安全保障理事会は2月12日午前9時(日本時間同日午後11時)に緊急会合を開くことにしているが、核実験が過去の安保理決議に違反するのは明白で、制裁強化を柱とする措置が検討されると伝えられている。

 私たちは、今回の核実験に改めて抗議の意思表示をするとともに、朝鮮半島の非核化に向けた南北および関係諸国の努力を求めるものである。そこには、遅々として進まない核保有国の非核化の推進も当然含まれる。
 そして、朝鮮半島を取り巻く東アジアの政治状況が「脅威」と「制裁」の連鎖から一刻も早く脱却し、対話による「平和」と「協調」に転換できるよう、関係諸国の一層の努力を強く求めたい。

2013年2月12日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター


新春講演会『韓日の政権交代とこれからの東アジアを見る視点』を開催します

⇒終了いたしました。講師の李鍾元先生と、ご出席くださった皆さまに感謝申し上げます。

  • 日時:2013年2月23日(土) 16:00開始
  • 会場:ユーズ・ツウ
    (大阪市北区梅田2-1-18 富士ビル3F、地下鉄四つ橋線「西梅田」駅4-B出口上がってすぐ)
  • 参加費:<会員>無料、<一般参加者>1000円
  • 主催:(特活)コリアNGOセンター
  • 講師:李鍾元さん(早稲田大学教授)
    【プロフィール】
    法学博士。2012年4月から早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。
    国際政治学を専攻し、研究テーマは「冷戦期の東アジアの国際関係」。特にアメリカのアジア政策、アジアの地域主義・地域統合、戦後の日本・アジア関係史、現代大韓民国政治など東アジアの国際政治を研究。「東アジアでは現在も冷戦が終わっていない」との観点から、東アジア(中国・台湾・朝鮮半島)と日本・アメリカの関係を読み解く議論を展開している。
  • 特別アピール:昨年から今年にかけて、大阪市・府による朝鮮学校に対する補助金停止と朝鮮高級学校の無償化対象除外に関して、相次いで裁判が提訴されています。この問題の現状と課題について弁護団よりアピールがあります。

  【開催趣旨】
 昨年は韓国、北朝鮮、日本、米国、中国、ロシアの東アジア関係諸国すべてで権力交代が行なわれました。
 その結果、日本国内では自民党政権が復活し、近隣諸国のみならず、世界各国で「右傾化」を危惧する声が高まっています。一方で韓国では与党・セヌリ党の朴槿恵候補が当選しましたが、李明博政権とのちがいを強調し、今後の政策方向が注目されるところです。
 コリアNGOセンターでは、韓日の政権交代が、南北関係や韓日関係、東アジアの情勢にどのような変化をもたらすのか、そして在日コリアンのおかれた状況にどのような影響を与えるのかをテーマに下記の通り、新春講演会を開催いたします。ぜひご参加ください。
(また終了後には、懇親会(会費5,000円)も予定しております。懇親会にご参加の場合は、予約の関係上2月12日(火)までに下記事務局までご連絡下さい。)

⇒お問合せは、当センター事務局(電話:06-6711-7601, e-mail: center@korea-ngo.org )まで。


北朝鮮による飛翔体発射に対する声明

 朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)政府は12月12日午前、予告されていた「人工衛星」と称する飛翔体の発射を実施した。
 私たちは今回の飛翔体の発射は、今年4月13日に実施した飛翔体発射に続き、朝鮮半島および周辺諸国との緊張を高めるものであり、同時に12月19日に実施される韓国大統領選挙および12月16日に実施される日本の衆議院選挙に政治的影響を与える可能性が極めて高いことを憂慮しつつ、北朝鮮政府の飛翔体発射に対して断固抗議するものである。

 一般的に国際社会では宇宙開発の権利はその国の権利として認められるものではあるが、今回の北朝鮮による飛翔体発射は、現在の東北アジア地域においては、国際社会の不信を増幅させ、関係諸国との関係悪化をもたらすことになるのは自明のことである。
 すでに国連安保理事会は発射後すぐに北朝鮮の「人工衛星」と称する飛翔体発射を受けた緊急会合で、この発射について「国連安保理決議1718と1874に対する明白な違反」であると北朝鮮を非難し、今後さらに安保理としての対応を協議することを明らかにしている。

 また、韓国、日本は、今後の東アジアの秩序形成に重要な影響をもつ権力交代期を迎えているが、北朝鮮の飛翔体発射は、朝鮮半島および東アジアの平和を望む声を萎縮させ、軍拡推進派の台頭を後押しする結果につながりかねない。
 日本政府はすでに発射予告の段階から、沖縄へのイージス艦や地対空ミサイルの配備などの配備を決定し、発射直後には野田首相が記者団に対し、「極めて遺憾で到底容認できるものではない」と強調している。今回の総選挙でも、「改憲」「集団的自衛権」をはじめ「核保有」までが公然と語られている状況のなかで、日本の右傾化が私たち在日コリアンに対する排外へとつながりかねないことに強い危惧を感じる。

 北朝鮮は12月に故金正日総書記の一周忌と新体制発足の1周年をむかえるが、この12月には韓、米、中、日、露のすべての国々が新しい体制となり、そのもとで東アジアの平和と安定にむけた本格的に議論が進められていかなければならない。
 北朝鮮に対しては何よりも関係諸国との対話を通じた信頼関係の構築こそが国内体制の安定に最も効果的であるということを踏まえた対応を強く求めたい。

 同時に、日本をはじめとする周辺諸国に対しても、北朝鮮との対話こそが東アジアの安定に必要であるという観点から、関係改善に向けた粘り強い努力と冷静な対処を求めるものである。

2012年12月13日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター

2012在日同胞統一フォーラムが開催

 ソウルに本部を置く社団法人平和問題研究所(玄敬大理事長)が主催し、その関西支部(金秀玉会長)が主管した「2012在日同胞統一フォーラム」が11月14日、大阪市天王寺区で開催された。平和問題研究所は統一部から支援を受ける民間シンクタンクで、統一外交政策の研究機関としては最も知られる機関だ。今回のフォーラムでは、日韓関係や開城工業団地の現状、また統一過程における在外同胞の役割をなどをテーマに議論した。
 開城工業団地の現状について報告した開城工業地区支援財団のホンジェヒョン監事は、「南北関係に影響を受けながらも、工業団地における実績は多角化している」とし、「そこにおける北側住民の依存度も高くなっており、改革開放においても大きな役割を果たしている」と説明した。
 平和問題研究所では、様々な専門家を招いたセミナーを開催し、研究成果と市民啓発を推進している。今回は2年ぶりの日本国内での開催となった。(2012.11.18)

ワンコリアフェスティバル2012が華麗に開催!

ステージはプンムルで幕開け
 今年で28回目を迎えるワンコリアフェスティバル2012が11月4日、大阪市中央区の大阪城音楽堂で開催された。今年は、いつもより開催時期が遅かったものの、のべ2000人がつめかけ、音楽や舞踊に酔いしれ、統一への願いを共有した。
 ワンコリアフェスティバルは、メインスローガンに「コリアはひとつ、アジアはひとつ」を掲げる。朝鮮半島の南北統一とともに東北アジア地域における平和定着に向けたメッセージを発信し、コリアやアジア問題を理解する市民啓発の場としても評価を受けている。大阪ではコリア、アジアをテーマにした市民イベントとして広く知られ、日韓や日中関係が悪い中での開催ということもあり、いつになく注目を集めた。
 舞台には、朴保バンドをはじめシャンシャンタイフーン、韓国から国楽ヒュージョンバンドの「アエリア」などが出演して会場を盛り上げた。
 また今年は11月3日の前日に韓国で大ヒットした「コリア」(邦題「HANA」)の試写会が大阪国際交流センター大ホールで上映された。この映画は、1992年に千葉県の幕張メッセで開催された世界卓球選手権大会に史上初めて南北統一チームで臨んだ物語を描いたもので、映画に主演した女優のハ・ジウォンさんも舞台挨拶にかけつけた。(2012.11.07)

「強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動」結成の集いが開かれる

第2部シンポジウムのパネリストら
 旧三菱重工と旧日本製鉄に徴用された韓国人がそれぞれ損害賠償及び未払い賃金を求めて韓国の裁判所に提訴した訴訟において、韓国大法院(日本の最高裁判所に相当)は今年5月24日、日韓請求権協定では「個人の請求権は消滅していない」という初の判断を下し、原告敗訴の原判決を破棄、事件を高裁に差し戻すという画期的な判決が出された。植民地下、日本企業による朝鮮人強制労働問題はこれまで日本の司法で数件の和解が成立しているが、大部分は時効・除斥期間や「日韓請求権協定で解決済み」を理由に被害者の訴えは退けられてきた。その中で今回の韓国大法院の判決は、解決に進まない同問題が新しい局面に入るのではないかと多くの期待を集めている。しかしその一方で、日本においては強制徴用問題の解決を司法の場で求めることに限界があり、国会での補償立法制定を求める動きが以前より始まっている。  その立法化をより本格的に推進していくために、去る10月28日に飯田橋の東京しごとセンターで、「強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動」結成の集い及び記念シンポジウムが開催された。
 第1部の結成集会では、集会主催事務局より今春以降賛同署名を集めてきた「強制労働被害者補償立法実現を求めるアピール」が報告されるとともに、資料として2010年に強制連行全国ネットワーク事務局が作成した「朝鮮人強制労働被害者補償のための財団設立に関する法律案」が配布された。また、三菱重工の朝鮮人強制労働問題や日韓会談文書公開訴訟などに取り組む各団体からの連帯アピールが行なわれた。
 第2部のシンポジウムは、「日韓が東アジアの平和の未来を切り開いていく日は来るか」をテーマに、3人のパネリストから発題があった。韓国・東北アジア歴史財団研究員の南相九さんからは、今夏過熱した独島=竹島問題に対する日韓両国の最近の世論動向ともに、教科書や外交青書での扱われ方の推移について具体的にデータを提示しながら、過去は両国間の良好な関係維持のために領土問題を打ち出さない工夫がなされてきたことが指摘された。ドイツの「過去の克服」を専門とする佐藤健生さん(拓殖大学教授)からは、日韓両国への教訓としてドイツ・ポーランドの関係を参考にした場合、その場しのぎではない政治的決断の重要性や、過去の問題を解決する上で両国の役割分担を可能とするようなゆるぎない相互信頼関係の確立などがあると語った。高麗博物館館長の樋口雄一さんは冒頭で「植民地主義を超えてという前に、どの程度植民地朝鮮について知っているのかがまず問われるべき」と語った後、「巨大な監獄」と喩えられる植民地期の朝鮮の社会・経済状況に関する詳細な事例についてや、植民地支配に反対した日本人の存在にスポットを当てることの重要性について話された。
 今回は日本側組織の立ち上げであり、今後韓国でも立法を目指すための運動体が結成される予定だという。(2012.10.28)

旧植民地出身元BC級戦犯者への立法が通常国会通らず、次の臨時国会で実現を!

同進会会長の李鶴来さん(左)
 韓国・朝鮮・台湾人の元BC級戦犯者問題の解決を図る「特定連合国裁判被拘禁者特別給付金支給法案」が今年度第180回通常国会で制定されるよう、被害当事者や支援グループが強く求めてきたが、政局や日韓間の外交関係の悪化などを背景に法案の提出すら実現し得なくなったため、通常国会閉会前日となる9月7日に、衆院第2議員会館で緊急集会が開かれた。国会議員も3名出席した。
 同進会会長の李鶴来(イ・ハンネ)さんは、「今国会で絶対に実現させてもらうつもりで国会議員にも要請してきたが、叶わなかった。国会、政府は真摯に受けとめて、次の臨時国会では速やかに実現させてほしい」と訴えた。また、同進会を応援する会・世話人の有光健さんは「今回法案は提出されなかったが、今通常国会では与野各党と要請の場を持つことができたという大きな前進があった。今日の集会にも各党の議員、秘書が参加してくれた」と語った。最後に、10月からの臨時国会での成立を強く訴えるアピール文が朗読され、参加者一同で確認された。
 今年7月には、当事者で運動の中心を長年担ってこられた金完根(キム・ワングン)さんが亡くなられた。全ての戦後補償問題に共通するが、被害当事者に残されている時間は限られている。金完根さんのご冥福をお祈りするとともに、一刻も早い日本政府の誠実な対応がなされなければならない。(2012.09.07)

戦後67年経っても終わらない戦争責任、日本軍「慰安婦」問題のいち早い解決を!

ちょうちんには被害女性約400名の名が書かれた
 日本では終戦記念日、韓国では光復節とされる8月15日。2012年のこの日は、韓国では日本軍「慰安婦」問題の解決を求めて、被害当事者や支援者らが1992年より毎週水曜日に日本大使館前で続けられている“水曜デモ”が1035回目を迎えた。それに連帯する世界同時アクションの東京版として同日、日比谷公園で映画上映会を含む集会とデモが行なわれた。主催は、戦時性暴力問題連絡協議会と、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動2010
 夕方からのデモは、約200人のデモ参加者らが、日本軍「慰安婦」被害女性の名が書かれたちょうちんを掲げて、日比谷公園から銀座方面へと1時間強かけて行なわれた。また街行く人々に対して、『「慰安婦」被害者に謝罪と賠償を』と同問題の解決を訴えるメッセージと、当事者らの〈恨〉を解き放つことを願った蝶の絵が描かれたうちわを配布した。今年90歳を迎える宋神道さんもデモの先頭として参加された。
 8月に入って領土問題や政治家の発言をめぐり日韓関係が急激に険悪となっている。そうした国家関係の下で、身体的・精神的に凄惨な侵害を受けた被害者らの尊厳回復がいっそう遠のくことがあってはならない。そのために何がなされるべきか、双方社会の冷静な判断と、責任を持つ日本政府の誠意ある対応が求められる。(2012.09.04)

サハリン残留韓人たちの歴史の記憶を継承する必要性

韓国人被殺者27人追念碑前で祭祀
 韓国の地球村同胞連帯(KIN)が主催する「第8回在外同胞NGO大会」が、8月4日~11日の8日間かけて、ロシア・サハリンで開催された。
 このNGO大会は、海外に散らばるコリアンの同胞ら、とくにNGO活動家が集まり、対話と交流の場を通じて、あるべき在外同胞政策の定立や、各在外同胞社会の具体的課題の解決に向けた連帯活動を目的として開かれてきた。サハリンで開催されるのは2008年に続き2回目。今回は、サハリン州韓人協会との共同主催という形で開かれ、韓国からKINやサハリン希望キャンペーンのメンバーら約15名、在日同胞からは金朋央・当センター東京事務局長を含む6名が参加した。また、サハリンを訪ねる旅を2年前より毎年続けている全国在日外国人教育研究所(全外教)のメンバーら約10名も一緒に行動した。
 サハリンを訪れた最大の理由は、日本の朝鮮植民地支配と戦後の棄民政策によって、半世紀にわたり故郷に帰れずサハリンに留まらざるを得なかったサハリン韓人の存在である。1990年代に韓国への永住帰国が実現した後も、その制度設計の不十分さから、サハリン生まれの二世、三世らと別々で暮らさざるを得ず、新たな「離散家族」状況が生まれるなど、問題は未だ数多く山積している。
 2日目にサハリン韓人文化センターで開かれた国際ワークショップでは、“サハリン韓人歴史資料館”の建設がメインテーマとされ、サハリン同胞、韓国から参加した研究者からの報告があった。朴龍君・サハリン韓人協会会長は、「サハリン韓人の苦難の歴史は世界平和の礎となり、二度とこのような不幸なことが起こらないように備える教訓の課題を提示している。歴史記念館は過去の苦難の痛みを記録として残すものだが、それは苦難を与えた過去の歴史に対する報復ではなく、支援や協力、友好関係を深めていく好循環構造を持って国際関係を定着させていて記念館となることを願う」と語った。
 徴用でサハリンに渡った父親の消息を探し続けている韓国在住のチョン・テラン氏は、父親に関して何か関連する情報があれば伝えてほしいと、会場にいる大勢のサハリン同胞を前に切に訴えた。また、韓国でサハリン韓人関係訴訟を準備している民主社会のための弁護士会(民弁)所属の弁護士6名もこのワークショップに出席し、韓国における現況について報告を行なった。
 3日目以降は、ポザルスコエにある韓国人被殺者27人追念碑などサハリン各地に残る歴史の傷跡や、サハリン韓人同胞らとの交流の時間が持たれた。
 サハリン韓人歴史資料館建設のための推進委員会は既に韓国、サハリンでは形が決まっており、今後日本でも結成し、募金活動を行なっていく予定だ。(2012.08.16)

新潟市内に残る在日朝鮮人帰国事業の痕跡を辿る

ボトナム通りと由来の銘板の前で説明を受ける
 1959年12月から1984年7月まで、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に向かう帰国船が187回出航し、約9万人の在日朝鮮人、それに付き随う日本人配偶者らが北朝鮮に渡った。その帰国船は全て新潟港から出たため、帰国者は必ず新潟を経由していった。それだけの大人数が訪れた痕跡が今も新潟の各所に残っている。  6月23、24日に新潟で開かれた「移住労働者と連帯する全国ワークショップ2012」(「共生社会・外国人の人権」ページに報告記事)が終了したあと、自主企画として、「在日朝鮮人帰国事業の痕跡をたどるフィールドワーク」が行なわれ、約20名が新潟市内の各所を廻った。
 企画したのは、新潟と南北コリアの交流・協力を目指して多様な活動を行なっている市民グループ「びびんば会」。同会事務局の金子博昭さんが案内役を担われた。
 新潟駅から程近い白山神社に隣接する白山公園の梅林は、新潟市民には知られている有名な名所だが、その由来は、帰国が決まった新潟市在住の在日朝鮮人らが資金を出し合い「お世話になった新潟市民へのお礼に」と1960年3月に3本のうえ梅木を市に贈呈したことはほぼ全く知られていないとのこと。その梅林や、国道113号線にある「ボトナム通り」(ポドゥナム(柳)が由来で、帰国を控えた在日朝鮮人が街路樹として305本の柳を贈呈し1959年11月に植樹された)と帰国事業記念碑、新潟開講100年記念公園内の記念植樹などを見て廻った後、最後に過去帰国船が出ていた新潟西港中央埠頭を訪れた。現在は国際旅客船埠頭として稼動中とのことだが、実際にいまは国際旅客船が出ていないため、頑丈なゲートで閉ざされたままだった。
 びびんば会が帰国事業に関するフィールドワークを実施したのは今回が初めて。金子さんによると、今回廻った中でも事実経緯が不明な事柄もあり、他の場所にも帰国事業にまつわる跡があるだろうという。そういった歴史の跡が一つ一つ明らかになっていくことが望まれる。(2012.06.27)

韓国・朝鮮人元BC級戦犯者への立法措置を今国会で!連続院内集会が開催される

主催挨拶を行なう李鶴来さん(中央)
 日本の朝鮮植民地支配の時代に日本軍兵士として徴用され、戦後の連合国軍による裁判でBC級戦犯として裁かれた朝鮮人、台湾人が300名以上いる(うち44人が死刑)。彼らは、罪は「日本人」として裁かれたが、同じ日本人兵士に与えられた援護法や軍人恩給については「外国人」として排除された。その不条理な状況が、戦後67年経っても未だ続いている。
 韓国・朝鮮人元BC級戦犯者に対する補償立法の今国会成立を求めて、4月から連続で院内集会が開催されており、その第2回目の集会が去る5月28日に衆院第二議員会館であった。民主党と自民党から1人ずつの国会議員を含む約40名の出席があった。
 冒頭の主催挨拶で、元BC級戦犯者らでつくる「同進会」会長の李鶴来(イ・ハンネ)さんは、「与野党共に速やかに立法化を行ない、亡くなった仲間たちの無念を多少なりとも癒してほしい」と訴えた。続いて韓国・朝鮮人元BC級戦犯者「同進会」を応援する会・世話人の有光健さんから法案に関する現状報告がなされ、議員立法として提出するために必要な手続が民主党内で進められる様相があることについて伝えられた。民主党は2008年の野党時代に一度法案を提出している。
 この日のゲストスピーカーとして来場した高橋哲哉・東京大学教授は、「日本は血も涙もないものかと言わざるを得ない。バッシングや反発があったとしても、国会や政府は勇気を持って取り組まなければならない問題だ」と語った。
 次回の院内集会の日程は、今後の国会情勢を考慮しながら決定される予定だ。(2012.05.30)

韓国・江華島で、韓・日・中・蒙の子どもたちがともだちづくり&平和づくり

オリジナルキャラクターたちが並ぶ

別れの時間、班毎にメッセージの交換

参加した子どもたちや学生ボランティア
 韓国の社団法人・オリニオッケドンムが主催で、「東アジア子ども平和ワークショップ~東アジアの子どもとオッケドンム~」と題する2泊3日のキャンプが5月18日~20日まで韓国・江華島で開かれ、日本から4名、中国・延辺から3名、在韓モンゴル学校から5名を含む約50名の子どもたちが参加した。
 当センターも実行委員会に加わる子どもたちの絵画展「南北コリアと日本のともだち展」(ともだち展)が2000年よりスタートした折に、韓国側パートナーとして多大な協力をしてもらっているのが、このオリニオッケドンム。日本で絵画展を開く際には、オリニオッケドンムが韓国の小学生らを引率して来日し、オリニオッケドンムが2001年より毎年開催するこのワークショップを開くときには、ともだち展実行委員会が日本・在日コリアンの子どもたちを引率する関係が、もう10年近く続いている。
 高麗時代の一時期は都が置かれ、また昔から諸外国からの侵攻を多く受けた江華島には、朝鮮半島の歴史を伝える名所が多くある。集まった子どもたちは、燕尾亭(ヨンミジョン)や江華平和展望台を訪れ現在も続く南北分断の葛藤について考え、意見を交わしたりした。また、チヂミづくりや風車づくり、ダンスなど共同作業を通じてお互いを知りながら楽しむなど、さまざまなプログラムが用意されていた。オリニオッケドンムに集う大学生ボランティア約20名が、子どもたちの面倒を見たり各プログラムの進行を担当したりした。
 最終日には、日本のともだち展で発表する共同制作物に用いる、各自が想像するキャラクターの絵を描いた。その後平壌、延辺、日本各地から集まる絵と一緒につなぎ合わせて、ひとつの大きな作品ができあがる予定だ。
 今年度のともだち展は、12月に大阪で、2月に東京で開催される予定だ。(2012.05.23)

済州4・3事件から64年、追悼集会が開催される

李政美(イ・ジョンミ)さんの追悼ライブ。
透き通る歌声が遺族の心を癒した

参加者たちが献花し、
それぞれの祈りを犠牲者たちに送った
 日本による植民地支配から解放された1948年、朝鮮半島では米ソの激しい対立を背景に代理戦争が繰り広げれた。1950年に勃発する朝鮮戦争に先立ち済州島では左右の政治勢力がぶつかり、その巻き添えをくい島民が大量に虐殺された1948年の4・3事件から64年。その追悼集会が4月22日大阪市生野区で開催された。
 4・3事件のさなか、虐殺の現場から命からがら日本に逃げてきた島民も多い。韓国では4・3事件に対する歴史的検証が進み、左翼活動に加担したとして虐殺された島民に対する名誉回復や事件の真相究明が進んできた。しかし、在日社会では親族が殺されたなどの悲しみや、「アカ」だとされて故郷を出ざるを得なかった苦しみをいまだ誰にも語れずにいる人は多い。
 追悼集会は、在日本済州4・3事件遺族会と済州4・3事件を考える会が主催した。韓国での真相究明作業の進捗状況の報告、虐殺現場の悲惨な状況についての証言、追悼のためのライブコンサート、参加者による献花が行われた。遺族会会長の呉光現(オ・グァンヒョン)さんは、「4・3事件を経験した在日済州人たちも高齢になってきている。その記憶が風化する前に、心に刻まれた傷を癒し、後世に語り継ぎたい。」と述べた。
 東京においても、4月23日日暮里にて済州4・3事件を考える会・東京の主催で追悼集会が開催された。(2012.04.25)

北朝鮮による飛翔体発射についての談話

 朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)政府は4月13日早朝、飛翔体を発射した。北朝鮮は「人工衛星」を打ち上げるためのロケットだと説明しているが、宇宙ロケットの「人工衛星」の開発技術が大陸間弾道ミサイルの開発に転用可能なことから、関係国は実質的な「ミサイル発射」だとし、自制を呼びかけていた。今回の「発射」について関係国政府はいち早く失敗したとの見方を示し、北朝鮮政府も失敗を認めている。

 今回の「発射」について私たちは、2009年の国連決議に違反している点、進展の兆しを見せていた関係国間の対話努力を阻害する点、国威発揚のために巨額の開発費が投じられている点などを踏まえ、北朝鮮は「発射」すべきではないとの立場であった。

 今回の「発射」によって国際社会の不信が増幅し、関係国との対話がさらに停滞する結果をもたらしかねない状況に深く憂慮し、それによって直間接的に蒙ることになる被害に在日コリアン社会の多くは深い困惑を隠させないでいる。

 また、今回の「発射」に合わせ、日本政府は沖縄周辺の武装体制を強化した。日本政府がすべきは、北朝鮮を口実にした軍事強化ではなく、東アジア地域における平和と安定にどのように平和外交を展開していくのかである。日朝間に存在する懸案事項が何ら解決される道筋を示されないまま放置されており、日本政府は北朝鮮政府との対話、交渉に努力するよう求めたい。

 そもそも、正常な関係を持つ国同士ならば「人工衛星」の発射をめぐってこれほどまで激しい対立を示すことなど考えられない。今回の事態そのものが、東北アジア地域の平和と安定が未だにいかに脆弱なものかを表している。事の本質は、この脆弱さを克服するための信頼関係をいかに築いていくかという外交努力にかかっている。とくに在日コリアンの立場から、北朝鮮政府、そして関係国政府に対しこれを強く求めたい。

 北朝鮮政府は、関係国との協調による信頼構築こそが国内体制の安定に最も効果的であることを認識し、軍事優先の姿勢を改めるよう強く求めるとともに、アメリカをはじめとする関係国には東北アジア地域において軍事的緊張が高まることのないよう対話と説得を通じたさらなる外交的努力をよびかけたい。

2012年4月14日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター
代表理事  林範夫 郭辰雄 鄭甲寿

いまこそ、日朝国交正常化の議論開始を!~当センターでシンポジウムを開催

シンポジウムに約70名が集まった
 最高権力者の死去や三代に渡る世襲など、その動向に注目が集まる朝鮮民主主義人民共和国の情勢を分析し、日本政府や韓国政府の対北朝鮮政策はどうあるべきかを議論するシンポジウムが3月3日、大阪市中央区のエルおおさかで開催された。このシンポジウムは当センターが主催したもの。北朝鮮への精力的な取材活動を繰り広げるアジアプレスインターナショナル代表で、ジャーナリストの石丸次郎さん、立命館大学国際関係学部教授の文京洙(ムン・キョンス)さん、当センター代表理事でワンコリアフェスティバル実行委員長の鄭甲寿(チョン・カプス)さんがそれぞれの立場から発言した。
 石丸さんは、北朝鮮内部の情勢について「すぐに大きな変動はないと思うが、中長期的観点に立てば決して安定しているとは言いない。民衆の不満は沸点にさしかかっており、いつ暴発してもおかしくない常態。」とした上で、「日本国内にまともな対北朝鮮政策の議論が不足している。日朝国交正常化はとても重要なテーマであるが、対北朝鮮問題では冷静な議論がまったくなされていない。」と指摘した。
 文さんは「韓国も大きな政治的変動の時期を向かえ、南北関係も大きな転機が訪れるのではないか。少なくとも米朝の対話が始まっており、韓国政府もその方向ですでに舵を切っている。」と述べ、「金大中、盧武鉉政権を批判して李明博政権は対北圧迫政策を遂行した。しかし、過去の4年の李政権の実績を見れば、対北政策で結局何ら成果をあげることができていない。」と分析した。
 鄭さんは「小泉政権時代の日朝双方の最も大きな誤算は世論の読み間違えではなかったか。日朝両政府が周到に世論を分析し、予測した上で、対話議論を始めていれば、その後、日朝関係が成果を残していた可能性もあった」と語った。
 このシンポジウムの模様は、当センターのニュースレター第28号で紹介される。 (2012.03.10)

シンポジウム 『転換期を迎える東アジアと北朝鮮』 を開催します

  • 日時:2012年3月3日(土) 14:30開始(開場14:00)
  • 会場:エルおおさか (大阪市中央区北浜東3-14、「天満橋」駅より西へ300m)
  • 参加費:1000円
  • 主催:(特活)コリアNGOセンター
  • パネリスト:
    文京洙さん(立命館大学教授)
    石丸次郎さん(アジアプレス・インターナショナル 大阪オフィス代表)
    鄭甲寿さん(財団法人ワンコリアフェスティバル代表理事、当センター代表理事)
  • コーディネーター:郭辰雄(当センター代表理事)

  【開催趣旨】
   ~韓国・日本は北朝鮮とどのように向き合うべきか~
 2012年に入り、韓国、米国、中国、ロシアなど東アジアをとりまく国々が一斉に権力交代期を迎えており、朝鮮半島を含めた東アジアの大きな転換が予想されています。そうした中、昨年末に、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日総書記が死亡し、金正恩氏への体制世襲が行なわれ、北朝鮮の体制が大きく変化しました。
 これからの朝鮮半島の平和と東アジアの安定を考える上で、北朝鮮の現状を正しく理解し、同時に日本と韓国が東アジアの平和と安定という観点から、北朝鮮にどのように向き合うべきか、という問題意識を深めるために、シンポジウムを開催することにしました。  ぜひ多くの方々の参加をお待ちしています。

⇒お問合せは、当センター事務局(電話:06-6711-7601, e-mail: center@korea-ngo.org )まで。


日本と南北コリア、中国を子どもたちの絵が東北アジアをつなぐ「ともだち列車」

中国・延吉の子どもたちの絵

「ともだち列車」のアニメーション
 2001年より毎年開催され、今回で11回目を迎えた『南北コリアと日本のともだち展』の東京展が、2月17~19日にかけて、渋谷・青山こどもの城ギャラリーで開催された。
 この「ともだち展」は、南北コリアと日本、在日コリアンの子どもたちが、今は出会うのが困難だけれども、未来にはきっと出会い友だちになる時が来るのを願って、まずは絵を通じてお互いをよく知ろうと始めたもの。今年は、中国吉林省の延辺朝鮮族自治州にある「延吉市こども図書館」の協力も得て、中国朝鮮族の子どもたちの絵も初めて展示された。また、4ヶ国の子どもたちによる共同制作「つなぐ*つながる*ともだち列車」が、プロのアニメーターの協力を得てアニメーション化され、会場で上映された。自分が描いた列車の絵が動いているのを見て喜びはしゃぐ子どもたちの姿も見られた。
 18日夕には、延吉こども図書館の崔玉蘭館長と、韓国側パートナー団体である「オリニオッケドンム」の黄允玉事務総長、ともだち展実行委の筒井由紀子事務局長がパネリストとなって、「北東アジアをつなぐには」と題するセミナーを開催し、約50名が参加した。黄允玉さんは、「今後10年間の目標は、絵を描いた子どもたちが実際に直接出会えるようにすることだ」と語った。当センターの金朋央東京事務局長がコーディネーターをつとめた。
 この「ともだち展」は、日本各地で巡回展を開いている。詳細は、「南北コリアと日本のともだち展」ホームページに掲載されている。(2012.02.23)

北海道・朱鞠内ダム建設の犠牲者鎮魂、高校生ワークショップが開催される

討論会、高校生たちが自らを語る

参加者一同で黙祷
 戦時下の朱鞠内ダム(北海道幌加内町)の建設工事で犠牲になった遺体が一時安置されていた旧光顕寺で高校生ワークショップが2月11日と12日に開催され、大阪府立高校に学ぶ渡日高校生が参加した。戦争が激化していく1940年代に電力供給を目的に建設された朱鞠内ダムには、朝鮮人、中国人が集団動員されていることがわかっている。その歴史の掘り起こしに取り組んできた空知民衆史講座(殿平善彦代表)などによる実行委員会が今回の行事を主催した。この日のワークショップには、地元北海道から札幌朝鮮高級学校の生徒らも参加、高校生らが平和や人権をテーマに討論会などに取り組んだ。
 当センターが窓口となり、大阪府立門真なみはや高校に学ぶフィリピンと中国からの渡日生徒が特別ゲストとして招かれ、日本での暮らしや出身国について発表し、討論に加わった。また、朝鮮高級学校の生徒たちは、高校無償化政策から除外されたままとなっている現状について報告を行った。
 二日目には、旧光顕寺にいまだ安置されている身元不明の遺骨を見学。参加者一同で黙祷を捧げた。大阪から参加した中国出身の生徒は、「とても楽しく、多くの人々と友達になれた。また、これから自分たちの歴史についても学びたい。戦争の歴史の悲惨さをあらためて実感することができた」と語った。(2012.02.16)

シンポジウム 『歴史和解を通じて見た韓日市民協同 その可能性』を開催します

  • 日時:2011年12月10日(土) 14:00~16:30(開場13:30)
  • 会場:ホテル アウィーナ大阪 (「上本町」駅14番出口より徒歩3分、地下鉄「谷町九丁目」駅より徒歩8分)
  • 参加費:無料
  • 主催:(特活)コリアNGOセンター
  • 後援:東北アジア歴史財団
  • パネリスト:
    河棕文(ハ・ジョンムン)(韓信大学社会科学学部日本地域学科教授)
    朴一(パク・イル)(大阪市立大学大学院教授)
    河かおる(滋賀県立大学常勤講師)
  • 討論者:郭眞吾(カク・チノ)(東北亜歴史財団研究員、淑明女子大学講師)
  • コーディネーター:金光敏(キム・クァンミン)(コリアNGOセンター 事務局長)

 韓国併合から100年目を迎えた昨年、歴史和解をテーマに様々な取り組みが行われました。韓日関係は、政治、経済、文化など多分野で交流が深まっており、双方を行きかい交流する人々のネットワークは今後さらに広がる様相です。
 この間、経済発展を推し進め、国内の政治体制も民主化を遂げてきた韓国。そうした中で、韓国の日本に対する市民意識も変化し、東日本大震災では支援の世論が活発化しました。
 日本においても韓流は空前のブームとなり、K-POPが日本で高い人気を得ています。また、韓国語や韓国文化を学ぼうとする日本人市民も増えています。
 東アジアの平和を考える上でも大きな役割を果たしている韓日関係。密接であれば密接であるほど、韓日間の信頼関係をより安定的なものとして発展させていく必要があります。
 韓日関係の現状を踏まえ、市民社会がどのような役割を担い、双方の歴史認識を語り合い、相互理解を築き上げていくのか大きな課題です。今セミナーでは、韓日の相互理解、信頼構築の橋渡し役となるべき在日コリアンの役割にも着目し、論じてみようと考えています。

⇒お問合せは、当センター事務局(電話:06-6711-7601, e-mail: center@korea-ngo.org )まで。


韓国の過去清算問題について知る ~当センターがセミナーを東京で開催

韓国から講師お二方を招請

 去る11月26日、東京の在日本韓国YMCAにて、『韓国における過去清算問題および歴史教育の現住所』と題するセミナーを、当センターが主催し、韓国・東北アジア歴史財団が後援する形でで開催し、約50名が参席した。
 8月の韓国憲法裁判所が下した日本軍「慰安婦」問題に関する画期的な判決など、韓国における過去清算問題をめぐる動向を、日本の市民社会も理解することが、韓日間の歴史和解に有意義であることなどを趣旨として、今回のセミナーが企画された。韓国の過去清算問題については、太平洋戦争被害者補償推進協議会・執行委員長の金敏喆(キム・ミンチョル)先生が、韓国の過去清算問題は、日本のの植民地支配の清算だけでなく、韓国国内における種々の課題にも及んできた歴史を報告された。また、全国歴史教師の会・副会長の李星昊(イ・ソンホ)先生からは、韓国の教育現場に携わる教師の立場から、韓国の歴史教育、とくに歴史教科書をめぐる近年の動きについて報告された。その後の全体討論では、東北アジア歴史財団の研究員を務める郭眞吾(カク・チノ)氏からのコメントを皮切りに、多くの質疑応答が交わされた。
 出席者からは、日本のメディア報道等では概略しか伺えない韓国の過去清算問題および歴史教育の問題について、二人の講師からの講演はもちろん、今回のセミナーのために提供頂いた詳細な報告資料への評価の声を多く聞くことができた。(2011.12.09)

歴史問題セミナー 『韓国における過去清算問題および歴史教育の現住所』を開催します

  • 日時:2011年11月26日(土) 14:00~17:00(開場13:30)
  • 会場:在日本韓国YMCA 9階国際ホール (JR・水道橋駅東口徒歩6分、地下鉄・神保町駅」徒歩7分)
  • 参加費:無料   ※参加の事前申込は必要ありません。
  • 主催:(特活)コリアNGOセンター
  • 後援:東北アジア歴史財団
  • プログラム:<前半>講演、<後半>パネルディスカッション、会場からの質疑応答
  • 講師:
     金敏喆(キム・ミンチョル)(太平洋戦争被害者補償推進協議会 執行委員長)
    専攻は、韓国近現代史。慶熙大学校で『朝鮮総督府の村落支配と村落社会の対応』という主題で博士学位を取得。著書に「記憶をめぐる闘争」(2006)など。
    親日反民族行為真相究明委員会(国家機構)の企画総括課長・調査チーム長、日本の教科書を正す運動本部(現・アジアの平和と歴史教育連帯)執行委員長などを経て、現在は、太平洋戦争被害者補償推進協議会・執行委員長、民族問題研究所・責任研究員として活動しながら、慶熙大学校でも講義を行なっている。
     李星昊(イ・ソンホ)(全国歴史教師の会 副会長)
    1969年大邱生まれ。延世大学校史学科を卒業、現在培明中学校の歴史教師。また、「全国歴史教師の会」の副会長として、世界史授業研究会で学びを重ねている。《生きている世界史教科書》《子どもが生きている韓国史教科書》《子どもが生きている世界史教科書》《韓国が見える世界史》、などの書籍を、他の先生らとの共著で発刊した。
  • コメンテーター:
     郭眞吾(カク・チノ)(東北亜歴史財団研究員、淑明女子大学講師)、ほか
  • コーディネーター:
     郭辰雄(カク・チヌン)(コリアNGOセンター代表理事)

 当センターと、韓国・東北アジア歴史財団が、歴史問題に関するセミナーを開催します。
 今年8月、韓国憲法裁判所は、日本軍「慰安婦」問題について、韓国政府が日韓請求権協定第3条に定められた手続(仲裁委員会など)にしたがって解決しようとしていないのは、国家不作為で違憲だという判決を出しました。その後、国連総会で韓国政府が同問題に関して取り上げるなど、日本の植民地支配の清算問題に関連して新たな動きが生まれています。一方、日本では今年、中学校の歴史教科書検定・採択の年で、過去の植民地支配・侵略戦争の責任を曖昧にする教科書の採択率が前回に比べ大きく高まるという結果となりました。
 この非対照的に見える、歴史問題に対する日韓の動きの違いについて、市民レベルで冷静に学び分析することが今大切ではないでしょうか。実際に韓国においても、歴史教科書の記述をめぐる大きな論争が起こっています。たとえば、韓国における歴史清算の動きは、実際の学校教育や教科書検定においてはどのような変化をもたらしているのでしょうか?
 加害-被害の関係性とともに、偏狭なナショナリズムを克服し平和という共通課題の観点から歴史問題を見つめる作業の一つとして、当センターは今回、韓国から研究者、教育者をお招きして、韓国の現状についてじっくり話を聞く場を持つことにしました。
 多くの方のご参加をお待ちしています。

⇒お問合せは、当センター東京事務局(電話:03-3203-5655, e-mail: tokyo@korea-ngo.org )まで。


日韓請求権協定の「解決済み論」を検証する! 院内集会が開催される

衆院第2議員会館内にて

 韓国憲法裁判所が去る8月30日に、日本軍「慰安婦」問題について、日韓請求権協定第3条が定める手続によって解決しない韓国政府の態度は違憲であるという判断を下したことが、あらためて同問題が未解決であることを浮き彫りにした。その後、韓国政府は日本政府に対して協議の申し入れを行なったが、日本政府は「解決済み」という従来の立場を繰り返し、協議に応じていない。
 あらためて日韓請求権協定による「解決済み論」を検証するとともに、日本政府自ら解決に向けて行動するために何をすべきかを考える院内集会(主催:「慰安婦」問題解決オール連帯ネットワーク))が、11月16日、衆議院第2議員会館・多目的会議室で開催され、与野党の議員らも数名出席した。
 集会では、幾つかの「慰安婦」裁判にも深く関わってきた藍谷邦雄弁護士から日韓請求権協定における日韓の主張の違いについて、国際法の専門家である阿部浩己・神奈川大教授から国際法の視点から「慰安婦」問題に対して行なわれるべき措置などについて説明がなされた。また韓国からも、韓国憲法裁判決のプロセスにも関わった崔鳳泰(チェ・ボンテ)弁護士からの特別寄稿も届いた。集会の最後には、同問題について日韓両国が協議をして最終的解決を実現することを求める決議文が朗読され、採択された。
 院内集会は翌日16日にも開催される。また、12月14日(水)には、1992年以降毎週水曜日に駐韓日本大使館前で開かれている「水曜デモ」1000回目に際するアクションが行なわれる予定だ。(2011.11.16)

ターバン宣言から10年、「東アジア歴史・人権・平和宣言」発表大会が開催

前半のシンポジウム

 2001年、南アフリカ・ダーバンで植民地主義克服とそのための行動計画が採択されてから今年で10年が経つ。昨年の韓国強制併合100年に際して、植民地主義の清算と東アジアの平和共存のための日韓市民共同宣言の作成・発表にたずさわった団体・研究者らが中心となって、ダーバン宣言の東アジア版をつくろうという運動が進められており、去る10月2日、東京・明治大学リバティタワーで、「東アジア歴史・人権・平和宣言」発表大会が開かれ、約300人が集まった。
 前半のシンポジウム「植民地主義を超えて~平和・連帯の東アジアをつくるために」では、阿部浩己・神奈川大学教員、徐勝・立命館大学教員、岡真理・京都大学教員、韓国から金東椿・聖公会大学教員の4名による発題とディスカッションが行われた。世界各地で今も続く植民地主義の現実を前にして、その解決のあり方となすべき行動について。さまざまな意見が出された。
 その後、韓国から来られた日本軍「慰安婦」被害者の李玉善(イ・オクソン)ハルモニ、高校無償化の対象除外にされ続けている朝鮮高校卒業生、沖縄の人権と自己決定権の回復に取り組む沖縄出身者らの証言が行なわれた。その後、沖縄生まれのラッパー等のミニライブをはさんで、最後に宣言文が発表された。200項目に及ぶ長大なものであるため一部の紹介という形がとられたが、今回が最終形 ではなく、多様な意見を集めながらブラッシュアップを続けていく予定とのことだ。(2011.10.5)

平和問題研究所と済州大学校でセミナー開催、南北関係の行方を議論

玄仁澤 前統一部長官

 最新の朝鮮半島情勢をもとに、南北関係の今後を議論する韓国の(社)平和問題研究所(理事長・玄敬大(ヒョンキョンデ)元国会議員)と済州大学の共催セミナーが27日、韓国済州道KALホテルで開催された。(社)平和問題研究所は、政府の統一政策について影響力のある民間のシンクタンクで、毎年秋に海外からのゲストを招いて統一情勢についてのセミナーを開催している。今回は、国立済州大学と共催し、朝鮮半島情勢の最新の分析をもとに、6カ国協議の展望、朝鮮民主主義人民共和国内部の権力移行の現状などについて討議した。
 基調報告を行った前統一部長官の玄仁澤(ヒョンインテク)大統領特別補佐官は、李明博政権の統一政策を担当してきた立場から、「原則をもって北と向き合うことが大切で、対話を進める上でも一貫性が求められている」と述べ、「6カ国協議をはじめ対話の機運が高まっているが、その際、関係諸国との緊密な連携は不可欠だ」と語った。
 また、中国延辺大学東北亜研究院の金強一(キムカンイル)院長は、「北朝鮮が抱えている問題は少なくない。中国における現状認識は関係諸国とさほど変わらないが、かと言って、強硬論で北朝鮮が望ましい方向に進むなど、誰も展望できないはず」と述べ、「中国との経済関係がさらに強化に向かっているが、北朝鮮の自立を支援するためには必要」との考えを示した。
 このセミナーには、日本から平和問題研究所関西支部の金秀玉(キムスオク)会長、当センターの金光敏(キムクァンミン)事務局長が討論者として加わった。 (2011.10.3)

大阪・難波宮跡に中国の中秋名月を祝うフェスティバルが盛大に開催

舞台で民俗芸能を披露

中華料理のブースが並ぶ
 在関西の在日中国人が中心になって今年で三回目の中秋名月祭大阪2011が、9月17日と18日にわたり大阪市中央区の史跡難波宮跡で盛大に開催された。中秋名月祭大阪2011実行委員会が主催し、駐大阪中国総領事館と大阪市が共催した行事。
 会場には、在阪、在関西の中国系企業や商店によるブースをはじめ、辛亥革命の主人公を孫文の軌跡を紹介するパネル展示などがあった。また、中国出身生徒たちが多数通う大阪府立成美高校の中国文化春暁倶楽部の生徒たちによる中国食材の販売ブースなどもあり、会場は賑わった。
 メインの舞台には、中国各地の民俗芸能をはじめ阿波踊りなどの日本の文化披露なども演じられ、中国を満喫し、中日友好をアピールするイベントとなった。
 史跡難波宮跡では毎年11月に、日韓交流イベント「四天王寺ワッソ」も開催されており、朝鮮半島、中国ともつながりの深かった難波宮が現代においても東北アジアの大衆交流の拠点になっているとも言える。アジアの文化が交差する大阪の特性を都市づくりに生かす時期に来ている。 (2011.9.18)

韓国に返還された『外奎章閣儀軌』の一般公開 大きな話題に

「尊崇都監儀軌」(手前)
 韓国・国立中央博物館で、145年ぶりの韓国に返還された外奎章閣儀軌を一般公開し、韓国内外から多くの観覧者が詰め掛けた。
 今回返還されたのは、<豊呈都監儀軌>など71点の外奎章閣儀軌のほか、<江華府宮殿図>などの関連文化財およそ165点。中央博物館では外奎章閣儀軌の内容やその歴史的重要性にスポットをあてて、幅広く紹介した。
 朝鮮王室の祭礼、王室の行動様式を記録した儀軌は、朝鮮王朝(1392~1910)を通して製作が続けられ、「東方礼儀之国」の伝統を重んじる儒教文化の特徴をよく表し、2007年にはユネスコから「世界記録遺産」の指定受け、歴史記録物として世界的に高い評価を受けた。
 今回フランスから韓国に返還された外奎章閣儀軌の多くが、国王が閲覧するために製作された「御覧用」であり、今後の儀軌の研究や活用にとても重要な史料となり、注目を集めている。
  韓日両政府ですでに合意済みの『朝鮮王朝儀軌』の早期返還にも関心が高まる。朝鮮王朝末期の歴史的混乱の中で海外に持ち出された歴史資料が、専門家による正当な評価を受け、その歴史的価値に再照明していくことはとても重要だ。そうした意味で、文化財返還は急がれるべきである。 (2011.9.12)

東アジア地域の平和と人権尊重の社会をめざして、韓日中の若者が議論

青年たちが、夜遅くまで議論
 冷戦構造の傷跡深い東アジア地域の真の平和と人権尊重の社会づくりをめざす東アジア共同ワークショップが8月18日から23日にかけ、韓国知異山で開催された。このワークショップは今年で15回目を向かえ、これまで北海道、韓国、大阪で開催されてきた。今年は、『なつかしい今日、明日に向けた通過儀礼』というテーマで、韓国各地の歴史・戦争遺跡を探訪した他、テーマ別講演、討論会などが開催された。いまだ真相究明されていない歴史の深層や東アジア地域の市民レベルの平和連帯のあり方についても、大きなテーマとして取り上げられた。
 今回のワークショップには、地元の韓国青年たちをはじめ、日本からも市民運動団体、学生たちが多数参加、そして在日コリアン青年たち、中国からの留学生、セトミンと呼ばれる北朝鮮出身者たちも参加。寝食をともにしながら、熱い議論を戦わした。
 東アジア共同ワークショップの第1回目は、1997年、北海道朱鞠内ダム周辺に埋められた朝鮮人労務者の遺体発掘をはじめ、日韓の間にいまだ未解明の歴史課題への取り組みや東アジア地域の平和構築に向けた協働を続けてきた。年明けの2月には、朱鞠内ダム近くで冬のワークショップも予定されている。 (2011.8.25)

金学順ハルモニの告発から20年、世界各地で水曜集会が開催される

東京・参議院議員会館前での集会
 1991年8月10日、韓国で金学順ハルモニが日本軍「慰安婦」被害者として名乗り出てから20年を迎えて、ソウルの日本大使館前で毎週水曜日に開催されている水曜集会(デモ)が、韓国のみならず、日本、フィリピン、台湾、ドイツと世界各地で開催された。日本では、北海道、東京、大阪、広島、福山、福岡で集会が行なわれた。
 この水曜集会は1992年1月に開始し、同日8月10日に982回を数えるに至った。しかし、20年経った今も、被害女性たちが求める公式謝罪と補償は認められず、今年の12月14日は1000回を迎えようとしている。
 東京の参議院議員会館前には、100名を超える市民が集まり、被害当事者たちの写真展示やプラカードなどを掲げ、同問題の解決を訴えた。応援に駆けつけた国会議員からスピーチや、各支援団体からアジア各国の被害者の現況に関する報告がなされた。そして、韓国・挺身隊問題対策協議会が同時間帯にソウルで開催している集会で発表した声明文(日本語に翻訳されたもの)が朗読され、政府・国会に一日も早い解決を求めるシュプレッヒコールで集会は締められた。
 また、8月12日から15日にかけてソウルにて、『第10回日本軍「慰安婦」問題解決のためのアジア連帯会議』が開催されている。 (2011.8.21)

北海道朱鞠内で東アジア共同ワークショップが開催される

真相調査報告会をもとに
討議会が行われる

 アイヌの伝統様式で犠牲者を弔う
「イチャルパ」
 北海道空知の人口湖朱鞠内の湖畔旧光顕寺で、日本、在日、韓国の若者たちによる東アジア共同ワークショップが2月25日と26日の二日間にわたり開催され、約40名が東アジアの平和づくりに向け学習会や討論会を開催した。
 このワークショップは1996年から開催されているもので、1997年には水力発電用に建設された朱鞠内ダムの工事に携わり、事故や病気で犠牲になった朝鮮人労務者などの遺骨や遺留品を集落の共同墓地脇の笹薮から発掘し、遺族のもとに返還する大規模なワークショップも開催された。
 朱鞠内ダムには200名を越える朝鮮人、中国人が働いていたことがわかっており、役場に残る埋火葬認可書などの記録から少なくとも36名の朝鮮人が何らかの理由で犠牲になったことがわかっている。ワークショップの会場となった旧光顕寺は遺体を一時安置していた場所で、いまも身元がわからない遺骨が納骨されている。
昨年秋には、60数年ぶりに朱鞠内ダムの元労務者であった金祥石(キムサンソク)さんがこの地を訪れ、戦時中、故郷での野良仕事中に、突然現れた警官に手錠をかけられ、そのまま朱鞠内ダムの建設工事に強制連行されたとする証言が行なわれた。
 今回の東アジア共同ワークショップでは、96年から続くワークショップの取り組みを振り返りつつ、戦時下における朝鮮人労務動員の真相究明調査の報告が行われたほか、ダム建設で犠牲になった方々の慰霊祭なども行なわれ、過去の歴史を教訓にしながら未来を切り開いていくための様々なプログラムが実施された。
 当センターから金光敏(キムクァンミン)事務局長が参加し、「東アジアを変える人々のつながりとは?」のテーマで講演した。東アジア共同ワークショップは、今年夏に韓国での開催をめざして準備を開始する。行事は東アジア共同ワークショップ実行委員会が主催し、空知民衆史講座が事務局を担当した。 (2011.3.5)

北朝鮮による延坪島砲撃事件に対する声明

 さる11月23日、朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という)は、延坪島を砲撃し、民間人を含む多数の死傷者を出した。これまでの南北の軍事的な衝突とは異なり、北朝鮮中央政府の明確な命令に基づき韓国の民間人居住地域へ北朝鮮軍が砲撃を加えたことは、まさに戦争の第一歩となる重大性を有している。私たちは、北朝鮮の戦争行動を強く非難するとともに、朝鮮半島で2度と戦争の悲劇をくり返さないために、北朝鮮が類似の戦争行動に出ないこと、また韓国・アメリカ軍が報復や挑発を行わないことを心から求める。また、今回、紛争の被害者となり尊い命を失った方々に深い哀悼の念を表する。

 今年に入り、哨戒鑑沈没事件によって南北関係は一時冷却化したものの、関係改善の兆しが見え始めていた矢先だけに衝撃は大きく、民間人に犠牲者が出たことで、韓国の国内世論を報復、対抗へと誘発しかねず、朝鮮半島情勢はさらに緊迫を増してしまう危険性をはらんでいる。

 北朝鮮側は、今回の砲撃について、韓国軍が北朝鮮側の警告にもかかわらず軍事演習を実施し、かつ北朝鮮領海に数十発の砲弾を発射し、軍事的挑発行為に及んだことに対する反撃であると主張している。しかしながらこのような論理で、たとえ軍事施設があるにせよ、千数百名もの同胞が生活する延坪島への砲撃をおこない、民間人の犠牲者を出したことを正当化できるものではない。まず非難されなければならないのは北朝鮮政府のとった行動なのである。

 もっとも一方で、韓国政府も北朝鮮との領海紛争地域で大規模軍事演習をくり返し行ってきた非がある。韓国政府の強硬対応が、北朝鮮の戦争行動を招き、自国民の犠牲につながったことはまぎれもない事実であり、韓国政府も当然その責を免れるものではない。

 北朝鮮は今回の砲撃が深刻な戦争行為であり、各種の南北合意、国際協定に違反していることを認め、今後このような武力行使を止めるべきである。 韓国政府は今回の事態がこれ以上深刻化しないよう、軍事的対立を煽る軍事境界線付近での軍事演習の中断と南北での対話再開のための努力を早急におこなうべきである。 また、米中日ロなど関係諸国には、事態の拡大防止をはかりながら、平和的解決のために自制的態度で南北に対話促進をうながすことを求める。 南北及び周辺関係諸国、そして私たち市民は、家族、親族、友人、知人が戦渦に巻き込まれることを断じて防がねばならないのである。

2010年11月29日
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター