コリアNGOセンターは、「人権」「平和」「共生」「自立した市民」という理念のもと、在日コリアンを中心にして設立された特定非営利活動法人です。
コリアNGOセンターは、民族教育、在日外国人の人権保障、共生社会実現に向けた教育・啓発、韓日市民・NGOの交流・協力、朝鮮半島の平和統一と東アジア共同体の形成など幅広い課題に取り組んでいます。
ミッション
外国人の人権保障と 多民族・多文化共生社会の実現のために!
私たちは、次代をになう子どもたちを中心に、在日コリアンの民族的アイデンティティと自尊感情を育むため民族教育権を確立するとともに、多民族・多文化化が不可避な21世紀の日本社会にあって、マイノリティの人権を保障し、民族的・文化的差異を尊重しながら対等な関係性を構築する多民族・多文化共生社会の実現をはかります。そのためにも法律相談や生活サポートに取り組みながら、外国人の人権保障と共生社会の実現を基礎づけるものとして、「外国人人権基本法」、「差別禁止法」などの法制度の確立のために努力していきます。
在日コリアン社会の豊かな社会基盤の創造と コリアン・ネットワークの構築のために!
在日コリアンの一人ひとりが、いきいきと活躍することができる環境やフィールドを創っていくためには、コリアン同士の連携と協力関係が何より重要です。同時に日本国籍をもつコリアン、国際結婚による「ダブル」、「ニューカマー」韓国人、中国朝鮮族の増加などで多様化するコリアン社会のなかで、より豊かなコリアン・ネットワークを創造していきます。同時に、日本国内にとどまらず、グローバルな観点から中国、ロシア、アメリカなど、海外に居住する、コリアンとの国境を越えたネットワークも広げていきます。
南北コリアの平和統一と南北・日本の市民社会の発展、そして「東アジア共同体」のために!
東アジアにおいても人権、平和、環境など一国だけでは解決できない課題が大きく浮上するなかで、韓国と日本で発展する市民社会の役割は一層重要となっています。私たちは南北の平和・統一、民主主義・人権の実現など多様な分野で拡大しつつある韓日間の市民、NGOが、相互理解を深め、国境を越えた市民社会を形成し、協働関係を強めるために努力していきます。
私たちは、「平和」「人権」「民主主義」「自立した市民」の理念のもと、これらのミッションにもとづく重層的な活動を通じて、在日コリアン社会の発展、日本社会での「多民族共生社会」の実現、そして究極的には、南北コリアの統一と国境を越えた東アジアにおける豊かな市民社会~開かれた地域主義としての「東アジア共同体」~の形成に寄与していきます。
趣旨文
(2010年6月6日開催の統合記念シンポジウムにて発表)
帝国主義と世界戦争、東西冷戦の時代としての20世紀から、21世紀をむかえ、グローバル化が進むなかで、戦後の国際社会がその確立に努めてきた民主主義と人権尊重が、その普遍的価値にふさわしい普遍性をようやく獲得しつつあります。もちろん、国際社会は民主主義と人権をいまだ完全には享受しえてはいません。冷戦体制が崩壊して以降、米国を中心に広がった新自由主義は、戦争の脅威の増大と深刻な格差社会をもたらしてきました。しかし米国・日本での政権交代に見られるように、いまや市民社会は「平和」「人権」「環境」などの価値観に基づく、新しい秩序を求めた動きを活発化させつつあります。
一方でグローバル化と、ヨーロッパ連合(EU)をはじめとする地域統合の深化・拡大は、日々生活を営む地域社会を生活の「場」として創造するうえで、市民の自立と自治を一層促すことになるでしょう。
そして地域統合の流れは、ヨーロッパからアメリカ、アジアへと確実に広がっています。今日急速に地域協力から地域統合に向かいつつあるアジアにおいても、その究極的目的と理念は、恒久平和と民主主義、人権を確立することにあります。いまや、現実的な政治課題となった「東アジア共同体」は、単なる経済統合のレベルにとどまってはなりません。
私たちは、アジアにおける歴史の断絶と過剰なナショナリズムを克服し、揺るぎない平和体制を構築するために「東アジア共同体」を志向するものであり、と同時に国境を越えた「東アジア市民」というアイデンティティを育まなければならないと考えます。 私たちは、21世紀が民主主義と人権、国境を越えた市民社会の時代となることを確信します。
いま、在日コリアン社会は大きな転換期にあります。1世・2世から3世・4世へと世代交代が進むなかで、国籍、民族、価値観などがますます多様化しています。もちろん、こうした多様化が、戦後の朝鮮半島における分断と対立、日本政府による差別・同化政策のなかで進行してきた点を看過してはなりません。
植民地支配と南北分断という歴史を背負いながら生きてきた私たち在日コリアンは、これまで国家の利害の狭間に置かれ、「北か、南か」「祖国志向か、在日志向か」「民族か、帰化か」などの、さまざまな二項対立的な範疇で自らを語ることを余儀なくされてきました。しかし今、私たちはそうした範疇を乗り越え、市民として自立しながら、国家の境界に生きることを「肯定的」に捉えることで、より豊かなアイデンティティを創造しようとするものです。
在日コリアンは、文化的かつ血縁的なハイブリッド(異種混交)性と海外コリアン700万の一員であるディアスポラ(離散)性を兼ね備えています。こうした特徴は、むしろ国家にとらわれない多元的で柔軟な視点を形成し、創造的なエネルギーを生み出す、かけがえのない資産ともいえるのです。 私たちは、境界に生きていることで、既存の価値観にとらわれない斬新な視野から日本と南北コリア、そして東アジア全体に関われる存在です。こうした在日コリアンの特徴を最大限発揮することは、東アジア全体の新しい秩序形成に向け、多様な人的ネットワークを生み出す重要なカギのひとつであると考えます。
いまや、在日コリアンの未来を構想するときに、日本社会で自己完結する思考と行動様式だけでは不充分であり、21世紀の時代潮流に照応し、「地域に根ざし、祖国に参加し、世界に連なる」重層的で開かれた思考と行動様式が必要とされているのです。また、そのために日本による過去の朝鮮植民地支配の清算が、誠実になされなければならないことは言うまでもありません。
同時に、世界的なグローバル化の進展と日本社会の急激な少子高齢化は、日本社会の多民族化を不可避にしています。しかし、いまだに日本社会は国籍・民族・言語・文化など「ちがい」をもつ人たちが真の意味で「共生」できる社会とはなっておらず、「多民族共生社会」を実現していくためにも、在日コリアンの積極的な役割が求められています。
これまで教育、人権、平和・統一という幅広い分野で活動に取り組んできたコリアNGOセンターと、有資格者を中心に法律相談・生活サポート事業に取り組んできたコリア人権生活協会は、双方が組織の壁を越えて、お互いの持っている活動経験やネットワーク、専門性を束ねることで、在日コリアン社会、日本社会および東アジアの変化により柔軟かつ機動的に対応しながら、より多くの人々のニーズに貢献できるという認識を共有し、合併するにいたりました。
私たちは、ミッションとして、次のことを掲げます。
第一に、次代をになう子どもたちを中心に在日コリアンの民族的アイデンティティと自尊感情を育むための民族教育権を確立するとともに、多民族・多文化化が不可避な21世紀の日本社会にあって、マイノリティの人権を保障し、民族的・文化的差異を尊重しながら対等な関係性を構築する多民族・多文化共生社会の実現をはかります。
いま日本では民族学校、民族学級などさまざまな民族教育のための取り組みが進められていますが、子どもたちは民族教育を通じて民族と豊かに出会い、自己の民族的アイデンティティを確立し、「生きる力」を日々育んでいます。そして子どもたちに民族教育を保障することは、個人のアイデンティティの確立や自尊感情を育むだけでなく、在日コリアン社会の土台を作っていく意味でも、とても大切なことなのです。
また民族教育の保障は、在日コリアンの子どもたちの人権確立のみならず、マジョリティである日本の子どもたちにとっても、等身大で実感のある朝鮮半島とのつながりの機会を提供し、共生社会の基礎を築いていくものでもあります。
しかし、いまだに民族教育の制度保障は不充分であり、私たちは在日コリアンの人権問題として、また日本社会が真の共生を実現するための重要な課題として、民族教育権の保障を実現していきます。
また、日本社会は、グローバル化の進展と、急激な少子・高齢化のもとで、在日外国人は増大する趨勢にあります。同時に中国やブラジルなど多様な国・地域からの外国人人口が増加しており、日本社会にとって、多様な「ちがい」を持つ人々によって構成される「多民族化」はますます不可避となっています。
私たちは外国人の増加のもとで、生活レベルでのさまざまな問題を解決するために、具体的な法律相談・生活サポートをおこなうことも重要な課題として位置づけていきます。
そして在日コリアンの人権確立は、すべての在日外国人の人権保障を視野に入れて取り組まれなければならず、私たちは外国人の人権保障と共生社会の実現を基礎づけるものとして、「外国人人権基本法」、「差別禁止法」などの法制度の確立のために努力していきます。
第二に、各界各層の在日コリアン団体・個人との交流・協力関係を活性化し、在日コリアン社会の豊かな社会的基盤を創造するとともに、南北コリア及び、とくに東アジアに居住しているコリアンとの間で交流をすすめ、コリアン・ネットワークを構築します。
在日コリアンの一人ひとりが、より自由に、平等に、豊かに生き、活躍することができる環境やフィールドを広く、深く創っていくためには、当事者であるコリアン同士の連携と協力関係が何より重要です。
同時に、旧植民地出身者とその子孫である特別永住者の減少、日本国籍をもつ「帰化」者及び国際結婚による「ダブル」の急増、「ニューカマー」韓国人の増大という在日コリアン社会の変化の中で、私たちは在日コリアンの概念を広げ、こうした人々との関係を丁寧につなげ、ネットワーク化していく実践をすすめていきます。
とりわけ、日本で増加する「ニューカマー」韓国人とのネットワークを強めることは、今後の在日コリアンの豊かな基盤を創造する上でも不可欠な課題といえるでしょう。
一方、20世紀の歴史が生み出した海外コリアン700万は、グローバル化が進展する21世紀には、文字通りグローバルな存在として、重要な役割を果せるでしょう。海外コリアンの大多数が周辺大国である日本、中国、ロシアおよび朝鮮半島に大きな影響力をもつアメリカに集中していることを考えるとき、その重要性はますます増大しています。
私たちは東アジアの変化に対応しながら国境を越えたコリアン・ネットワークの強化に取り組んでいきます。
第三に、南北コリアの平和・統一の実現と、南北コリア・日本の市民社会の相互発展、そして「東アジア共同体」形成に寄与します。
東アジアにおいても人権、平和、環境など一国だけでは解決できない課題が大きく浮上するなかで、その解決主体として国境を越えた市民社会の成熟が不可欠となっています。
とくに、韓国と日本では市民社会が大きく成長しており、今後その役割は一層重要となっています。こうした韓日間の市民、NGOが、相互理解を深め、国境を越えた市民社会を形成し、協働関係を強めることは、いまだに植民地支配とアジア侵略の歴史の総括をアジアの人々と共有することができない日本社会のあり方を変えていく力となるでしょう。
同時に、南北の平和・統一、民主主義・人権の実現など多様な分野で拡大しつつある市民、NGOの協働は、南北コリアと日本の市民社会の発展に寄与するものにとどまらず、東アジアの平和共存を実現するための牽引車の役割を果たすことになるでしょう。
私たちは、「平和」「人権」「民主主義」「自立した市民」の理念のもと、これらのミッションにもとづく重層的な活動を通じて、在日コリアン社会の発展、日本社会での「多民族共生社会」の実現、そして究極的には、南北コリアの統一と国境を越えた東アジアにおける豊かな市民社会~開かれた地域主義としての「東アジア共同体」~の形成に寄与していきます。