活動報告

韓日首脳会談に際しての声明

 3月16日に行われた韓日首脳会談についてコリアNGOセンターでは以下の声明を公表した。

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 3月16日、韓国・尹錫悦大統領が日本を訪問し、岸田首相との首脳会談をおこなった。今回の会談は懸案となってきた徴用工(強制労働者)問題について韓国政府が日本企業の賠償を肩代わりして被害者に支払うことで解決を図ろうというものである。
 今回の韓国政府の対応は、長年にわたって日本企業の歴史的責任を問い続けてきた元徴用工(強制労働者)の人たちの思いを十分にくみ取ることなく一方的に進められたものであり、すでに元徴用工(強制労働者)裁判の原告のうち3人も韓国政府の案を拒否している。また、この合意は2018年10月30日に韓国大法院の上告棄却によって確定した「不法な植民地支配及び侵略戦争の遂行と直結した反人道的な不法行為による精神的苦痛」に対する賠償を認める判決の趣旨を歪めるものであり、こうした原則的立場を踏まえずに、一方的に過去清算を求める声を封殺することは、将来において必ずや禍根を残すものとなるだろう。
 今回の日韓首脳会談で解決案として確認されたからといって、被害当事者と真摯に向き合うことなしに、徴用工(強制労働者)問題が真の意味で解決されるわけではなく、韓国政府は当事者への真摯な説明と理解を求める努力をすべきである。

 一方で、日本政府も今回の韓国政府の提案によってすべて解決されたわけではないことを留意すべきである。この間の韓国政府とのさまざまな過去清算の問題に対して日本政府は一貫して「1965年の韓日条約で解決済み」との姿勢で、韓国政府側との対話すら拒否してきた。のみならず元徴用工(強制労働)被害者が当該日本企業を相手取った裁判においても、企業側に賠償、和解など一切おこなわないように事実上強制してきたことで、本来は民間次元で解決されるべき過去清算問題をより複雑化させてきた経緯がある。
 今回、岸田首相は首脳会談において、1998年10月に小渕首相と金大中大統領との間で合意された「日韓共同宣言~21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」(以下、日韓共同宣言)をはじめ、過去日本政府が表明してきた歴史認識を「継承」すると表明しているが、それだけでは不十分であろう。日韓共同宣言で日本政府は「我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫び」を表明している。しかし問題は、こうした歴史認識を否定・歪曲する言動を政治家など公人が繰り返すことで、その真意に疑義を持たれている現状があるということである。したがって、岸田首相は形式的に「過去を継承する」だけでなく、その実質を満たすべきであり、自らの認識として「痛切な反省と心からのお詫び」を表明し、それに相応しい行政対応や立法への取組を行なうべきであると考える。そして徴用工問題解決が日韓両国で取り組むべき課題であるという観点から、日本企業の積極的な対応を促していくべきであろう。

 これらの点から、今回の日韓首脳会談で合意されたことは問題解決のための「終着点」ではなく「始発点」としてとらえられるべきであり、そのためにも韓日両政府に対して歴史への真摯な向き合いを求めたい。

 一方で、今回の合意では日韓の経済交流、日韓企業による青少年育成のための基金創設、安保協力など多岐にわたる分野での日韓の関係改善に向けたとりくみをすすめていくことが確認されている。本来は歴史問題の解決と相互の交流・協力関係はそれぞれ別次元で対応されるべきものであるが、とりわけ2012年の第二次安倍内閣発足以降、韓国との歴史問題をめぐる葛藤が大きくクローズアップされることによって韓国との対立が深まり、日本国内では嫌韓感情が広がることによって在日コリアンへの深刻なヘイト被害をもたらしてきた現況があることに照らし、今回の合意によって日韓両国がより一層の相互協力をすすめていくための道が開かれたことは歓迎したい。
 今後、互いのパートナーシップをより確固とし、東アジアの平和と繁栄に寄与できる韓日関係の発展に向けて、韓日両政府にはあらためて1998年の日韓共同宣言に立ち返り、歴史を踏まえ、未来を見据えた幅広い分野での交流と協力を積み重ねていくことを期待したい。

2023年3月17日
特定非営利活動法人コリアNGOセンター

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