活動報告

コリアNGOセンターが杉田水脈前議員の公認見直しを要望

 さる3月9日の自民党党大会で杉田水脈前衆議院議員が7月の参議院選挙候補者として公認されたことを受けて、コリアNGOセンターでは本日3月28日、自民党大阪府連を訪問し、石破茂自民党総裁にあてた「杉田水脈前衆議院議員の参議院候補公認の見直しを求める要望書」を提出、要望を伝えました。

 自民党大阪府連事務所で面談対応してくださった自民党大阪府連事務局長の鈴木規久事務局長は私たちの思い、要望に対して誠実に受け止めてくださり、提出した要望書も自民党中央に申し伝えると語りました。

 要望書の全文は以下の通りです。

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自由民主党総裁 石破 茂 様

杉田水脈前衆議院議員の参議院候補公認の見直しを求める要望書

 政府与党として日本社会の発展に向けて努力されていることに敬意を表します。

 私たちコリアNGOセンターはこれまでヘイトスピーチの解消など差別の根絶、多文化共生社会に向けた社会教育活動に取り組んできた在日コリアン当事者の人権団体です。

 さて、さる3月9日、自由民主党党大会で杉田水脈前衆議院議員(以下、杉田前議員)を7月に予定されている参議院選挙での公認候補とすることが発表されました。

 このことを私たちは驚きをもって受け止めています。

 杉田前議員は2017年の自民党入党以前である、2016年2月の国連女子差別撤廃委員会に参加し、「日本軍による慰安婦問題はなかった」などと主張し、そのときに参加していた在日コリアン女性、アイヌ女性を揶揄し、自身のブログで「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」と書きました。またこうした趣旨の発言はブログにとどまらず青林堂発刊の雑誌『JAPANISM』でも掲載されるなど、マイノリティ女性を差別、揶揄する発信が繰り返し続けられてきました。

 これに対して当該の在日コリアン女性、アイヌ女性が抗議をおこない、2023年には札幌法務局と法務省が人権侵犯であることを認定しています。

 この人権侵犯の認定を受けて、各種メディアも杉田前議員の資質に疑義を呈し、「杉田水脈氏、もう議員の資格はない」(朝日新聞社説)、「杉田水脈議員に『人権侵犯』の認識はあるのか?繰り返す弱者への蔑み 自民党が責任を問わないのはなぜ」(東京新聞)などを掲載しています。また杉田前議員が総務政務官に就任した時には「杉田水脈氏を政務官に 差別を認める内閣なのか」(毎日新聞社説)と指摘されており、杉田前議員の差別発言を問題視する世論は決して小さくありません。そして杉田前議員をどのように処遇するかは自民党の差別と人権に対する姿勢を示す試金石ともいえる状況であるといっても過言ではありません。

 一方の杉田前議員は人権侵犯の認定を受けて自身のブログの記事を削除、「謝罪」しており、すでに終わった問題であるとしています。また2018年には月刊誌「新潮45」8月号で性的マイノリティに対して「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」と明らかな差別発言をしたことについて、2022年12月には総務政務官として国会答弁でこの発言についての「謝罪」を表明しています。

 しかし2023年11月10日の共同通信の報道では杉田前議員は在日コリアンに対する悪質なデマであり、ヘイトスピーチの拡大につながってきた「在日特権」について、「実際には(在日特権は)存在します」とX(旧ツイッター)に投稿しています。

 「在日特権」という言葉は、在日コリアンがあたかも日本社会で優遇され、特権を享受する存在であり、特権を利用して日本社会に害をなす敵対的存在であるという趣旨で、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が中心となって主張されてきたデマであり、「在日特権」が存在しないことは日本政府も認めているところです。にもかかわらず2021年のウトロ地区での放火事件、2022年のコリア国際学園放火事件、民団徳島県本部脅迫事件など、在日コリアンへのヘイトクライムによる被害が各地で拡大をみせるなかで、在日コリアンへの偏見・憎悪を煽るような発信をおこなっているのです。

 また3月の自民党の公認決定後には自身のホームページで「新潮45」の文章全文を掲載し、自分への批判が不当であるように発信したり、人権侵犯は認定されていないなどと主張するなど、過去の「謝罪」とまったく反対の振る舞いをしています。こうした状況を見れば、杉田前議員の「謝罪」は、自身の差別発言で在日コリアン女性やアイヌ女性、性的マイノリティを傷つけたという真摯な反省もない不誠実なものであり、自身がこれまで批判を受けてきた差別、ヘイトを助長する行動を改める姿勢もまったく見られないと断ぜざるをえません。

 今年は戦後80年、日韓国交正常化60年であり、日韓関係においても、また東アジアの今後を展望する上でも重要な年を迎えています。同時に少子高齢化が進む日本社会にあって、どのようにして外国人の人権を尊重して多文化共生を進め、多様な属性を持つ人々が尊重され多様性あふれる社会をめざしていくのかはこれからの日本社会にとって極めて重要な課題です。

 そうした観点から考えたとき、これまで常習的にマイノリティへの差別発言を繰り返してきた杉田前議員がこれらの課題を担うにふさわしい人物であるとは到底言い難いのではないでしょうか。同時に、そうした人物を参議院候補として公認することは自民党の人権尊重と多文化共生にむけた姿勢を大きく毀損することになるのではないでしょうか。

 こうした趣旨から、自民党におかれましてはぜひとも杉田前議員の7月の参議院候補公認について再考していただきますよう、強く要望いたします。

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