参議院選挙を終え、与党が過半数に達せず、国民民主党、参政党が大幅に議席を増やすなど、今回の選挙結果はこれからの日本の政治に大きな影響を与えるでしょうが、その選挙過程での大きな課題のひとつとして外国人をめぐる問題がありました。とりわけ「日本人ファースト」を掲げ、デマや差別用語を主張する参政党に対して注目も批判も集まりました。
コリアNGOセンターは7月18日の演説での「チョン」という差別語に対して抗議文を送りましたが、いまだに参政党からは一切のコメントはありません。参政党としては「訂正」して終わったと理解しているのかもしれませんが、あらためて差別であるとの認識をもって対応することを求めます。
一方で、選挙の場で公然と差別発言が出たにもかかわらず、何らコメントをしない他の政党、差別発言があったことは報道しても、被害当事者である在日コリアン当事者のコメントを紹介しないテレビメディアなどを見ると、日本社会の差別に対するあまりにも軽い、緊張感のない扱い、差別の被害者に対する関心のなさを指摘せざるをえません。
差別は人の生命を奪います。そしてそれは直接の暴力からではなく、敵意や蔑視、嘲笑の表明からはじまります。長年「チョン」と蔑まれてきた在日コリアンは、その言葉を耳にするだけで言葉を失い、息苦しくなるのです。「訂正」したから終わったことにできるというのは、それこそが「日本人特権」であり「日本人ファースト」の意味するものなのです。そしてこの差別発言は日本社会の差別意識がいかに過去の歴史と結びついているかを端的に示しています。参政党への注目が集まり「日本人ファースト」への批判やファクトチェックで主張のいい加減さが指摘されてくる中で、神谷代表は意図してその標的を「外国人」ではなく「在日コリアン」にしたのです。このことは「日本人ファースト」が「愛国」のもとでヘイトスピーチを繰り広げた流れと軌を一にするものです。
差別は加害と被害の問題であり、加害の側の意図や訂正したかどうかという振る舞いで終わる問題ではありません。被害当事者の思いと向き合い、加害者の問題と同時に、その背後にあるいまの社会の問題にまで目を向けていかなければ、本質的な差別の解消にはつながらないでしょう。今後、流動化する政治情勢のなかで外国人の人権に関わる議論が大きな課題となるなかで、あらためて人権を尊重し、差別を許さない、そうした声を政治に届けていきたいと思います。
特定非営利活動法人コリアNGOセンター
代表理事 郭辰雄
▼リンク
参政党・神谷代表の差別発言への抗議文を送付 – 特定非営利活動法人 コリアNGOセンター