活動報告

DHCヘイト書き込み、大阪市へ条例に基づく審査を求める意見書提出

昨年12月28日、DHCの「ヤケクソくじについて」という文章を大阪市ヘイトスピーチ条例にもとづいて大阪市に申出をおこなったのですが、大阪市の条例は「大阪市内でおこなわれたもの」もしくは「明確に大阪市民等が被害者である」という地域条項があるため申出とは別に審査を求める意見書を大阪市に提出しました。以下、長文ですが紹介します。


株式会社ディーエイチシーのヘイトスピーチについて、大阪市ヘイトスピーチ条例に基づく審査を求める意見書

特定非営利活動法人コリアNGOセンター 代表理事 郭辰雄

 コリアNGOセンターは昨年12月28日、株式会社ディーエイチシー(以下、DHC)がウエブサイト上に11月に吉田嘉明会長名で公開された「ヤケクソくじについて」がヘイトスピーチに該当すると考え、また大阪市で制定されている「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」(以下、大阪市条例)の審査対象にあたるとして申出をおこないました。

 以下、審査の対象にすべきであると考える理由について意見を提出します。

1. 文章がヘイトスピーチに該当すると考える理由

「ヤケクソくじについて」(以下、文章)は、DHCが競合企業であるサントリーに売り上げで劣っているとして、自社の販売促進を目的とする「ヤケクソくじ」なる懸賞企画をおこなうことを説明した文章です。

 その文章の中では、サントリーの企業イメージを貶めるために「サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリア系の日本人」「ネットではチョントリーと揶揄されているようです」「DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本企業です」と記載しています。

 この内容は明らかに在日コリアンが日本人よりも劣っているとの主張にもとづくものであり、また「チョントリー」というのは在日コリアンに対する蔑称で競合企業を貶めようとするものです。こうした表現は明らかに在日コリアンに対する差別意識、別紙感情を助長するものです。同時にDHCは日本全国に1000万人もの通販会員を有する大手企業でありその社会的影響力は極めて大きいものがあります。

2. 大阪市条例の運用の現状と問題について

上記の内容を踏まえたとして、大阪市条例がDHC文章を審査対象にすることができるかどうかが問題として指摘されます。大阪市条例では審査対象となるのは、第5条で以下のように規定されています。

(1) 本市の区域内で行われた表現活動

(2) 本市の区域外で行われた表現活動(本市の区域内で行われたかどうか明らかでない表現活動を含む。)で次のいずれかに該当するもの

ア 表現の内容が市民等に関するものであると明らかに認められる表現活動

イ アに掲げる表現活動以外の表現活動で本市の区域内で行われたヘイトスピーチの内容を本市の区域内に拡散するもの

そのため「拡散防止措置や認識等の公表の対象とするヘイトスピーチについては、大阪市は一地方自治体であることから、大阪市の区域内ないし市民等に関わるものに限定する」とされ、インターネットによる地域不定の表現行為、また在日コリアンという属性が対象で「大阪市民等」の被害が明らかではないものについては審査の対象にならないとされています。それを踏まえた上でも以下の理由から大阪市条例で審査すべであると考えます。

3. 審査すべきと考える理由

1) 大阪市で経済活動をおこなっている企業によるヘイトスピーチである

 今回のDHC文章は東京に本社をおき、日本全国に販売店をもつ企業によるヘイトスピーチであり、当然その被害は日本全国にわたります。そしてDHCは京阪モール、天王寺ミオプラザ、大阪なんばパークス、あべのハルカス近鉄本店、イオンモール鶴見緑地、ホワイティうめだ、リンクスウメダ、大丸心斎橋、大阪なんばマルイと大阪市内の多数の繁華街に9店舗の直営店をおいて経済活動をおこなっている企業であり、DHCが会社全体として展開している販売促進活動がヘイトスピーチもとづくものである場合、大阪市の直営店も当然ヘイトスピーチ解消法ならびに大阪市条例の順守義務を負っており、決して無関係であるとはいえません。

 大阪市条例によってこの文章がヘイトスピーチとして認定されるのであれば、大阪市の直営店は大阪市条例にもとづきDHC文章の拡散防止のため努力をすべきであると考えます。

 また誹謗中傷を受けた当事者であるサントリーも大阪に本社をおく企業です。企業間の健全な競争は当然必要なことではありますが、その過程でマイノリティに対するヘイトスピーチによって競合企業を貶め、企業イメージを損なわんとする行為は、健全な企業活動を阻害、委縮させることにもなります。

2) 被害の深刻さ

 今回のDHC文章は、日本有数の健康食品、化粧品の販売シェアを誇り、全国で1000万人をこえるといわれるネット販売会員を有する企業がおこなったヘイトスピーチであり、その影響力は極めて大きいと言えます。また文章では「在日コリアン」という属性が貶められているため、その被害当事者の姿が明確ではないと思われますが、決してそうではありません。このDHC文章を知った在日コリアンからは、会社の利益のために自分たちが貶められたことへの怒りや、在日コリアンに対するあからさまな差別に対する憤りはもちろんですが、それまで自分か購入したり、愛用している商品を販売している、自分にとって身近な会社が、あからさまなヘイトスピーチをおこなったことへの怒りや失望の声も聞かれます。

 ましてや大阪市には日本で最も多い6万5千人を超える韓国・朝鮮籍者が暮らしており、DHC文章でいわれる日本国籍を取得した朝鮮半島にルーツを持つ人たちを加えるとはるかに多くの人たちが被害を受けたことになります。

 DHC文章は匿名や所在不詳の個人によって行われたものではなく、日本全国に顧客を有し、大阪でも直営で経済活動をおこなっている企業が加害者となっておこなわれたヘイトスピーチであり、自分たちがよく知っている、あるいは商品を購入したり、会員登録している在日コリアンにとってみれば、より深刻な被害感情を受けることになります。

 こうした点からも大阪市条例にもとづき、大阪市民である在日コリアンの被害について目を向け、審査を行う必要があるのではないかと思います。

3) 「ヤケクソくじ」による被害拡散の継続

 DHC文章はDHCがおこなっている「ヤケクソくじ」なる販売促進のための懸賞事業の一環として公開されたものです。この懸賞事業はDHCの商品を購入した人を対象にして毎月抽選で335人に1万円を寄贈するというもので、すでに4回(10月から12月は抽選済み、1月は2月11日に抽選)が実施されています。また「ヤケクソくじ」の紹介や抽選発表をDHCがスポンサーになっているネットメディア「虎ノ門ニュース」でおこなっています。このため「ヤケクソくじ」はネットメディアを通じた毎月の懸賞事業として拡散性が極めて高いと言えます。

上記の1)、2)を踏まえたうえで大阪市としても被害拡散防止の観点から検討いただければと思います。

 以上の理由から、ぜひとも大阪市条例の目的に鑑み、審査を検討していただけることを望みます。

2021年2月8日

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