活動報告

大阪市ヘイトスピーチ条例「合憲」判決についてのコメントを発表

2月15日、最高裁判所が大阪市ヘイトスピーチ条例について「合憲」とする判決をくだしました。これを受けて、コリアNGOセンターでは以下のコメントを発表しましたのでご紹介します。


大阪市ヘイトスピーチ条例「合憲」判決についてのコメント

 「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例(以下、大阪市条例)」が表現の自由を侵害するもので違憲であるとして訴えられていた裁判で、2月15日に最高裁判所は表現の自由も「合理的で必要やむを得ない限度の制限を受けることがある」とし、大阪市条例はヘイトスピーチを抑止する規制として「合理的で必要やむを得ない限度にとどまる」から合憲であるとの判断を下した。
 この最高裁判決は、ヘイトスピーチが表現の自由の名の下に無条件で許されるものではなく、差別を拡散し、人権を侵害するものであり、これを地方自治体が条例によって規制することも許されるという初の憲法判断を下したものである。私たちは、この裁判所の判断を歓迎する。
 2016年に成立したヘイトスピーチ解消法に先立って成立した大阪市条例は、大阪市内で実施された、もしくは大阪市内に居住、在勤、在学する市民を対象にしたヘイトスピーチに対して、市民の申出を受けて有識者会議が審査し、ヘイトスピーチと認定した場合、大阪市としてその動画などの拡散防止措置、個人の名前や団体名の公表などの措置を講じることができると規定されている。今回の訴えは、こうした措置が表現の自由を侵害しないか問われたものである。
 いうまでもなくヘイトスピーチは、マイノリティを差別するものであって、深刻な人権侵害であり、その攻撃対象になったマイノリティを深く傷つける。被害に遭ったマイノリティは、少数者である自分が差別に反発しても、多数者からの報復により一層深刻な被害を招くだけではないかと怖れ、ヘイトスピーチを行なう者たちにまともに反論・抗議することができず、往々にして沈黙することを余儀なくされる。したがって、ヘイトスピーチは、少数者から表現の自由を奪い、表現の自由市場から放逐してしまうことにつながり、健全な言論市場そのものを歪めてしまう。それゆえに、人種差別撤廃条約を始めとした国際人権法の実践のなかで、本来の意味での表現の自由を守るためにヘイトスピーチは規制すべきという考えかたが主流となっている。
 ヘイトスピーチ解消法成立以降、街頭でのヘイトスピーチはその規模、回数では減少傾向にあるものの、法律上の禁止規定、罰則規定がないために、川崎市を始めとして全国でいまも深刻な被害が発生している。それにもかかわらず、ヘイトスピーチの条例規制の可否が、「表現の自由」の過度の規制に及ばないかという点から、地方自治体が対応に慎重な姿勢をとらざるを得ない状況にあった。
 今回、最高裁で大阪市条例が「合憲」であると判断されたことは、地方自治体での条例の適切な活用や新たな条例の制定を進めていく大きな後押しになるだろう。最高裁は「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的な場合に当該表現活動がその適用(条例による規制)を受けるものかどうかの判断を可能とするような基準が読み取れる」と判示しており、法の専門家ではなく、通常一般人が常識的に判断できればよいと判示したことは地方自治体に自身の判断を信じて立法すればよいのだと示唆している意味を読み取れなくもない。それは同時に、ヘイトスピーチ被害で苦しむ在日コリアンを始めとするマイノリティに希望を与えてくれるものでもある。
 今回の最高裁判決も踏まえて、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムのない社会を目指し、今後とも取り組みを進めていきたい。

2022年2月18日
特定非営利活動法人コリアNGOセンター

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