活動報告

当センターが「入管法改定案の廃案を求める声明文」を発表しました

入管法改定案の廃案を求める声明文

求められるのは、誰もが人権を保障され安全に生きられる社会のための
入管法改正論議である

 2021年2月19日、「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案」(以下、入管法改定案)が閣議決定され、現在、衆議院法務委員会で審議されている。
 今回の法改定の主旨は、在留資格を持たない非正規滞在者に対する収容が長期化している問題を解決することと、政府は述べている。そのための方法として、送還忌避罪の新設など非正規滞在者に対する厳罰化、3回目以降の難民申請者を強制送還できるようにすること(送還停止効の除外)、収容を一時解く場合は「監理人」に日常生活の監視を負わせる制度の導入などが新設され、そこでは被収容者の人権保障よりも、入管の管理しやすさという便宜のための裁量をさらに拡大するものになっている。一方、国際機関から指摘されている収容開始時の司法審査の導入や収容期間の上限は全く反映されていない。
 この入管法改定案があまりにも外国人の人権を無視したものであることから、廃案を求める声が日に日に高まってきている。ところが、日本政府・与党は同法案の成立を十分な議論を経ないまま強行採決しようとしている。
 2021年3月6日には、名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ国籍者が、健康状態が酷く悪化していたにもかかわらず、必要な処置を受けられずに死亡している。この事件の真相究明について、政府・与党、法務省は、冷酷ともいえる対応を取り続けている。新聞報道によると、2007年以降、全国の入管施設で17人が収容中に死亡しているとのことである。外国人の命は非常に軽く扱われている、由々しき現状がある。

 入管法は、1951年の出入国管理令に端を発する。1947年外国人登録令が公布され、1950年に出入国管理庁が設置されるなか、旧植民地だった朝鮮半島からの「密入国者」を収容、送還するための入国者収容所が長崎県に設置された(現・大村入国管理センター)。南北冷戦が朝鮮戦争へと激化した朝鮮半島において、「密入国者」が送還されることは、命の危険を意味していた。今の難民とまさしく同じである。
 旧植民地出身者である在日コリアンにとって、出入国管理と外国人登録制度は戦後一貫して日本政府による管理の象徴であった。2012年から始まった「新しい在留管理制度」で、外国人登録法が廃止され、在留管理が入管法に組み込まれることになったが、このとき私たちは、外国人を管理対象としてのみ捉えるのではなく、人権保障の観点に基づく制度へと改正するよう強く訴えた。しかしながらその後も政府は、管理一辺倒の姿勢を崩さなかった。

 人は故あって移動し、その場に滞在する。求められているのは、そうした移動や滞在に至った経緯を人道的観点から詳察し、滞在場所での生活基盤を尊重し、誰もが命を奪われることなく、安心・安全に暮らすことのできる社会をつくることである。またそうした社会に近づくために、在日コリアンが積み重ねてきた歴史的経験をどのように活かすのか、私たちの課題である。
 現在の入管法改定案が抱える問題点はあまりに大きく、部分修正で済むようなものではない。日本の現状は、難民条約を批准していながら、難民認定率がわずか0.4%と国際社会からも強く批判される状態にある。難民制度だけでなく、技能実習制度など外国人の処遇に関する法制度の抜本的な改革は喫緊の課題といえる。そもそも外国人管理を目的とする入管庁が、本来は人権政策であるべき難民の認定・処遇をあつかっているという制度も問題である。こうした全般的な見直しもなく、進められている今回の入管法改定案に対して、私たちは強く廃案を求める。
 ましてや、国会内での合意形成を無視した強行採決はあってはならない。
 さらには、今回の経験をふまえ、次期国会以降は、誰もが人権を保障され安全に生きられる社会を実現するために入管法改正論議が進むことを期待したい。その際には、外国人人権基本法や差別禁止法の制定の検討が不可欠である。
 今回の入管法改定案に対して、国会前や各地でのデモ、SNSなどを通じて多くの人々が反対の声を上げている。そうした人々を支持し、連帯の意を表する。そうした状況を踏まえ、日本も批准している国際人権諸条約にもとづいた出入国・在留制度づくりに、日本が一歩踏み出すことを期待したい。

2021年5月17日
特定非営利活動法人コリアNGOセンター
代表理事  林範夫、郭辰雄

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