4月1日、今日から世界各地で第21代国会議員在外選挙投票が始まりました。しかしコロナ19によって在外選挙人171,959人のうち半分に過ぎない86,040人だけが投票に参加することができます。
中央選挙管理委員会(以下中央選管委)は、コロナ19の状況の急速な悪化により在外選挙実施を憂慮する駐在国の公式立場表明があり、駐在国の規制措置強化で在外国民の安全が憂慮されるなど正常な在外選挙実施が難しいと判断される駐米国大使館など86カ所の在外公館(4月1日現在)の在外選挙事務を4月6日まで中止することに決めました。公職選挙法第218条29項の「天災地変または戦争・暴動、その外にやむを得ない事由」がその根拠として提示され、投票実施が不可能な地域が追加で生じることもありうる状況です。
ここ日本の場合21,957人の在外有権者が登録されており、投票は予定通り実施されます。しかしながら米国とヨーロッパを中心に在外選挙事務が中止され、在ドイツ同胞が在外国民投票権保障リレーキャンペーンをおこなうなど、中央選管委の在外選挙投票中止決定に反対する動きが起きています。
在外選挙有権者である私たちは、憲法第24条に明示された参政権を保障するために中央選管委が十分に実施努力を行ったのか疑問を持たざるを得ません。そして「在外国民投票を中断し、これに支出される予定の300億ウォンの財源を危機克服の財源として使うべき」と主張した李セジュン高陽市長の発言などに対しても深刻な憂慮を感じます。
大韓民国憲法が保障する権利は、大韓民国国内に居住中であれ、国外に居住中であれ、侵害されてはなりません。コロナ19という特殊な状況の発生を理由として参政権の中止は安易な発想でしかなく、このような状況であっても、いかに権利の保障が可能かを検討すべきであったと考えます。
ましてや今回の国会議員在外選挙に合わせ各政党が発表した選挙公報物を見れば、各党候補者についての紹介以外に政策説明は極めて不十分です。特に海外同胞、在外国民のための公約を提示した党は一部を除いて、ほとんどないといっても過言ではありません。
世界各国に居住する同胞数は190余ヶ国、750万人に達し、これは大韓民国人口5,000万人のうち約15%を占めています。ますます大きくなる大韓民国の国際的な役割とその地位にふさわしい海外同胞、在外国民に対する政策も不可避で、そのためにも政府省庁だけでなく各政党も在外同胞に対する政策を真剣に検討することが求められます。
現在、在外同胞に対する政策は在外同胞政策委員会と在外同胞財団が、そして在外同胞民族教育は教育省が担当するなどそれぞれ複数の政府省庁で関連業務を所管していますが、在外同胞の歴史的経緯、居住国との関係は非常に多様で、直面している課題も千差万別です。グローバル化が進むなか在外同胞の多様な問題解決に臨みし、在外同胞と韓国社会の絆を強めることは、韓国と在外同胞居住国との関係発展及びネットワーク活性化のための重要な課題でもあります。
コリアNGOセンターは2012年と2017年の大統領選挙実施の際、各候補者と政党に「在外同胞政策要望書」を提出し、その一つとして統合的な在外同胞政策推進のための専門部署設立を提案しました。今回の選挙で新しく構成される国会で、このような戦略的観点で「在外同胞庁」創設などが議論されることを強く期待するとともに、今回の在外選挙の一部中止という事態を契機に、郵便投票や電子投票など在外選挙のための多様な実施方式を検討し、関連法律などの改定が進められることを求めます。
そして何よりも海外同胞と在外国民に大韓民国の憲法が平等に適用されて、在外同胞の政治参加権利が尊重されることを強く願うものです。
2020年4月1日
特定非営利活動法人
コリアNGOセンター
代表理事 林範夫 郭辰雄