さる6月14日、育成就労制度の創設や永住資格取消を可能とする改定入管法が参議院を通過、成立しました。コリアNGOセンターでは改定入管法成立に抗議する以下の声明を発表しました。
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【声明】永住資格取消を含む改定入管法に断固抗議する
6月14日、参議院本会議において「出入国管理及び難民認定法」および技能実習生制度に関する法律の一部を改定する法律が可決、成立した。
この改定法では、技能実習制度に代わって新たな外国人労働力受け入れ、確保のために「育成就労」制度を創設し、その一方で永住資格の適正管理を名目に、永住資格の取り消しを可能とする制度が新設されることとなった。
この改定法に対しては、これまでさまざまな外国人の人権侵害の温床となってきた技能実習制度の問題を解消することなく、外国人を労働力としてのみ受け入れることで、外国人の尊厳と人権を踏みにじる制度を温存するものに他ならないとして各界より反対の声が挙げられていた。
そして永住資格の取消制度は日本で暮らす外国人の生活基盤そのものを根底から覆すものと言わざるをえない。そもそも永住資格とは日本に生活基盤を有し、長年生活してきた実態のある外国人に対して与えられるものである。ところが税金や社会保険料を滞納した場合、あるいは1年以下の拘禁刑を受けた場合、永住資格の取り消しが可能となり、それまでの安定した在留資格を失うこととなる。
私たちは、今回の改定入管法は外国人をあくまでも労働力として位置づけ、人権の保護からは程遠いものであり、安定した永住資格を持つ外国人であっても些細な義務の不履行でも生活の基盤を脅かすものであると考え、断固として抗議の意を表するものである。
そもそも今回の入管法改定議論では事前に行われた有識者会議でも永住資格の取消制度は議論されてはおらず、そのような制度がどのような経緯でどこから提起されてきたのかもよくわからず、またどのような法益を守るためのものなのかも不明である。
2023年12月末現在で日本に暮らす外国人は約341万人であり、そのうち約3割にあたる約117万人が永住者、特別永住者である。これらの人々は生活者として、日本社会の一員としての生活実態を持っている。またそのなかには日本で生まれ育った永住者も多数含まれており、永住資格の取り消しはこれらの人々の人生をも大きく左右することとなる。
私たちは制度そのものが問題であると同時に、永住資格という最も安定した在留資格を些細な義務違反をもって取り消してもいいとする外国籍住民に対するとらえかた、考え方が1965年に当時の入管局参事官が「外国人は煮て食おうが焼いて食おうが自由」としたものと同じであり、極めて大きな問題であると考える。
いまや人口の2.7%が外国人であり、多民族・多文化化が進んでいる日本が外国人と共生を果たしていくためにはそうした考え方を断固として否定していかなければならないのである。
今回の入管法改定は、実態として多民族化が進み、政策課題として多文化共生、ダイバーシティが強調されるなかにあって、依然と日本の政治は本質的に差別的、排外的な視点で外国人をとらえていることを明確に示したといえるだろう。
私たちは今回の改定入管法でこのような制度が創設されたことに改めて抗議の意思を示すとともに、すでに生活実態を持つ外国人の人権を守り、外国人と日本人が共に暮らす多文化共生社会の実現のためにこれからも取り組みを進めてく所存である。
2024年6月20日
特定非営利活動法人コリアNGOセンター